1960年 アメリカ。
『バディ・カーモディ』(ロバート・ミッチャム)と『アイダ』(デボラ・カー)の夫婦、一人息子の『ショーン』は、家族3人で幌馬車に揺られながら、ずっとオーストラリアの平原で旅を続けている。
羊追いの仕事で食いつなぎながら、町から町へ。(広大なオーストラリアでは、数千匹の羊たちの群れを運ぶのも大変で、こんな仕事を生業してる者たちもいるのだ)
夫バディの方は、この生活に至って満足しているが、妻のアイダの方は……
(このままでいいのかしら……どこか、ちゃんとした所に定住したいわ)と、最近思い始めている。
全財産の瓶に貯めている貯金も底をつきそうなので、家を持つなんて夢の現状なのだが……(トホホ)。
とにかく一家は、遠く離れた町《カウンドウェル》まで、400マイルの距離を、1200頭の羊を追いながら運ぶ仕事にありついた。(※1マイルが1.609キロなので、ざっと計算すると639キロの距離である)
当然、こんな距離を家族だけで、大量の羊の群れを運ぶのは無理!
助っ人として、気の良い太っちょのイギリス人『ベネカー』(ピーター・ユスチノフ)を雇うことした。
さぁ、カーモディ一家とベネカーの長い旅が始まる……
殺人犯や嫌われ者の役ばかりで《バッド・ボーイ》の異名を持つ、ロバート・ミッチャム(『恐怖の岬』、『狩人の夜』、『肉体の遺産』)
綺麗だけど、神経質でお堅いイメージのデボラ・カー(『悲しみよこんにちは』、『回転』)
いつもユーモラスなピーター・ユスチノフ(『ナイル殺人事件』、『トプカピ』)
そんな個性的な面々を巨匠フレッド・ジンネマン監督(『真昼の決闘』)がまとめると、どんな作品が出来上がるのか?
こんな興味だけで選んでみた『サンダウナーズ』なのだけど……
映画はオーストラリアの大自然を見せながら、悠々とした雰囲気が漂う《アットホームなドラマ》なのでございました。
この映画、観る前からあちこちの評価を見ていたのだけど……まぁ、とにかく現代では評判が悪い (笑)。
そのほとんどが、「つまらない!」とか「長過ぎる!」なんだけど、おっしゃる事も分かる気がする。
130分超えは確かに長いし、何より物語の中に《事件》らしい《事件》が全く起きないのだ。(これが「つまらない」っていう人の大半の意見なのかも)
悪人も全く出てこないし、一家が出会う人々は、皆が気の良い人ばかり。
物語の展開の早さや起伏に、すっかり馴れ親しんでいる現代人たちには、殊更スローで退屈に見えてしまうのだろう。
でも、私は興味深く観た。(正月で時間も充分あったし。年末年始の映画としては、ちょうど良いかも)
「こんなに多い羊を追いながら連れていくのも大変だなぁ~」とか、
「あ〜、本当に羊って、ピョンピョン!跳ねながら走るんだ🐑🐑🐑」とかに、変なところでいちいち感心。(「羊が一匹、羊が二匹……」そんなレベルじゃない大量の羊を見るのも初めてかもしれない)
こんな一家は何とか無事に目的地まで羊を届けるのだが………
仕事が終わって、さっさとこの土地を離れたい『バディ』(ミッチャム)を『アイダ』(デボラ・カー)が引き止める。
「《羊の毛刈り》の仕事にありつくのよ!私も料理人になって働くわ!とにかくお金を貯めるのよ!」(なんせ家を買う資金を貯めたいし)
「えぇ〜!なんで俺が……?!」
ブツクサ言う夫バディの尻を叩きながら、奮起する肝っ玉母さんのアイダ。
息子のショーンも手伝い、すっかり一家に溶け込んだ『ベネカー』(ユスチノフ)も一緒に、集められた《羊の毛刈り》バイトに駆り出される。
そうして、今度は大量の《羊の毛刈り》を淡々とこなしていくシーンが続く🐑🐑🐑。
地味〜なシーンなんだけど、コレも私なんか感心しながら観ておりました。
ロバート・ミッチャム凄いわ!
馬は乗りこなすし、羊は追うし、羊を捕まえて毛刈りだってサクサクやってしまうなんて。(こんな事が出来る俳優が現代にいる?)
デボラ・カーにしても幌馬車を操ったり、軽々と馬を乗りこなしたり……
ピーター・ユスチノフにしても酒場で酔っ払ったミッチャム(80キロくらい)を肩に担いで、軽々と運んで歩くのだから、もうぶったまげてしまう。
地味に見えても、この映画は、現代の俳優たちと、当時の俳優たちのレベルの差を、まざまざと、我々に見せつけてくれるのだ。(本当に昔の人は凄いよ)
やがて、賭けのコイン・ゲームで良質な馬《サンダウナーズ》を手に入れたバディ。
息子のショーンが、それを乗りこなし、いざ!レースへ!
アイダの夢の家は手に入るのか……それとも、またもや貧乏暮らしの幌馬車生活に逆戻りなのか。(ここはネタバレしないでおこう)
どっちに転がっても、一家は仲良くハッピー・エンドを迎えるので、そこはご安心を。
星☆☆☆。
※羊の毛について多少調べてみた🐑。
羊の毛って《ラノリン》っていう特殊なワックスみたいな油が、けっこうベタベタ付いていて、押さえつけながら刈るのも一苦労らしい。(滑りやすい?)
もちろん、刈った毛をそのまま使えるわけでもなく、きちんと洗浄して油を落とし、加工される。
色々な人の手を借りて服飾店に並んでいるかと思うと、感慨深いものがございます。
そうして、この《ラノリン》の油さえも、化粧品に使われているそうな。
羊に無駄といえるモノは全くない!?(勉強になるなぁ~)