2025年2月10日月曜日

ライブ 「南野陽子の《NANNO 30th&31st ANNIVERSARY 》」

2017年2月発売。





ドラマでは主役を張る事も無くなってきた南野陽子(ナンノ)。


それでも《歌う》時には、やっぱりナンノが主役。イキイキと輝いている。


ここ数年、歌う姿をたまに見て、私が思うことは「若い時よりも歌が上手くなってきている!」だ。(私だけ?)


同年代デビュー組の歌には、たまにテレビで見ても、ガッカリさせられる。

歳と共に思うように声が出なくなっている人もいれば、音程がハズレまくりの人もいたりする。(中には容姿も崩れまくりの人もいたりするが(笑))


若い頃は、睡眠時間さえ満足に取れなくて、超多忙だったナンノ。

そんな激務の日々が続く中、ミシンを持参しては、合間合間に自分のステージ衣装まで縫っていたそうな。(ここまでするアイドルなんて聞いた事もない!)



そうした陰の努力もあってか、みるみるトップアイドルにまで駆け上がったナンノだったが、この人の歌に関しては、如何せん、当時、歌番組も観ながらも、かなり出来不出来があるように思っていた。


例えば、『パンドラの恋人』という曲があるのだが、歌唱で、「♪止めて!時を!プリズム色に!胸に焼き付けてえええええー!」と、こんな風に強く間延びして歌っている。


話しかけたかった』という曲に至っては「♪跳ねた髪いいいいいー!」と、万事が万事、こんな風である。


日本語の母音は「」の、この五つ。

分かりやすくローマ字にすれば「カ、キ、ク、ケ、コ」なら「ka、ki、ku、ke、ko」。

「サ、シ、ス、セ、ソ」なら「sa、si、su、se、so」となる。


この母音、「」と「」が問題であって、例えば歌う際に、これらの母音で終わるようなフレーズを、強く引っ張って歌えば、聴く人によっては、とっても耳障りな音にも感じるのだ。



秋からもそばにいて』という曲もしかり。


「♪好きよ、好きよ、離れないで、夏は遠く霞むけど。そらさないで、見つめていて。愛を深く感じたいいいいい!

《サビ》「ず〜と、ず〜と愛してるって耳のそばで囁いてええええ!」(歌番組での生歌唱は大体こんな感じだ)


個性といえば、これがナンノ特有の個性なんだろうが、時折、とても 下手くそ に聴こえたりする。(この考察、案外、的はずれではないと思う)


大抵の歌手たちは(これを本能的に分かっているのか)、この母音「イ」と「エ」で終わるようなフレーズの歌詞があるなら、長く伸ばしても、徐々にフェードアウトするような形で、上手く処理して歌っている。


「ここぞ!」という見せ場の時、声を張り上げて歌い上げるのは、やっぱり「」や「」、「」の母音で終わるようなフレーズの歌詞だけなのだ。


だから、当時は、こういった粗(あら)が目立たない曲、『接近〜アプローチ〜』や『秋のIndication』、『楽園のDoor』なんてのが好きでございました。


作詞家たちも、こんなナンノの欠点を考慮しながら作詞をしているわけでもないだろうし、多忙な本人も、当時は気づいていなかったかもしれない。


そうした状況が続く中、順調にリリースしていた歌は、やがて尻すぼみになっていき、1991年に発売された『夏のおバカさん』が、とうとう最後になってしまう。


「これからは女優、一本でやっていきます!」と高らかに宣言するナンノ。


それから数年して、《ザ・ベストテンの同窓会》特番に呼ばれて『話しかけたかった』を歌う機会が与えられると、感極まって泣いてしまうのである。



「やっぱり …… 本当は歌いたかった」と。(だろうな。歌がそんなに上手くなくても、歌番組にのぞむ気持ちは並々ならぬモノがあったし)


この本人の涙ながらの訴えが功を奏したのだろうか …… 

それからは女優業を地道に続けながらも、コンスタントに歌う機会も増えていく。


そうして、2011年発売のベスト・アルバムには、待望の新曲『最終オーダー(ラスト・オーダー)』が、作詞:南野陽子、作曲・編曲:萩田光雄で完成し、収録される。


この曲を後追いで聴いた時、私は素直に感動してしまった。


メロディー・ラインが良いのは当たり前だが(なんせ作曲が萩田光雄大先生だもの)南野陽子の歌唱が昔に比べて格段に 良くなっている!のだ。(上記に記した、あの《欠点》もだいぶ影を潜めている)


それからも静かなる快進撃は続き ……


2015年には、小説家であり作詞家でもある、なかにし礼(没2020年)のトリビュートアルバム『なかにし礼と12人の女優たち』にも参加。



かつて、なかにし礼が作詞して大ヒットした名曲の数々の中から、それぞれセレクトして、《女優たちに歌ってもらおう》ってコンセプトの企画アルバムである。(これは評判が良かったのか、最初からそのつもりだったのかは知らないが、翌年2016年にも第2弾『なかにし礼と13人の女優たち』ってアルバムも発売されている)


この両方で、南野陽子も歌唱しているのだけど、どういった経緯でこうなったのか?(それにしても、なかにし礼のこのデレっぷり様よ(笑))


2015年版では、菅原洋一さんの『知りたくないの(1965年)』、

2016年版では、いしだあゆみさんの『あなたならどうする(1970)』を、それぞれカヴァーしていた。


これも一部の関係者たちやフアンを、驚かせてザワつかせる結果となる。

「南野陽子って、こんなに歌が上手くなっているの?!」と。(ここへきて、やっと世間的に実力が少しは認知されたか)


そうして、この30周年コンサート&追加公演である31年目コンサートである。



長く続けていると、こんなご褒美ももらえたりするのだ。


このコンサートの副題は、アルバム曲にもある『シンデレラ城への長い道のり』。


本当に、本人にしても、ここまでの道のりは長かったはずだ。

年齢と共に声には《艶(つや)》がでて、歌唱は安心して聴いていられるような安定感まで備わった。


なんなら、『秋からもそばにいて』なんて曲は、昔よりもずっと良い出来栄えだ。


同世代のアイドルとして、これからも応援していきたい。

フレー!フレー!ナンノ!!である。



※《蛇足》これを書き始めた頃、またもや最新ニュースが飛び込んできた。


2025年7月、NHKホールにて、南野陽子40 周年記念コンサートが行われるのであ〜る。(我ながら先見の妙が当たりすぎて、たまに恐ろしくなる)


とうとうNHKさんも、今のナンノの実力をお認めになった(?)のかしらん?

まぁ、私のようなフアンにしたら「10年遅いんだよー!」と言ってやりたいところだけどね(笑)。