1985年。
1901年4月18日の同じ日、二人の子がこの世に誕生する。
一人は、アメリカのマサチューセッツ州ボストン、銀行家のひとり息子として産まれた『ウイリアム・ケイン』。
もう一人は、ポーランドの森で私生児として拾われた『ヴアデク(アベル)』である。
生まれも境遇も全く違う二人、そんな二人が成長して、偶然出会ってしまうと、どうなるのか ……
この物語は怒濤(どとう)の歴史を生き抜いた男二人の、愛と憎しみの物語である。
原作はジェフリー・アーチャーの小説。
1979年に発表されると、瞬く間に世界中で大ベストセラーとなった。
もちろん、日本でもちゃんと翻訳されていて、一時期、本屋の書棚にはジェフリー・アーチャーの小説が新潮文庫として、ズラズラ〜と席巻していたものである。
でも、私はソレを読んでないけど。
なんせ、ジェフリー・アーチャーの小説は長〜いのだ。(小説も上下巻に分かれている)
堪え性のない自分は、手に取る前からとっとと退散した。
そうして、このドラマもイギリスで制作されていて、なんと!5時間ほどの超大作である。
5時間の長さと知ると、観る前から(ゲェーッ)と思う人がいるだろうが(私がそうだった)でも、観はじめると(あら、不思議)スイスイと惹き込まれていく。
5時間はあっという間でございました。
ドラマは『ケイン』と『アベル(ヴアデク)』のパートを交互に折り重ねながら進んでいく。
堪え性のない自分でも飽きる事はない。
本当に親切丁寧な作りとなっております。
そんなW主人公の一人、ウイリアム・ケインの青年期から老年期を演じるのが『ジュラシック・パーク』などで後に有名になるサム・ニールである。
幼少期に父親をタイタニック号の沈没事故で亡くし、母親と二人きりになったウイリアム・ケイン。
やがて母親が再婚するのだが、その男がトンデモないクズ。
身重になった母親に隠れて、しょっちゅう浮気三昧。
オマケに銀行の金までもチョロまかす義父オズボーンに、ケインは内心イライラしていた。
やがて母親は夫の浮気を知って、ショックのあまり、お腹の子供と一緒に死んでしまう。
「出ていけ!この屋敷から出ていけー!」
怒りに燃える『ケイン』(サム・ニール)は、義父オズボーンに物凄い剣幕で詰め寄った。
そんなケインに気圧されて、「この若僧が!今にみておれよ!」と捨て台詞をはきながら、ようやくクズ男・オズボーンは去っていくのであった。
そうして、もう一人の主人公が『アベル(ヴアデク)』で、演じるのがピーター・ストラウスである。
私、この方を全く知らなかったのだが、テレビ界では有名な人らしい。(この『ケインとアベル』ではエミー賞も受賞しているとか)
この『アベル(ヴアデク)』のたどる人生は、かなり悲惨で、実質この物語を牽引しているのは、このアベルと言ってもいいかもしれない。
孤児のヴアデクは小作人夫婦に引き取られ、その情けで育てられていたが、子供の頃からその聡明さは抜きん出ていた。
学業優秀の噂は、たちまちポーランド貴族・『ロスノフスキ男爵』の耳にまで入ってくる。
同じ年頃の息子レオンを持つ男爵は、ヴアデクを養子として迎え入れる事にした。(オマケに人柄の良い男爵は、料理人としてヴアデクの義姉まで引き取ってくれる)←なんて寛大な!
