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2021年2月28日日曜日

映画 「ギャラクシー・クエスト」

1999年 アメリカ。




昔、伝説のSFドラマ『ギャラクシー・クエスト』に出演した面々たちは、ウンザリした日々を送っている。


番組が大ヒットしたばかりに、すっかり、そのキャラクターのイメージが定着してしまい、番組が終了して数十年経った今でも、その時のキャラクターの扮装をして、数あるイベントをこなす毎日なのだ。



「私はイギリスの舞台でリチャード3世を演じたほどの名優だぞ!」


たまたま出演した『ギャラクシー・クエスト』で、トカゲ頭のかつらをつけて《ドクター・ラザラス役》をやったばかりに、ずっとそればかりをやらされ続ける『アレクサンダー・ディーン』(アラン・リックマン)の不満は止まらない。


「あなたなんて、まだマシな方よ。私なんて役の事なんか聞かれないでスリー・サイズの事ばっかりなんだから」


『ギャラクシー・クエスト』の紅一点《マディソン中尉役》の『グエン』(シガニー・ウィーバー)も渋々なのだ。



そんな二人とは対称的に、不満もあるのか、ないのか?変わり者の《技術主任チェン軍曹役》の『フレッド』(トニー・シャルーブ)は、ニッコニコとおとなしい。(この人が一番人が良さそう)


番組開始時、ギャラクシー号の《操縦士ラレド少年役》の『トニー』(ダリル・ミッチェル)は、すっかり辛辣な口を叩く大人になっていた。


「ねぇ、アイツはまだ来ないの?!」



そして、最後に、調子の良いだけの男、ギャラクシー号の《タガート艦長役》の『ジェイソン・ネズミズ』(ティム・アレン)が登場。


テンション高く、「やぁ、みんな遅れてごめん、ごめん!」と別に悪びれてもいない様子で現れた。



ズラリと並んだイベント客のために淡々とサインする面々の中で、ジェイソンだけが、やっぱり愛想よく調子が良い。


(なんせ、俺は主役だったし番組が終わっても、この大人気だしな……ウシシ……)



だが、たまたま入ったトイレの中で、ジェイソンはフアンたちの本音を聞いてしまう。


「ダガート艦長役のアレ何なんだ?オワコンで笑い者にされてるのに、全く気づきもしないでさ」


「全くさ!よ~やるよ、あのジェイソンさんもね」


「どうでもいいさ、早くギャラクシー・ダンサーのダンス見に行こうぜ」



ガーン!!( ̄▽ ̄;)


俺の時代は、もうとっくに終わっていたのか……



調子の良さから、いきなり奈落の底へ。

その夜、家に帰ると、しこたまヤケ酒を煽るジェイソンなのだった。



次の日、ジェイソンの邸宅のガラスを「コン!コン!」叩く人物たち。


二日酔いで朦朧としているジェイソンが、やっと目を開くと、灰色の宇宙スーツを着込んで、メイクをした何人かの人物たちが、ズラ~リと並んで笑顔で立っている。



「お迎えに参りました、ダガート艦長!」


(随分、熱狂的なフアンがいたもんだ……朝も早くから、こんな仮装までして、オマケに家まで押しかけてくるなんて……)



「ダガート艦長、私たちに是非、お力を貸して頂きたいのです」


自分たちはサーミアンという宇宙人で、宇宙の悪党サリスと宇宙戦争をしていると、どこから考えたストーリーなのか、そんな話を連中は、ベラベラと話し始めた。


(なんだ、また新しいイベントのお誘いか……でも、よくも、まぁ、こんな話を思いつくよ)


迎えのリムジンに疑いもせずに乗り込んだジェイソン。



だが、そのリムジンは、しばらく走ると、道路上から忽然と消える。



そう、《転送》されたのだ!


一瞬にして宇宙空間にある《宇宙船》へと。



ジェイソンを迎えに来たのは、


なんと!本物の宇宙人たち!!



