2022年12月17日土曜日

映画 「快盗ルビイ」

 1988年  日本。




※はじめに …… タイトル『快盗ルビイ』の《》の文字は、けっして《怪盗(かいとう)》ではない。


《愉快》、《痛快》の《(かい)》の文字が使われていて、《快盗》と読ませているので、くれぐれもお間違いなく。(けっこう勘違いしてる人が多いので)



数十年ぶりに観た、小泉今日子真田広之のロマンティック・コメディー映画。

今観ても中々オシャレであり、心地よい気持ちにさせてくれるような、至福の一本でございました。


なので、ここに取り上げて、思った事をまたツラツラと書いてみますね。(こんな映画を昔のように、年末年始の深夜映画でやりゃいいのにね)



★原作はアメリカの推理作家ヘンリー・スレッサー


推理作家でも主に短編の方が得意だったみたいで、かの有名なヒッチコック劇場にも作品をいくつか提供していたとか。

ヘンリー・スレッサーが書いた原作『快盗ルビィ・マーチンスン』は短い短編を集めた連作短篇集である。


特に名前のない “ぼく” の視点から、従兄弟である犯罪者ルビィ・マーチンスンの計画や実行、事の顛末を愉快に描いている。(最後はことごとく犯罪計画は失敗するというドジっ子)


原作では、この『ルビィ・マーチンスン』は《》(オッサン)である。


この事実を知ってしまい、書店に並んでいる文庫本にも、なかなか、当時は食指が動かなかった。(原作は面白いのかしらん?)



★脚本、監督はオールマイティーになんでもこなす和田誠さん


和田誠さんは、脚本、映画監督だけじゃなく、執筆やイラストレーター、作詞家、映画評論家として幅広く多岐に活躍されたお方である。(2019年没)


今なら、トンデモ(?)料理研究家・平野レミの旦那さまって言った方が、若い人には分かりやすいかもしれない。


《↑平野レミ


この平野レミが突然テレビに現れだした時、アホな私は、この人をしばらくの間、水森亜土と思ってた。

「最近の水森亜土はイラストだけじゃなく料理もするようになったのか …… 」と勝手に勘違いしていたものだった。(笑)


独特なハッチャケ具合や奇抜なキャラクターが妙に重なって見えたのかもしれない。


この人の作る料理 ……

野菜や具材をテキトーに切ったり千切ったりして、鍋やフライパン(レミパン)にジャンジャン放り込むのがほとんど。


「こうすれば簡単でしょ!」とか「いいの!いいの!こうすれば短時間で作れちゃうからね!」っていつも言っている。


結果、出来た料理を食べるタレントたちは

「美味しい!」と絶賛しているが、時にはあきらかに失敗作のようなモノもあったりして ……(笑)


でも、平野レミは決してメゲない


平野レミを見てると、

「なるようになるさ!」や「明日があるさ!」、「コレがダメなら、次からはこの手でいけばいいじゃない!」なんてポジティブなワードが、ズラズラと浮かんでくる。


根っからの根明(ねあか)人間。(ある意味羨ましい)


多分、和田誠さんも、『快盗ルビィ・マーチンスン』の主人公を女性に改変して、加藤留美ルビィ)を創造しようとした時、奥方・平野レミの事を思い浮かべたはずだ。


そのくらい主人公・ルビィ平野レミの性格は似かよっている部分があると、今回映画を観直して、直感した。


●初対面の相手でも、まるで警戒心なんて無し。(林徹真田広之)を引っ越してきた自分の部屋に、すぐ引きこんじゃう)


●突飛な発想(犯罪計画もさることながら、言う事全てが突飛である)


●メゲない!くじけない!明日があるさ!(計画が失敗しても、即座に「次はこうしましょ!」と言って、違う計画を話す《変わり身の早さ》)


ねっ、この加藤留美の性格、平野レミさんに似ていませんかね?(ただ、小泉今日子はソレを過剰にならないように、なるべく普通の口調で演じていますが)



★ヒロイン・小泉今日子



やっぱり、この時の小泉今日子は別格なくらい可愛らしい。


80年代は、2大巨頭・松田聖子中森明菜がいて、フアン同志で


「オレは聖子ちゃん派だ!」とか

「明菜の歌唱力の方がスゴいよ!」

と、バチバチやりあっていた時 ……… 

そのどちらにも属さないフアンは小泉今日子を選んでいて、常に3番手にいた気がする。


今でこそ、ニックネームなんてのは当たり前でも《キョンキョン》なんて呼称で呼ばれはじめたのは、この人が最初だったかも。(けっして聖子にも明菜にも、こんなニックネームはつかなかった。この後に中山美穂を《ミポリン》、南野陽子を《ナンノ》なんて呼ばれ方が続いたが)


バッサリ刈り上げたショート・カットにすると《キョンキョン・カット》なんて言われて、たちまち巷で大流行した。(誰でも似合うとは思わない)


元気な歌は、明るく元気よく!

でも、身近にいたら「即、友だちになれそう!」な親しみやすさもある。


だから、キョンキョンのファッションは、よく一般人に真似されていたし、一時はCMにもバンバン起用されていた。


そんなのが《キョンキョン》なんてニックネームをつけられた理由だったのかもしれない。



そんなキョンキョンのお芝居はというと …… 正直よく分からない。


簡単に切り捨てて下手とも言えないし、特別に上手いとも思えない。


ごくごく《普通》なのだ。

普通の口調で話していて、普通にソコに存在しているって感じ。


でも、この《普通らしさ》が、この広い芸能界では希少に見えて、ドラマでも映画でも起用されやすいのかな。



★アクションとイケメン顔を封印して


ダサダサの寝癖頭や厚底メガネ

だらしなく緩みきった口元

常にオドオドしていて、背を丸めて歩く姿 ……


こ、これが真田広之なのか?!


当時は、この真田広之の演技に戦慄した。


それまでの真田広之の映画を観てきた人に、この変わり様は、ある意味衝撃的だったはずだ。


古巣のジャパン・アクション・クラブ(J・A・C)から独立しても(普通なら数年干されるだろうが)、映画界は真田広之を、やっぱり見放さなかった。


和田誠さんの映画では『麻雀放浪記』に起用されて、その後に『快盗ルビィ』と連続登板である。



この映画『快盗ルビィ』が成功するかは、ほぼ真田広之にかかっていると言ってよい。


物語は、ダサダサ男『林徹』(真田広之)の目線で常に進んでいくのだ。




『ルビィ』(小泉今日子)の突飛な犯罪に振り回されながらも、徐々に惹かれていくような様子をコミカルに、可笑しみを交えながら演じなければいけないという、難しい役。


なまじ運動神経が良くて、素がイケメンの彼が、それを全て封印して演じるのは、とても大変だったろうと思う。(イケメンにはイケメンの悩みがあるのね〜)


とにかく、これは充分に成功してるし、当時も面白かったが今回もイヤミなく観れた。


観ていない若い人にも、オシャレな小泉今日子真田広之の名演技は超オススメである。(キョンキョンって、昔はこんなに可愛いかったんだぞー!(笑))


長々、書いたが星☆☆☆☆。


二人が歌い踊る♪『たとえばフォーエバー』に耳を傾け、主題歌♪『快盗ルビィ』で終わる年末も、また乙で良いモノかもしれない。