1970年 アメリカ。
時は朝鮮戦争の真っ只中。
最前線から5キロくらい離れた場所に、それはある。
アメリカの陸軍移動外科病院。(単に野営テントをいくつも張り巡らして、そこで戦場負傷者の手術をしたり、外科的な処置をする場所だが)
通称《MASH》である。
そんなMASHに配属されてきた軍医『ピアース大尉(通称、ホークス・アイ)』(ドナルド・サザーランド)と『フォレスト大尉(通称、デューク)』(トム・スケリット)。
二人とも外科の腕前は一流なのだが、酒は呑むし、女好きだし、イタズラ好き。
毎日、大量の負傷者が出て、12時間以上も激務をこなしている軍医や看護師たちの中では、到着そうそうから、特に異彩を放っていた。
「助けられる命は助ける!でも死人が出ようが、負傷者が次々運ばれてこようが、悲観的なってたまるか!こんな所でも明るく楽しくワイワイやる!」
簡単に説明すると、常にそんなのを信条にしている二人なのである。
そんな二人が、この場所の責任者で司令官の『ブレイク中佐』に案内されて、住居となる野営テントにやって来ると、同室の『バーンズ少佐』(ロバート・デュバル)は、二人とは真逆の堅物。
酒は呑まないし、熱心なクリスチャン。
仕事がない時は、常にブツブツと祈りの言葉を唱えるという変わり種だった。
こんなバーンズ少佐と、二人が合うはずもなく、「気が変になりそうだ!早く、バーンズを変えてくれ!」とすぐに直訴。
そして、代わりに、二人のテントにやって来たのは、『マッキンタイア大尉(通称、トラッパー)』(エリオット・グールド)だ。
髭もじゃで、おかしな風体のトラッパーだが、外科の腕前もピカイチで、冗談も通じる相手だ。
ホークス・アイ、デューク、トラッパーの3人は、すぐに意気投合する。
そんな3人は《MASH》で激務をこなしながらも、女性看護師にモーションをかけたり、仲間をふやしながらイタズラに明け暮れる日々をおくるのだが………。
ちょっと分かりやすく書いてみた『M★A★S★H』のあらすじというか、この話の骨格である。
と、いうのも、この映画、たくさんの登場人物たちが次々現れるわりには、個人の名前以外にも、ご覧のように通称なんてモノが、一人一人にあって、1回観ただけじゃ、とても覚えられないかも。
その人物たちを区別して覚えるだけでも大変なのに、通称なんてのがあれば、「誰が誰だっけ?」って頭こんがらがってしまう。(自分は、とても1回観ただけじゃ覚えられませんでした)
おまけに、ドナルド・サザーランドや、トム・スケリット、エリオット・グールドたちも出ているのだが、この3人も、いつものそれとは、全く違う容姿なので、最初観た時は、「この人が、誰々でいいんだよね?……」と、ゆっくり確認しながら観るという、今回ばかりは、特別な念のいれようでした。
ビートルズのように前髪をそろえたストレート・ヘア、ブラウンのサングラスをしているのが、ドナルド・サザーランド。(クルクル・パーマで口髭のサザーランドを見馴れていたせいか、「本当に誰?」って感じ)
中央の一番若そうなのが、トム・スケリット。(こちらも『トップガン』で口髭をたくわえた中年のスケリットしか記憶に残ってないので、「髭がなくて、若い時のスケリットって、これ?」と妙な違和感)
エリオット・グールドなんて、特に異様に感じた。
髭もじゃで、髭ダンスみたいな姿は、もはや、誰とも判別しにくいかも。(「グールドだよ!」と言われなければ、ただの山男だよ、これ! (笑) )
こんな3人だけでも、とりあえず覚えて判別できれば、やっと映画の内容に入っていきやすいかも。
酒はマティーニを愛し、暇さえあれば女看護師を口説くホークス・アイ。
デュークは、デュークで、お祈りの合間に現地の少年に読み書きを教えるバーンズ少佐をからかったりする。