そして、彼らは彼らで、ジェイソンたちを、


本当に実在する『ギャラクシー号』の乗組員たちだと、信じて疑わない


厄介な宇宙人たちなのであった………。




SF映画が苦手な私が、久しぶりに観て、珍しく大笑いした映画。



この映画は本当に面白かったし、当たりだったかも。



誰でも、SFドラマ『ギャラクシー・クエスト』が、『スター・トレック』のオマージュなのは、一目で分かるだろう。


それを演じた役者たちが、実際に宇宙に行って役名そのままに、本物の宇宙戦争に巻き込まれる。



この映画は、何重ものメタ的な構造になっているのだ。



ジェイソンにつられて、他の面々たちも宇宙に連れて来られて……


最初はアタフタ、右往左往で、おっかなビックリ。


それが、次第に役名を地でいくような活躍になっていくところに、この映画の面白さはある。



トカゲ頭のアラン・リックマンが、また良いねぇ~(このビジュアルじゃ、本物の宇宙人が信用するのも納得か)



シガニー・ウィーバーは、この映画では本当にチャーミング。


コンピューターの言葉を復唱するだけで、

「とにかく、それが私の出来る唯一の仕事なんだから!」とブチギレるシガニーが可笑しい。(本当に初めて、この映画でシガニー・ウィーバーを《可愛い》と思ってしまった)



主役のティム・アレンは、ほどよい調子の良さだけの、中年代表って感じである。(なぜか?どこでも無駄な前転をしまくるティム・アレン)


トニー・シャルーブは、これ以降、ドラマ『名探偵モンク』で大ブレークする。(宇宙人の女性になぜか愛されちゃったりもする。(これも役得?(笑) )



『ギャラクシー・クエスト』の81話で殺される端役の男、『ガイ』(サム・ロックウェル)は役名すらないのに、ジェイソンたちの宇宙戦争に巻き込まれてしまう。


「俺は役と一緒で、すぐに殺される運命なんだぁー!!」が口癖。(こういう奴に限って絶対に死なねぇーって)


最近のSF映画が苦手になってきたのは、あまりにも、SFに《リアルさ》や《真剣さ》、《説教臭さ》を持ち込んできた為。


宇宙空間は広大なのに、観ていると妙な息の詰まるような《閉塞感》を感じてしまうのだ。



《いい加減さ》、《馬鹿馬鹿しさ》、《くだらなさ》……そして《笑い》………こんなモノに、私は妙に惹かれる。


それはSF映画だけに限らないんだけどね。


映画は星☆☆☆☆☆。


真面目過ぎて、肩が凝るようなSFだけはご勘弁。

もっと元気に、《ふざけて》、《はっちゃけて》いこうぜ!SF映画!


2021年2月25日木曜日

映画 「薔薇の素顔」

1994年 アメリカ。





そんなに酷い映画かなぁ~


本国アメリカの評価と真逆の感想を持つのが、この映画『薔薇の素顔』(原題:Color of Night)。



ニューヨークは、高層ビルの一室で精神カウンセリングを開業していた『ビル・キャパ』(ブルース・ウィリス)。


ある日、目の前で自分の患者が衝動的に飛び降り自殺((゚Д゚;)ガーン!)。


そのショックで、自身も精神的なダメージを負ってしまう。


その瞬間から、全く《赤》い色が見えなくなってしまったキャパ。



(こんな風になっては分析医の仕事なんて、とても続けられそうもない……)


