1971年 イタリア、フランス合作。
元新聞記者で、現在は盲目の老人『アルノ』(カール・マルデン)は、孫娘の幼い『ローリー』と二人暮らしだ。
まだ、7、8歳くらいだろうか……それでもローリーは、目の見えないアルノを介助して、あれこれと気づかいのできる優しい女の子である。
アルノも、盲目とはいえ他の感覚は研ぎ澄まされていて、大抵の事は自分でもできるし。
そんな二人はある夜、散歩に出かけた。(子供を夜に連れ出してはいけません (笑) )
二人がしばらく歩くと、アルノは近くの車の中で、誰かが言い争う声を耳にする。
ローリーに「ちょっと見てきなさい」というアルノ老人。(危ないんじゃねぇ?)
ローリーは、車のそばを通ると、即座に戻ってきた。
「一人は男の人だったけど、もう一人は分からなかったわ」
(なんて事はない、ただの痴話喧嘩かもしれないな……)
アルノの好奇心が一旦おさまると、二人はその場所を立ち去っていった。
その後、その側の研究所には、強盗が入り込んで、警備員を襲うという、ちょっとした事件が起こった。
《人の染色体を研究している》という特殊な、この施設では、責任者の『テルジ博士』が警察の職務質問をうけていた。
「特に取られたものはないようだが……」
他の研究員たちも、やっぱり同じ返事。(この辺り、誰が誰だか区別しにくい)
だが、その中で、研究員の一人『カラブレジ博士』だけが、なにやら様子がおかしいそうだ。
次の日、そのカラブレジは、恋人に会った後、他の誰かと待ち合わせなのか、駅のホームへとやってきた。
お目当ての人物がいないのか……ホームの人混みをキョロキョロと見渡している。
そんなホームへ、列車が入ってきた。
その時、誰かの手が、カラブレジを線路へ突き飛ばした。
そこへ偶然居合わせた新聞社のカメラマン。(ホント、偶然すぎやしないか?)
カラブレジが線路に落ちて、列車に轢かれる、まさに!決定的な瞬間を、カメラは連続でシャッターにおさめたのだった。(なんて悪趣味な)
あわれ、カラブレジは無惨な姿で轢死体なのだが、カメラマンは《特ダネ》をおさえて、嬉々としている。
翌朝には、その事件の記事が、大きな見出しで、写真と供に、ドドーン!と新聞に掲載されていたのだった。
その新聞を、あの幼い女の子『ローリー』が盲人の『アルノ』に読み聴かせている。
すると、ローリーが突然、叫んだのだ。
「あの男の人だわ!」
「昨日、車の中で言い争っていた人よ!」
「えっ?」
(偶然だろうか?昨日の男が無惨な死をとげたのは……)
元新聞記者だったアルノの好奇心が、ムクムクとアタマをもちあげはじめたのだった。
早速、アルノは幼いローリーを伴って、記事が書かれたという新聞社へとやってきた。
人の良さそうな担当者『ジョルダーニ』(ジェームズ・フランシスカス)は、アルノの話を聞くと、がぜん興味をもったようである。
「もしかすると…」
ジョルダーニは、新聞に掲載するときに、写真をサイズカットする事に気づいて、「ネガの中に《何か》が写りこんでいるかもしれない!」と言い出したのだ。
早速、カメラマンに電話してネガを確認してもらうと、
「写ってるぞ、確かに誰かの手がハッキリと!犯人が突き落としたんだ!」の好返事。
してやったり!
「今から、そこへ取りにいくから待っててくれ!」
だが、その時、自宅の現像室でカメラマンが、ネガを写真にやいているのを、不気味な目が、淡々と覗いていた。
そして、背後から近づくと、いきなり首を絞めあげて、鋭利なモノで切りつけてきたのだった。
そうして去っていく犯人。(まったく、どうやって犯人はカメラマンの住所まで調べあげたのかね……謎である)
ジョルダーニがやってくると、案の定、カメラマンは殺されていて、肝心のネガは奪われていた。
「やられたー!」
だが、もはや諦めきれないジョルダーニは、アルノ&ローリーと供に、真犯人を探そうとして行動はじめる。
(殺されたのは研究員の博士だ……あの研究所には何かあるのかも………)
どんどん事件の深みへとはまっていくのだが……
ダリオ・アルジェントの監督作品2作目である。
『サスペリアPART2』でも書いたが、皆様、お願いだからハードルを下げて、温かい目で観てやってほしい。(「何でやねん!」とツッコミをいれながら、観るのがアルジェント映画なのだから)
例によって突っ込みどころ満載の犯人の行動や殺し方に、怖さなんて微塵も感じないし、笑いさえ浮かんでくるのは不謹慎だろうか?(笑)
1作目の『歓びの毒牙』が上手くいって、「よし!2作目も!」と勢いこんで取り組んだアルジェント。
本格ミステリー映画を、本人は撮りたかったはずなのだ。
でも、どうしてこうなってしまうのか。
出だしは快調でも、この映画はドンドンおかしな方向へと流れてしまうのである。
本筋をそれて、どうでもいいようなシーンに時間をさいてしまうアルジェントの悪いクセが、モロに出てしまっているのだ。
その結果、真犯人が最後に現れても、
「誰だっけ?この人?!」になってしまったのである。(ありゃりゃ~、最悪)
(しまった!色々入れすぎて、犯人の描写を描くのを、すっかり忘れてしまっていた!)
完成した試写を観て、本人も即座に思ったのじゃないのかな?
ジョルダーニ役のジェームズ・フランシスカスが、研究施設のテルジ博士の養女『アンナ』(カトリーヌ・スパーク)と恋仲になったり、ベッドシーンがあったり。(これはこれで必要かも。カトリーヌの●●●●が拝めますし)
そんなシーンの連続で、映画は凸凹道を進んでしまって、肝心かなめの犯人描写を忘れてしまっていたアルジェントさん。(この映画、ちゃんと脚本はあったのだろうか? 何だか撮りながら、その場その場のノリで撮影したようにも思えてしまうのだけど)
ジェームズ・フランシスカス(新・猿の惑星)、
カール・マルデン(欲望という名の電車、助演男優賞受賞)、
カトリーヌ・スパーク(狂ったバカンス)
せっかく名優たちを集めたのに、ちと残念な仕上がりかもしれない。
だが、これがアルジェントでもあるしなぁ~。
やはり、自分は、こんな映画でも見捨てられないのだ。(分かってくだされ)
極甘の評価で、星☆☆。
けなす人が大多数だろうと思われる、この映画も《アルジェント・フアン》には、たまらなく愛しく思えるのだから、本当に稀な監督さんである。(かくいうワタクシも、その一人なのだ)
《謎解き》や《意外な犯人》なんていうミステリー映画の定石は、お願いだから期待しないでね。