2023年3月9日木曜日

読書 「映画評論家・町山智浩さんの《トラウマ映画館》を読んで考えさせられたこと」

 



このblogでも再三取り上げている、映画評論家町山智浩さんの書いた本《トラウマ映画館》をやっと買った。


たまたま立ち寄ったブックオフで。(定価よりお安く)


ワタシ、この本を買う前から、この本の中で取り上げている26本の映画については、世間の噂やネットなどでチラホラと耳にしたり、目にしたりしていた。


メジャーな映画ではなく、あまり知られていないようなマイナーな映画ばかりで、しかも隠れた名品を紹介しているとなれば、変わり者の自分が気にしないはずがない。


このblogでも、それらのいくつかを観ては感想を書いているので、だいぶ助けにはなったと思う。


今回買って読んでみるのは、自分の捉え方が合っているのか、違う解釈もあるのかの、いわば《答え合わせ》的なもの。


だから初めて読むのだ、この本を。


取りあえず、以前観て、自分のblogでも取りあげた第一項目の映画『バニー・レイクは行方不明』から読み進めてみると ……




えっ?

コレは大丈夫なのか?!


読んでみて愕然とした。

細かいあらすじはおろか、この本は完全なネタバレ本になっているのだ!


バニー・レイクは行方不明』に関しては、自分のblogで書く際も充分に配慮したつもり。


そのくらい、この映画には

「アッ!」と驚く意外な結末が用意されているのだ。


だが、この本は、あらすじどころかご丁寧に《真犯人》や《真犯人の動機》まで包み隠さず、ほとんどネタバレの如く、微に入り細に入り触れているのだ。


確かに、この《トラウマ映画館》の出版された当初は、いずれもDVD化されてなく観る事すら叶わなかった、いわば《幻の名品》扱いされていた映画たち。


それが、この本の出版後、それらの名品たちは続々とDVD化されていったのだ。


でも、これから「さぁ、観るぞ!」と構えている者たちには、この本は痒いところに手が届きすぎていて、あまりにも《お節介過ぎる》気がする。


他の映画の項目も(以前に観ている映画の分だけ)読んでみたが、いずれも《あらすじ》はおろか、意外な《結末》までを、ほとんど包み隠さず記しているのだ。


《どんでん返し》を知ってしまって、観る映画が面白いはずがない。(推理小説もそうでしょ?)


まぁ、かくいう私も、映画『恐怖の足跡』については、「この映画について、どう書いたらいいのやら …… 」と悩みに悩んで、一種のネタバレ的な事を書いてしまったのだけど。(だから未見の人は観た後でお読みくださいませ)


それでも、他のモノに関してはギリギリの所でコラえて、コラえて、結末なんてのはボカして書いたりして、なるべくネタバレしないように心がけているつもりである。(特にミステリー映画は気をつけないと。かの有名な映画評論家、淀川長治先生を見習ってね)


だが、この本の書き方は …… あまりにも実直すぎ。ストレート過ぎる。


と、とにかく、この本の中で挙げられている映画のリストをココにざっと書いておく。



●『バニー・レイクは行方不明』※(行方不明になった子供《バニー・レイク》は、本当に存在しているのか?が主題)


●『傷だらけのアイドル』


●『裸のジャングル』※(原住民たちに、どこまでも追いかけられる男の逃亡劇)


●『肉体の悪魔』


●『尼僧ヨアンナ』


●『不意打ち』※(自宅のエレベーターに閉じ込められたオバサマ。そこへならず者たちがやって来て …… )


●『愛と憎しみの伝説』


●『悪い種子』


●『恐怖の足跡』※(「なんで?私にだけ《ゾンビ》が見えるのー!」女性の悲劇)


●『コンバット 恐怖の人間狩り』


●『早春』


●『追想』


●『戦慄!昆虫パニック』


●『去年の夏』


●『不思議な世界』


●『マンディンゴ』※(横暴な白人が黒人に対してやりたい放題)


●『ロリ・マドンナ戦争』※(山の中にポツンとある二家族同士の凄絶な戦い)


●『ある戦慄』※(偶然同じ列車に乗った歳も人種も違う面々たち。そこへチンピラが乗り込んできて …… )


●『わが青春のマリアンヌ』※(森の中の古城に、幻のような美しさのマリアンヌがいる)


●『妖精たちの森』


●『かもめの城』


●『かわいい毒草』


●『マドモアゼル』


●『質屋』


●『眼には眼を』※(医者を逆恨みする男のネチネチした復讐物語)


●『愛すれど心さびしく』




※印はすでに観ていて、このblogでも自分なりの感想を書いているモノである。


他にも、ジャンヌ・モロー主演の『マドモアゼル』も観たのだが、トラウマどころか、あまりにも胸糞悪くて取り上げる気になれなかった。(ジャンヌ・モローがこの映画で一気に嫌いになったくらいだ)


私が観たのは26本中、10本。


中でもベスト・ワンを選ぶとすれば『ある戦慄』かな。(列車内を舞台にした集団劇。傑作である)


言っておくが、これらの映画に爽快感などは期待しない方がいい。


「心臓を素手で掴まれて、キリキリとえぐられる」ような感覚の映画群と言ったところか。(それゆえ町山氏は《トラウマ映画館》の表題にしたんだろうけど)


とにかく、これらのリストのどれかの映画を観てから、この本は手に取った方がいいと思う。


決してこの本を読んで、映画を観た気分にならないでほしい。


以前、You Tubeで《○分で映画の内容が誰でも分かる》なんて動画が挙がっていた事が問題視されたが、それに近いモノがある。


ちゃんと2時間の映画なら2時間かけて、ゆっくり観ましょう。



味気ない世の中に警鐘として書いてみた一編でございました。(これも要らぬお節介かもしれないけど)