そんなキャパは、友人で同じ同業者のボブを頼ってロサンゼルスへとやって来た。


だが、ボブは、5人の患者をまとめての集団セラピー中。


「いや、俺は…」と遠慮するキャパを、ボブは「まぁ、まぁ……」と言いながら、強引に5人に引き合わせた。



セックス依存症の女性『ソンドラ』、

潔癖症で偏執気味の弁護士『クラーク』、

被害妄想の画家『ケイシー』、

妻子を強盗に殺害された『バック』、

そして自閉・失語・対人恐怖症の少年『リッチー』。


これらの年齢や性別、症状の違う患者たちを一斉に集めて、お互いに会話をさせたり、ディスカッションさせるようなやり方が、ボブ流の治療法なのである。



「今日、僕の患者たちを見ただろう?あれをどう思う?」

その夜、カウンセリングが終わって皆が引き揚げた後、ボブはキャパに精神科医としての意見を聞いてきた。


キャパは、重い口を開きはじめる。

「他は大した事はないが………あのリッチーという子は一番ヤバいかもな」


「そうか……」

ボブは言うか言わないか……何かをためらっていたが、意を決して、やっとキャパに話しはじめた。


「実は何者かに 命を狙われている。そして、それはあのカウンセリングのメンバーの誰かだと思っているのだが……」


「まさか…?!」

真面目な顔をして話すボブの言葉の重みを、少しでも和らげようと、キャパは半笑いしながら、軽い冗談にしようと試みた。


だが、それは冗談にはならず……


次の日、殺されているボブの 遺体 が発見されたのだった。



担当刑事の『マルティネス』に、昨夜のボブとの会話を話したキャパは、「是非、捜査に協力を!」と依頼される。


「このまま、あなたにはボブが怪しんでいた5人のカウンセリングを続けてほしい。そして、何か分かったら逐一私に連絡してほしいのだ」


「そんな……」

気が進まないキャパだったが、5人の患者たちも、「キャパに代わりにやってほしい」と全員一致で同意する。


(なんだか、大変な事になってきたぞ……)


広大なボブの邸宅に留まりながら、渋々カウンセリングをするキャパ。



そんな日々が続く中、ある日、キャパの運転する車に、後ろから(ドーン!)衝突してきた車が。


(なんだ?このヤロー……)と思うキャパだったが、振り返ると、そこに居たのはセクシー美女。


「ごめんなさい~」の声に、キャパの目尻も一瞬で垂れ下がる。


こうして、謎の女性『ローズ』(ジェーン・マーチ)とお近づきになったキャパは、どんどん逢瀬を重ねていくのだが ………




この映画は公開当初、叩かれた!叩かれた!


「こんなに最低な映画はない!」

なんて言われて、もうゴールデン・ラズベリー賞(最低映画賞)ノミネートの嵐。(からくも作品賞だけの受賞だったが、主演、助演、脚本、監督など全ての分野でノミネートされた)


監督したリチャード・ラッシュは、これ以降、映画を撮らせてもらえない、までに追い込まれる。



何が?アメリカ映画界を、ここまで大騒ぎにさせたのか?!



もう、それはひとえに、ブルース・ウィリスとジェーン・マーチの●●●シーンに他ならないのである。


もう、「これでもか!これでもか!」と頻繁に出てくる二人のシーン。



野外プールで、シャワールームで、場所を変えて …(よ~やるよ)


『ダイ・ハード』シリーズでアクション俳優としての地位を得ていたブルース・ウィリスだったのだけど、イメージ・チェンジを図りたかったのかな?…


とにかく《生々しさ》の方が、打ち勝ってしまって、一部の人たちには嫌悪されてしまう。(これ以降の映画で、ブルース・ウィリスのこんなシーンは全く皆無になる)



ジェーン・マーチの少女に近いビジュアルと、中年のブルース・ウィリスの対比が、かなり露骨に嫌がられたのかもね。(清廉潔白な方々には)



日本でも遠い昔にビデオになり、DVDは出る事は出たが、それっきり。

今では、パタリ!と、その姿を見かけなくなってしまった『薔薇の素顔』なのである。(古いDVDがけっこう高額で売り買いされてます)



確かに、こんな散々な『薔薇の素顔』なんだけど ………


でも当時、私、この映画を薦められてビデオで観たのだけど、この《トリック》を見破れなくて、逆にけっこう感心してしまいましたよ。



あんまり詳しくは書けないが、


「えっ?《この人》が本当は《あの人》だったの?!」って具合で、終盤で明かされる真相に心底ビックリした記憶がある。


まぁ、観ていない人には、「何のこっちゃ?」で、まるで分からないだろうけども。


ある意味、これも立派な《どんでん返し映画》なのである。(ゆえに詳しいネタバレが出来ない。う~ん、じれったい!)



