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2021年11月3日水曜日

映画 「夢の中の恐怖」

 1945年  イギリス。





建築家の『ウォルター・クレイグ』(マーヴィン・ジョンズ)は、ある屋敷の改装工事を頼まれた。


そして打ち合わせを兼ねて、初めて訪れた屋敷は、どこか見覚えのある場所。


さらに、出迎えてくれたフォークナー家の子息に案内されて屋敷の中に入って行くと、大広間に集まっている客たちにも全て見覚えがあるのだ。


「思い出した!私は夢の中で、この屋敷や貴方たち全員に会っているのです!」


「そんな馬鹿な!」


何人かは口々にそんな言葉を吐いたが、一人が「そういえば……私もクレイグさんのような不思議な体験をした事ありますよ」と言い出した。


「私もあるわ」と更に次の声も。


客の精神科医は、そんな話をまるで一介にしないのだが、他の者たちは、クレイグの夢の話に刺激されてか、それぞれ自分の身に起きた《不思議体験》を語りだすのだった………





こんな感じで始まる『夢の中の恐怖』である。


客たちの話が全部で5本……そう、コレも5話を繋げたオムニバス・ホラー映画となっております。


オムニバス自体、苦手なジャンルなので、当然つまづきながら観るだろうな、と思っていたら、1話1話が数分で終わる小話なので、思いの外サクサクっと観終われました。(ホッ)


第1話『死の運転手』。

負傷したレーサーの命拾いした不気味な体験談。(ラストは当時としては、けっこう大掛かり)


第2話『クリスマス・パーティー』。

ある広い屋敷のパーティーで、大勢集まった子供たちが隠れんぼして遊んでいると……隠れた部屋には見知らぬ男の子の姿が……。


第3話『お化け鏡』。

骨董品店で見つけた中古だが立派な鏡。女性は愛する恋人にプレゼントするのだが、……その鏡には見知らぬ情景が映し出される。

やがて、恋人の様子もドンドン変わっていき……いわく付きの鏡には御用心ってお話。



そうして、ジャジャアァ〜ン!




第4話『ゴルフ狂物語』。


あの『バルカン超特急』や『ミュンヘンへの夜行列車』で活躍した凸凹コンビ、ノーントン・ウェインベイジル・ラドフォードが、満を持して登場する。(このコンビ、私、大好きである。それにしても↑写真右のベイジルは、オッサンのくせに、なんか乙女チックで、この画像だけでも笑えてくる)


『ジョージ・パラット』(ベイジル)と『ラリー・ポッター』(ノーントン)は、二人とも美女の『メアリー・リー』にメロメロ。


メアリーの方も、どちらにも好意を持っていて一人に決められない様子だ。


「こうなりゃ、《ゴルフ》で決着をつけようじゃないか!勝った方がメアリーと結婚する!恨みっこなしだ!」


お互い同意して、結婚を賭けたゴルフ対決が始まるのだが………さて、軍配はどちらに挙がったのか?


勝ったのは『ジョージ』(ベイジル)の方。(ズルをして)


それを知らない『ラリー』(ノーントン)の方は(ガ~ン)大ショック!

ゴルフ場の沼に、そのまま入水自殺する。(ちょっと可哀想過ぎる)



さぁ、これで邪魔者はいなくなった。


晴れてジョージはメアリーと付き合いはじめ、ウキウキ気分だが………そこへ、なんと!幽霊の姿でラリーが、ひょっこり現れたのだ。(ゲゲッ!)


「何だ?お前は死んだはずだろう!今頃何の用なんだ?!」


「うるさい!天国に行って分かったんだ!お前ズルして勝っただろう?メアリーの事は諦めろ!じゃないと、こうやってお前の周りで一生まとわりついてやる!!」


「冗談じゃない!さっさと消えてくれ!!」


幽霊と人間の押し問答は延々続き、とうとうジョージも根負けしてきた。


「分かったよ、メアリーの事は諦める。だから、さっさと目の前から消えてくれ」


「最初から、そう素直ならいいんだ。じゃあな!」

ラリーは、後ろを向くと腕で十字をきったり、なんやかんや、妙なジェスチャーをしはじめた。


そして、「おっかしいなぁ~、こうだったっけか?」とブツブツ独り言を言っている。


「お前何をブツクサ言ってるんだ?」


「ヤバい!天国で教えてもらった《消え方》のジェスチャーを忘れてもうたぁーー!」


ぬあぁ〜にぃ〜?!


かくしてメアリーにこんな状況を説明できないジョージであるからして、結婚話はあれよあれよという間に、トントン拍子で進んでいく。


そうして、ジョージの横には、ジョージにしか見えない幽霊のラリーが、消える事もできず、常にチョロチョロしているのだった………。



ある意味、この4話が一番の異色作かも。


ノーントン・ウェインベイジル・ラドフォードの力もあるだろうが、笑える幽霊話なんてのを、ぶっこんでくるのも、また珍しい。(他の話が全部「怖がらせよう!怖がらせよう!」とするモノばかりなんですもん。俄然目立ってしまう)


贔屓かもしれないが、5話の内で私は一番コレが好きである。



そして、この映画『夢の中の恐怖』で、1番評価が高いのが、次の5話目。



第5話『腹話術の腹話術』。


『フレル』(マイケル・レッドグレーヴ)は、大人気の腹話術師。

人形『ヒューゴ』を操って、その人形のあまりにも巧みな話術は、連夜、観客たちを賑わせていた。


そんな同業者である『キー』が、たまたま舞台を観ていると、人形の『ヒューゴ』に気に入られて楽屋を訪ねる事に。


だが、操っていた『フレル』の方はというと、完全に無愛想な態度。


どっちも同じフレルの意志のはずなのに、訳のわからないキーは、とっとと追い出されてしまう。


フレルは二重人格なのか?


だが、操る人形の部分がしまいには肥大化していくと、最後には………



マイケル・レッドグレーヴの名演技で、とっても不気味な印象を残す一編である。


同じような腹話術師の映画『マジック』(1978年 / 主演アンソニー・ホプキンス)の方を先に観ていたせいか、何となく結末も予想していたら、やっぱりその通りでした。(こっちの方が年代的には先なので、『マジック』の方が、だいぶ影響をうけてるはずである)



こんな風に、客たちが奇妙な話を全て語り終えると、舞台はフォークナー家の広間に戻る。


だが、突然に広間は暗闇に包まれて、とんでもない結末へと流れこんでいく。


まるでメビウスの迷宮にのまれていくような……(けっこうインパクトのある結末なので、ここはボカしておこうと思う)



それにしても、それぞれ監督が違うのに、よくまとめてあるよ。


脚本がしっかりしているのか……まるで最後までブレる事もないんだから。(『ワンダとダイヤと優しい奴ら』で有名なチャールズ・クライトン監督も参加しておりますよ)



見た目で驚かすアメリカ映画とは、やっぱりひと味違う。


ホラー映画にしても、イギリス映画は、緻密な脚本、緻密な構成、緻密な計算で成り立っているのだ。(完璧で、少しのスキもない)


日本人も充分に几帳面なんだけど、ともすれば目移りして流されやすいのが日本人。


イギリス映画を観る時は、やはり襟を正せねば!ウン!


星☆☆☆☆。