1937年 アメリカ。
南太平洋諸島にポツンと浮かぶ小さな島《マヌクラ島》 ……
そこで結婚式を挙げたばかりの男女がいる。
男の方は、船乗りをしている精悍な青年『テランギ』(ジョン・ホール)。
女の方は、島の酋長の娘で、気立てがよい美女『マラマ』(ドロシー・ラムーア)だ。
「お願い!今度の船には乗らないで!!不吉な夢をみたのよ」
結婚式の翌朝、懸命な頼みをするマラマ。
それを「何を馬鹿な事を!」と、鼻で笑っているテランギ。
それでも心配なマラマは、ズタ袋に潜り込んで密航しようとするも、運悪く船長に見つかってしまう。
「今すぐ島へ戻るんだ!君が戻らなければテランギを船乗りから降格させるぞ!」
こんな言葉に渋々従い、大海原にダイブしていくマラマ。(Oh!)
島へと泳いで戻っていくマラマは、愛するテランギを泣く泣く見送ったのだった。
だが、そんなマラマの予感は、やはり的中してしまう。
寄港したタヒチの酒場で差別的な白人に絡まれてしまったテランギは、その白人をおもわず ぶん殴ってしまったのだ。
こんな喧嘩でも、決して両成敗とはならないのが、この時代である。
この頃、南太平洋の島々は欧州列強国の植民地として支配下に置かれていたのだ。
もちろん《白人様々》の、不平等な法律が平気でまかり通ってしまう時代でもある。
「テランギには 6か月の懲役刑 を!」
フランスから派遣されてやって来た総督である『デ・ラージュ』(レイモンド・マッセイ)からは厳しすぎる判決がくだった。
この島の風土や人々を愛する『ケルサン医師』(トーマス・ミッチェル)やデ・ラージュの妻で心優しい『ジャーメイン』(メアリー・アスター)までもが情状酌量を求めてるも、意固地なデ・ラージュは、まるでそれに耳を貸そうともしない。
「彼らのような未開人には、ちゃんとしたルールを学ばせる必要があるんだ!」
変に偏った信念を持つデ・ラージュは、それを無理矢理にでも押し通してしまう。
こうして、テランギは、こんな大したことのない罪だけで投獄することになってしまうのだった。(んな、アホな!)
だが、監獄でテランギを待ち構えていたのは、サディスティックで鬼のような看守たち。
まさに毎日が生き地獄の日々なのである。
耐え兼ねたテランギは何度も脱走を試みるのだが、すんでのところで捕らえられては、さらなる拷問が繰り返されてしまう。
そうこうしている間に、たった6か月だった懲役は、ドンドン加算されて、なんと!16年の刑期 にまで延びてしまうのだった。(ゲゲッ!冗談じゃない!)
(こんな所にいつまでもいられるものか!あ〜、愛しいマラマに今すぐ会いたい!!…… )
ようやく、決死の覚悟で8年後に脱獄に成功したテランギ。
だが、脱獄の際、看守をあやまって殴り殺してしまったテランギは、今度は 殺人犯 として追われる始末。(こうやって書きながらも、とことんツイてない男だ)
なんとか故郷に戻れたテランギは、愛するマラマと不在中に産まれていた一人娘に、やっと再会する。
だが、それを知った、あのデ・ラージュ総督が追手を差し向けて迫ってきた。
「アイツを逃がすんじゃない!捕まえるんだーー!!」
島の住民たちの助けを借りて逃げようとするテランギ一家。
そして、それを追いかける役人たち。
そんな時、マナクラ島には今まで見たこともないような、前代未聞の巨大な ハリケーン が襲いかかってくるのだった ………
前半、南の島でテランギとマラマがラブラブ♥な様子は『青い珊瑚礁』を思い出させる。
そうして、テランギが投獄される理由なんかは、あの名作『レ・ミゼラブル』と妙に重なってしまう。
何度も何度も脱獄を試みて失敗する場面なんかは、マックイーンの『パピヨン』にも見えてくるし、後半のハリケーンの猛威などは、あらゆるパニック映画を想起させてしまう。
もう、どんだけの材料を詰め込む限り、詰め込んでいるのか ……(コレのどれか1つだけでも、充分に映画として成り立つのに)
こんな贅沢な映画を、とっくの大昔にジョン・フォード監督は撮りあげていたのだから、やはり巨匠の看板は伊達じゃないのだ!
それらは今の時代では簡単に出来ても(ドローン撮影で)、そんなモノが無かった時代には、かなり珍しい絵面として、ひと目で観客たちを沸かし、魅了したはずである。
そんな撮影に、これまたスクリーンに映えるような美男美女のカップルが登場。