1983年 日本。
もはや説明も要らないくらい有名な『時をかける少女』である。
今回、久しぶりに観てみる。
数十年ぶりに観る『時をかける少女』は、主人公『芳山和子』(原田知世)のように、《タイム・ループ(時間跳躍)》でもしてるような不思議な気分。
長〜い40年近い年月を、一気に飛び越えて、遠い過去に戻るような奇妙な感覚である。
変わらないのは映画の登場人物たちや原田知世の可愛らしさ。
変わったのはオッサンになった自分と、この映画に対する評価である。
なるほど〜 ……
オッサンになってみて、やっと分かった気がする。
この映画は傑作だし、当時の原田知世に《演技力》なんてのは不要なのが、ようやく分かった。(少し下手だと思ってました)
16歳の原田知世は、ただ、可愛いい✨だけで、そこに存在していれば良いのである。
当時の角川春樹が原田知世にベタ惚れだったらしく、この『時をかける少女』に関しては、全制作費の一億円以上を、ポ〜ン!と自身のポケットマネーで捻出したそうな。(よっ、太っ腹!)
「とにかく『原田知世』で主演映画を!!」(スゲ~、熱の入れようよ)
そして、ソレに白羽の矢が立ったのが大林宣彦監督なのだけど …… 大林宣彦も原田知世の魅力に一瞬で、ポワワワ~ン♥️🤩(もう虜状態である)
「映画がヒットしようがしまいが関係ない!今、この日、この時の16歳の『原田知世』を、記念としてスクリーンにおさめたい!」(これも、ややドン引きしてしまうほどの熱量である)
何が、こんなオッサンたち二人を夢中にさせたのか。
オッサンになった自分も、今なら、ようやっと分かる。
この時の原田知世が、まるで世のオッサンたちが思い描き、理想とするような《完璧な聖少女》なのだ。
まだ、化粧も慣れていないような、素のままでも充分に可愛らしい、汚れなき乙女。
こんな純粋無垢そうで可憐な乙女に、あんなドロドロした変な映画『伊賀忍法帖』なんて角川春樹もやらせるはずがないのだ(笑)。
大林宣彦と角川春樹は充分に話し合って、知世にピッタリの舞台、美しい風景画のような場所『尾道(おのみち)』を提案した。
古い家屋がひしめき合うように建っていて、いくつもの石階段で彩られた場所『尾道』。(実際、ココに住むとなれば大変だろうが、なんだか水彩画にしてもよいような風情のある場所である)
そんな場所では、そこに住む人間たちの精神状態も健全そのもの。
ギスギスした人間関係なんてのは、全くもって存在しないのだ。
醤油屋の跡取り息子『吾朗ちゃん』(尾美としのり)は、学校では「腹減った〜、腹減った〜」が口癖でも、家に帰ればちゃんと家業の手伝いをする立派な子。
しっかり者の委員長『神谷さん』(津田ゆかり)は、そんな吾朗ちゃんの事が気になる様子。(和子と吾朗ちゃんが一緒にいると)
でも妙な嫉妬心でメラメラ燃えたりは決してしないのだ。(この辺りのサラッとした描き方、大林宣彦監督は流石だなぁ~)
和子の担任の根岸季衣(ねぎしとしえ)や国語教師、岸部一徳も、ノホホ〜ンとしながらも生徒たちを信頼していて暖かく見守ってくれている。(多少の痴話喧嘩はあっても。でも二人とも、やっぱ若いわ)
そんな場所へ、未来人『深町一夫(仮名)』(高柳良一)が、未来では絶滅した植物を求めてやって来るのだけど ………
2660年の遠い未来から1983年に時間移動してくる『深町一夫』。
でも、なぜ?《1983年の尾道》だったのか?!
今、現在2020年を過ぎて、存在している自分には、分かりすぎるくらい理解できた。
インターネットが普及し、携帯電話が発達して、誰でもどこでも情報が得られるような便利な世の中になっても、皆が下を向きながら常に飢餓状態。
心は全く満たされない現代社会。
世界はコロナが蔓延していて、先行き不安な想いを常に抱えている。
こんな2020年代に《タイム・ループ》したいはずがない。
やっぱり《1983年》で大正解なのだ。
キラキラと輝いていた、あの時代 ……… 人も、町も、夢だっていくつも持てた時代 ……
そうして、なにより、この時代には16歳の完璧な乙女、原田知世が存在してるのだから …… (この映画のエンディングの可愛さったら異常。半端ない!こりゃ、人気がでるはずだわ!!)
星☆☆☆☆☆。(超オススメ)
※この映画を観て、
「あ〜、自分にも《タイム・ループ能力》があればなぁ~、あの日あの時に戻れればなぁ~」と、ついつい思ってしまう今日この頃。(オッサンの哀しき郷愁)