だいたいが、この手の映画ばかりを槍玉にあげて、最低映画としてしまう《ゴールデン・ラズベリー賞》の選考も、いかがなものだろうか。


ゴールデン・ラズベリー賞を受賞した作品の中には、けっこう《面白い》っていう映画が案外隠れているものである。



そのうちDVDの再発もあるやもしれぬし、出れば出たで、もう一度観てみたい記憶に残る映画ではある。


星☆☆☆。(けっして、《アレ》目的だけではございませんので、ご理解下さいませ (笑) )

2021年2月22日月曜日

映画 「大空港」

1970年 アメリカ。




シカゴのリンカーン国際空港は、10年に一度の豪雪に見舞われていた。

そんな中、旅客機が雪に埋まって立ち往生する事故が起きた。



帰り支度をしていた空港長の『メル・ベイカースフェルド』(バート・ランカスター)は、急遽呼び戻される。


メルは妻に「こういう事情で今夜は帰れないかも……」と電話するも、毎度毎度の空港トラブルで帰宅しない夫に、電話の向こう側では憤慨のキィーキィー声。もうカンカンだ!!


そんなメルを地上勤務員の『タニヤ』(ジーン・セバーグ)は優しく気遣う。


空港の激務を理由に、メルの気持ちは、とっくにヒステリックな妻から離れていたのだ。



目の前の優しいターニャ、そう、こんな人が側にいてくれたなら……


いかん!いかん!今はこの状況をなんとかせねば!!


頭を切り替えて、メルはベテラン整備士の『パトローニ』(ジョージ・ケネディ)に電話した。


「すぐにこちらに来てくれ!大至急だ!」




そんなメルがバタバタと駆けずりまわる中、今夜ローマ行きの旅客機を操縦するパイロット『ヴァーノン』(ディーン・マーティン)がやって来た。


「だから、除雪の為に設備投資するべきなんだ!ちゃんとローマに飛べるんだろうな?!」


「たまに降る雪の為に馬鹿な投資ができるか! 我々は今の設備でやっていくしかないんだ! それに君のとこのパイロットが近道しようとしたせいなんだぞ!」


「フン!」


イヤな奴、ヴァーノン……こんな奴が妹の旦那なんて……オマケに女ぐせも悪いときてる……(メルの妹と結婚してるヴァーノン。いわば義弟なのだ)


