1971年 アメリカ。
最近、自分がお気に入りにしていて、贔屓しているリー・マーヴィンの主演映画である。(ムシャクシャした時は、リー・マーヴィンに限る)
シカゴのギャングのボス、ジェイクは部下を引き連れて、ある酒場に『ニック』(リー・マーヴィン)を呼び出した。
ニックは名うての殺し屋である。
「仕事を依頼したい!」
ジェイクの依頼は、カンザス一帯を仕切って、牧場や精肉工場など手広くしている『メリーアン』(ジーン・ハックマン)から、ネコババされた50万ドルを取り返す事だった。
「自分の部下にやらせればいいだろう?」
ニックが知らぬ顔を決め込もうとすると、ジェイクはカウンターに、ある包み紙を置いた。
差出人はメリーアン。
開いてみると、中からはソーセージの塊が ……
「これが、先に送り込んだ俺の部下の成れの果てだ」(ゲゲーッ!人肉ソーセージ?!)
ただ事じゃない事態に、ニックの目も鋭く変わる。
「5万ドル払う、頼む!依頼をうけてくれ!」
ジェイクは、何人かの部下たちをニックの助っ人として差し出した。
「分かった……」
こうして、ニックはジェイクの部下と共に、夜のシカゴからカンザスへ向けて出発したのだった ……
何だか、冒頭から背筋が凍りつくような展開にドギマギする。
監督は、あの有名な『がんばれベアーズ』や『フレッチ / 殺人方程式』、『ゴールデン・チャイルド』のマイケル・リッチー。
『がんばれベアーズ』の監督が、こんな映画を撮っていたのに、今更ながら驚く。
でも、こんなのは、まだ序ノ口。
これから、我々は、もっと酷いジーン・ハックマンを拝む事になる。
ニックがカンザスに着いてみると、ニックは、悪党『メリーアン』の所業を見て、その鬼畜さに驚愕する。
牧場や精肉工場をしながらも、孤児院から少女たちを麻薬浸けにして、売り買いする。
そう!ここでは【人身売買】までやっていたのだ。
その売春のやり方が、またひどい!
牛舎の柵に牧草をしいて、少女たちを一糸いとわない丸裸で投げ込んでいる。
それをニヤニヤ顔の男たちが、柵の上から顔を出して売り買いするのである。(これを鬼畜といわずして何と言う!)
柵に入って素っ裸の二人の少女を抱き抱えながら、
「ニック、くだらねぇ~事に縛られないで、お前も楽しめよ!コイツらの相場は20ドルってとこだが、お前なら15ドルに負けてやるぜ!」なんてヘラヘラ笑いながら言ってのけるメリーアン。(本当にクソ野郎だ)
ワナワナ怒りに震えるニックに、一人の少女が朦朧としながらも、
「助けて …… お願い ……… 」と声を絞り出すようにして囁いた。
ニックは、たまらず、その少女を抱えると強引に連れ出した。
後ろからは、鬼畜のメリーアンが、「おい!15ドル払えよ!」と言ってるが、もう知ったことか!
「ツケておけ!」と叫ぶと、一緒に来たジェイクの部下の車に乗せて、とっとと連れ去った。
(こんな年端もいかない少女に …… なんて野郎だ …… 許さねぇー!、絶対に許さねぇーーー!)
ニックの怒りは、ジェイクの部下たちにも充分伝わってくる。
皆が、少女に同情して怒っているのだ。
最高級のホテルに着くと、毛布にくるんだ少女を運ぶニック。
部下たちは少女の着替えを買いに向かっていった。(みんな良い人たちだ)
そうして、少女が最高級ホテルの一室で目覚めると、ベットの上には、ドレスやら何やら、数々の洋服が✨✨✨。
「これを私に?着てもいいの?!」
喜ぶ少女に、ニックも嬉しそうだ。(そりゃ家畜扱いから、いきなりのお姫様扱いですものね)
ニックは、ドレスを着た少女『ポピー』(シシー・スペイセク)を伴うと、ホテルのラウンジに降りてきて、食事をする為にテーブルについた。
次々、運ばれてくる料理にマナーを知らないポピーは、うろたえるが、さりげなく親切にマナーを教えてあげるニック。(もう、ここまでくると殺し屋どころか、まるで足長おじさんである)
美味しい料理に舌鼓をうちながら、ポピーはこれまでの出来事を、ポツリポツリと、ニックに語り始めた。
「一緒にいた子は、孤児院で妹も同然に育ったバイオレットよ …… 」
ポピーの独白に、ニックは、
「そのバイオレットも、きっと救ってみせるさ!」と胸をたたく。
もうジェイクの為だけじゃない!
あのメリーアンをぶっ潰して、少女たち、皆を助け出すんだ!
【漢の男】、『ニック』(リー・マーヴィン)は、そう固く決心したのだった ………
この映画が、後に『キャリー』で有名になるシシー・スペイセクのデビュー作である。
でも、デビュー作から、いきなりオールヌードで売春させられる役なんて衝撃的過ぎる!(今ならコンプライアンス的に許されないだろうよ)
まぁ、当時だったから、こんな配役や脚本も、すんなり通っただろうが。
それにしても鬼畜や卑劣漢をやらせたら、ジーン・ハックマンは上手い。
クリント・イーストウッドの『許されざる者』もだが、本当に憎らしくて、憎らしくてやっつけたくなるくらい。
そんなジーン・ハックマンがいればこそ、映画を観ている我々は、自然に主人公リー・マーヴィンにドンドン感情移入していく。
殺し屋『ニック』(リー・マーヴィン)の人間臭さや、情愛にホロリとしたりして。
そうして、怒りのマシンガンが火をふくのだ!(ダ、ダ、ダ、ダ、ダッ!!)
格好いいねぇ~、もう、最高!
リー・マーヴィン、やっぱり好きだなぁ~
好きこそ、リー・マーヴィンに甘い自分は、もちろん、この映画に星☆☆☆☆をつけさせて頂きます。(でも邦題のタイトルは何で『ブラック・エース』に変えられたんだろう?全く意味はないんだけどね)