だが、幸せもつかの間、戦争勃発!(第一次世界大戦&ポーランド・ソ連戦争)
ロスノフスキ男爵の領地はたちまち奪われ、それに仕える者たちも、皆、地下牢送りとなってしまう。(その際、一人息子レオンは無残に殺されてしまう)
やがて男爵は死の間際、ヴアデクを引き寄せて、ある秘密を打ち明けはじめた。
「ヴアデク、我が息子よ(本当は男爵の《実の子》だったヴアデク)、お前は今日からロスノフスキ家を継ぐ者だ!ここにいる者たち、全てが証人だ。この代々伝わるロスノフスキ家の腕輪を貰ってくれ …… 」
こうして男爵は息を引き取り、ヴアデク改め『アベル・ロスノフスキ男爵』(ピーター・ストラウス)が誕生した。
だが、それからもアベルの前途は苦難、苦難の連続。
義姉は軍人たちの慰み者として、目の前で強姦されて死亡。(あんまりだ)
自身もソ連の捕虜収容所送りとなってしまう。
なんとか、そこを脱走してトルコに逃げ延びるも、トルコで盗みをして即、逮捕。(腹があまりにも減りすぎて、悪いと思っても我慢できず食べ物を盗んでしまったのだ)
トルコでの盗みは《重罪》。
民衆の前で押さえつけられて、その場で手首を斬り落とされるのだ。(ヒィーッ😱)
(もう、ダメだ …… )とアベルが思った瞬間、「その処刑、待った!」の声がかかった。
トルコにあるポーランド大使館の『大使』が、アベルの手首にある《男爵の腕輪》に気づいてくれて処刑をストップしてくれたのだ。(ホッ!)
あわやの所で、命からがら、何とか助かったアベル。
ポーランド大使の粋な計らいで、移民船に乗るとアベルは一路アメリカを目指す。
こうして、ギリギリのところで生き延びてきたアベルはアメリカのホテルで、運良く給仕係の職にありついた。
そこでアベルは運命的な出会い、《ウイリアム・ケイン》と出会う事になる。
「このホテルでは給仕係に手錠をはめる規則なのかね?」
アベルの腕輪を見て、なにやら皮肉たっぷりのケイン。
一方、アベルも負けてはいない切り返し。
「反抗的な者にだけです」
そんなアベルの様子を、ずっとうかがっている者がいた。
アベルの経歴、頭脳、ホテル内での手腕は既に調査済み。
リッチモンド・ホテルのオーナー『デイヴィス・リロイ』である。
部屋へアベルを呼びつけると、リロイはジロジロと品定めして、いくつか詰問し、最後にこう締め括った。
「お前を気に言ったよ!」
リロイはアベルをリッチモンド・ホテルの《副支配人》として引き抜いたのだ。
しかも全てアベルの条件をのんでくれるという高待遇を約束してくれて。
今まで逆風ばかりだったアベルに、やっと追い風がふいてきた。
(自分を認めてくれたリロイの為にも精一杯働こう!)
口には出さなくても、リロイの期待以上の成果をドンドン挙げていくアベル。
やがて信頼を勝ち取り、とうとう《支配人》の地位まで上り詰めてゆく。
だが、時代はまたもや暗転する。
すぐそばまで、あの暗い《世界恐慌》が迫っていたのである ……
こうやって書き出せばキリがないが、ここまででドラマの、やっと3分の1くらいである。(やっぱ5時間は長〜い)
この後、多少付け加えるなら、リロイは世界恐慌のあおりで株が大暴落して破産。
銀行に融資を頼むものの、あの『ケイン』に断られて、ビルから飛び降り自殺してしまうのだ。(ガ~ン)
恩人の自殺でアベルはケインを生涯恨み続ける。
「おのれ〜ケインめ!あいつのせいで『リロイ』が死んでしまったんだぁぁーー!」
一方ケインはケインで、あの母の仇ともいうべき義父『オズボーン』がアベル側に寝返ったので、アベルを敵視しはじめる。
「あいつをオズボーンと一緒に破滅させてやる!」
こうして憎しみの物語は、両者で「これでもか!これでもか!」とヒート・アップしていくのである。
同じ年の同じ月、同じ日に生まれたとしても仲良くなれないのは当たり前なのかもしれない。
だって、この二人はおひつじ座🐑(メェ~)。
おひつじ座の性格の特徴は、
「リーダーシップを持って高い理想に突き進んでいくものの、プライドが高すぎて、他人の助言をあまり耳に入れない」のだという。←(まんま『ケインとアベル』じゃん)
なるほど、同じような性格同士でぶつかり合うのも当然といや当然か。(そういや私の周りも、そんなおひつじ座が多いかも)
こんな性格の『ケインとアベル』の決着はどうなってゆくのか?
興味がある方は、このドラマを探すか、ジェフリー・アーチャーの原作を探すか …… どちらを選んでも良し。
オススメしておく。(私なら『アリエスの男たち』ってタイトルにしちゃうかもね(笑))
それにしてもピーター・ストラウスは格好いいなぁ~♪