ヴァーノンは、嫌悪するメルに目もくれず、空港の中へさっさと入っていった。



メルの察したとおり、ヴァーノンは同じ旅客機に搭乗するスチュワーデスの『グエン』(ジャクリーン・ビセット)と、もっかお熱い中だった。

だが、ヴァーノンは浮気相手のグエンから思いもよらない話を聞かされる。


「子供が出来たの……私……産むかもしれない」

搭乗する前に、こんな話で(ガーン(゚Д゚;))一気に青ざめるヴァーノン。



同じ頃、メルをオフィスで待っていたタニヤの元へ、係りの者が老婦人を引っ張ってきた。


「えっ?!こんな人が飛行機のタダ乗り?!」


にこやかに笑う『クォンセット婦人』(ヘレン・ヘイズ)はタニヤの前のソファーに品良く腰かけた。


「初めてのタダ乗りじゃないのね?」


「もちろんですよ。娘が結婚してニューヨークに住んでるのよ。往復で利用しているわ。オタクの飛行機が一番いいわね」


全然、反省もなく悪びれてもないクォンセット婦人は、無賃でタダ乗りするカラクリをペラペラと喋りだした。


呆気に取られるタニヤ。

そこへ、メルが帰ってくると、「あなたからも、この御婦人に説明してちょうだい!タダ乗りは《犯罪》だって言うことを!」とお願いする。


「あ~、ダメですよ、タダ乗りは! それにしても腹が減ったな~」と、メルは説教をそこそこに、目の前のサンドイッチを手に取りパクついた。


それを物欲しげにジーッ!と見つめるクォンセット婦人。

そんな目線に気づいたのか、メルは「どうですか?一口でも…」と薦める。


「まぁ、ありがとう。機内食にガーリックが入っていて食べれなくてねぇ~。年寄りにガーリックはダメですよ。」

婦人はメルにお礼を言いながら、にこやかにサンドイッチにかじりついた。


その光景を見ていたタニヤの呆れ顔。(ダメだ、コリャ!)

婦人は次の便で送り返される事になると、それまで厳重に見張りをたてて監視される事になった。



こんな、次から次へとスッタモンダが続くリンカーン国際空港。


空港のカウンター口では、次のローマ行きの受け付け手続きがはじまり、乗客たちが列をつくっている。


ベテラン税関職員の『ハリー』(ロイド・ノーラン)は、その中の乗客の一人に、明らかに不審そうな目を向けていた。


その人物は手続きを済ますと、アタッシュ・ケースを大事そうに抱えて、機内のゲートへと歩いていった。


「どうしたの?」近くを通りかかったタニヤが、そんなハリーに声をかける。


「今、入っていった男…何だか様子が変なんだ。あの定まらない目付き……」


「カウンターで調べてみましょうか」ベテランのハリーの勘を信用しているタニヤは、受け付けで男の身元を調べさせた。


「名前は《ゲレロ》。搭乗前に保険をかけています」


「そう……」タニヤも気にはなったが、それ以上は何も言えない状況で、他のお客の搭乗手続きの邪魔になると思い、その場をはなれていった。



そんな隙に、先程の、あのクォンセット婦人が、ひょっこりと現れたのだ。


見張りの監視人を巻いたクォンセット婦人は、ローマ行きの受け付けカウンターをすり抜けると、そのままゲートへ向けて、スタコラと歩いていく。



そうして、旅客機はローマに向けて、雪降る大空へと飛び立っていったのだった。


パイロットのヴァーノン、スチュワーデスのグエン、不審な男ゲレロ、タダ乗りのクォンセット婦人を乗せて……。



それから、しばらくして無人になったターミナルに、一人の中年の女性がフラフラと現れた。


タニヤは、その青ざめた女性のただならぬ様子に、すぐさま駆け寄った。


「どうかなさったんですか?」

女性は、先程不審そうな素振りを見せていた乗客ゲレロの妻、『ゲレロ夫人』だった。


「夫の様子が、どこかおかしくて……」


聞けば、ゲレロは元土木技術者で失業中。作業現場からはダイナマイトが紛失していたのだ。


(搭乗する前にかけていた保険金……まさか、あのアタッシュ・ケースには 爆弾 が…? 機内で爆発騒ぎを起こして、ゲレロは保険金をせしめるつもりなのか?!)


タニヤは、ゲレロ夫人を係りに引き渡すと、一目散にメルの元へ走っていった。


(大変なことになったわ……!!)