そして、その少年には内緒で、「絵があったほうが覚えやすいだろう」と、過激なエロ本をあげちゃうデューク。
ホークス・アイは、昔トラッパーとアメフトの試合で知り合いだった事を思い出した。
「お前、あの時のトラッパーか?!」
こんな3人は、たちまち仲良くなる。
でも、こんな奴らを、あのお堅いバーンズ少佐は苦々しく見ている。
3人は3人で、クリスチャンでお堅くても、死人が出れば他人に罪をなすりつけるバーンズ少佐のひねくれた性格が大嫌い。
とうとう、ある日、トラッパーが、そんなバーンズを殴り付けてしまった。
そこへ、軍から派遣されてきた、お堅い女性将校『ホーリハン少佐』に、その現場を見られてしまったのだから、さぁ大変だ。
トラッパーは、しばらくの間、宿舎に逮捕監禁。
でも……「司令官のブレイク中佐は甘いわ!軍に告発状を送るわ!!」と、軍の規律が一番のホーリハン少佐は、ひとり、プンプン息巻いく。
ホークス・アイにもお説教するホーリハン少佐。
「軍では上下関係が第一。規律を乱すあなたたちは最低だわ!!」と。
美人でも、軍人バカのホーリハン少佐に辟易する3人。
こんなホーリハン少佐、憎む相手が同じなのか、次第に、あのバーンズ少佐と意気投合していく。
「あなたに出会えたのは神のお導きだ!」と、バーンズ少佐もホーリハン少佐にメロメロになっていく。
「まぁ、うれしいわ。抱いて!抱いてちょうだい!バーンズ少佐!!」軍の規律には厳しくても、女の本能がバーンズ少佐を欲してしまったホーリハン少佐。(どこがお堅いんだろう (笑) )
夜のテントの中で、二人は激しく求め合いはじめた。
と、そこへ、(チャ~ンス!!)とばかりに、仕掛けられた隠しマイク。
二人の喘ぎ声は、実況放送され、他のテントにまで大音響で響き渡った。
大きな声で、「Oh!、No!、Oh!」と悶えるホーリハン少佐は、次第に自分の声で我にかえる。
「キャアーーーッ!!!」
そして、次の日から、ホーリハン少佐の通称は『ホット・リップス(熱い唇)』と呼ばれるようになったのだった………。
戦争の悲惨さなんて微塵もない、戦争を茶化して、馬鹿にして、こんな風刺的なブラック・コメディを作り上げてしまったロバート・アルトマン監督。
アルトマンの、この『M★A★S★H』は、珍しい切り口で、当時、皆を驚嘆させて、たちまちアルトマンの名を世界中に広めた。
カンヌ国際映画祭ではパルムドールを受賞したり、アカデミーでも脚色賞までとってしまう。
それまで、異端児すぎて、あちこちでつまはじきにされてきたアルトマンなのに。(天下のワーナーには首にされてるしね)
ただ、早くから、このロバート・アルトマンの才能に、いち早く目をつけていた人物がいる。
あの、アルフレッド・ヒッチコックである。
「あいつ、面白い!」と、自分のテレビ番組『ヒッチコック劇場』の監督をさせたりしている。
確かに、ハマれば面白いロバート・アルトマンの映画なんだけどねぇ~(でも、この『M★A★S★H』にしても、私のように、1度観たくらいじゃ理解できない人もいるかも)
それに、この映画、どきついイタズラを公然と描いていて、それをおもいっきり茶化しているし、今のハリウッドでは、これを《良し!》としないはず。
この後も、映画は続き、3人組の破天荒さは、さらにエスカレートしていく。
たわいのないイタズラとして受け取れない人には、あんまりオススメできないかな~。(自分は充分面白かったし、笑えたのだが……)
とりあえず、今の時代に配慮して、星★★★とさせて頂きます。(ちょうど、タイトルに★が3つ入ってる事だしね)
それにしても…戦争中に、ゴルフしたり、芸者遊びしたり、アメフトの試合したりして、本当にいいのか?こんなんで?!
「これでいいのだ!!」(by ロバート・アルトマン (笑) )