爆弾魔の情報は直ちに、空港のメルから、上空を飛んでいる旅客機のパイロット、ヴァーノンに連絡される。


パイロットや、スチュワーデスのグエンたちにも緊張感がはしる。


機内を見てみれば、窓際にゲレロがアタッシュ・ケースを膝に置いて鎮座している。


その真横のシートでは、あの!クォンセット婦人が何食わぬ顔をして編み物を始めているのだった………。




こんなに長い文章、はたして読んでくれる人がいるのか……相変わらず、長くなってごめんなさい (笑)。


個人個人の役の事情を語るのに、この映画では、こんな風に、全編137分の中、90分以上を、自分が書いてみたようなモノに費やしているのだ。(これでもメルの妻が空港に怒鳴りこんでくる場面や、ゲレロとゲレロ夫人の会話など、無駄だと思うシーンはだいぶ割愛している。それでも文章にすればこんな長さですもんね)


ゆえに、スピーディーな展開になれきった現代人たちには、少しだけイライラするかもしれない。


それでも、当時、この映画は爆発的な大ヒットを叩き出した。(なんたって興行収益は制作費の10倍以上の利益ですもん)



原題名『airport』。


そう、『エアポート 』シリーズの第1作目なのである。



とにかく、この後にもジャン!ジャン!作られていく『エアポート・シリーズ』。


『エアポート´75』、

『エアポート´77』、

『エアポート´80』……(ここまではユニバーサル映画)


で、これで終わりにはならず、アルバトロス映画に変わって、同じような航空パニック映画が作られていくと、日本では勝手に《エアポート》の冠がつけられて、全然無関係なエアポート・シリーズとなっていく。


コンスタントに、「これでもか!これでもか!」と、近年まで作られていくエアポート・シリーズ。(ここまでくるとさすがにへき易。もう、「オエーッ」って感じもするのだが)



そのくらい続くエアポート・シリーズなので、当然、この第1作目の『大空港』は傑作であるはずなのだと思い、今回、初めて観ることにしたのだ。


そうしたら、またもや主演は、あの『バート・ランカスター』。(この人の強運は70年代になっても、全く衰え知らず。それどころか、どんどん勢いを増していく)


1913年生まれのランカスターも、もはやこの時、57歳。


若い時のような《魅せる》アクロバットを売りにも出来ない年齢。


だが、この人は着実に、年齢を重ねながらも重厚な演技力を磨いてきたのだ。(『空中ぶらんこ』でも、その《悲哀》みたいなモノを見せてくれる)


全く、写真や画像だけを見れば本当に厳めしい顔のランカスターなのだけど、映画の中で、動いて喋るランカスターを観てしまえば、その印象は180度、ガラリと変わってしまうから不思議だ。



だが、この『大空港』は、幾多の大スターたちが、軒並み出演する集団群像劇。

いくらバート・ランカスターとはいえ、平均的に描かれる群像劇ではいつもの映画とは勝手が違う。



なんせ、他の俳優女優たちがスゴい面子ばかり。


☆ディーン・マーティン……『底抜けシリーズ』で有名。後、歌手としても超有名な方。(何でこんなに日焼けしてるんだろ?ゴルフ焼け?)


☆ジーン・セバーグ……『悲しみよこんにちは』のセシルが、すっかり大人の女性に。(この髪形がスゴいけど)


☆ジョージ・ケネディ……言わずと知れた名バイブレイヤー。


☆ジャクリーン・ビセット……『ブリット』、『料理長殿、ご用心』、『オリエント急行殺人事件』などの美人女優さん。



その他にも何人かの有名なスターたちが出演している。(ごめんなさい、後は勉強不足で知らないけど)


ただ、その幾多のスターたちの中で、今回、抜きん出て活躍したのは……ひとりのお婆ちゃん女優だったのだ。



ヘレン・ヘイズ……サイレント映画の時代から(古い~)活躍している女優さんで、その時代をさすがの私も、ほぼ知らないが、この人には見覚えがあった。


昔、日曜洋画劇場で放送されていた、アガサ・クリスティー原作の『カリブ海殺人事件』(DVDでは『カリブ海の秘密』に改名)で、名探偵ミス・マープルを演じていた人なのだ。


ドラマはだいぶ改変させられていたが、品の良い、穏やかで親しみやすそうなマープル役でございました。


最初から、お婆ちゃんのヘレン・ヘイズしか知らない私なのだけど、なんだか、この醸し出す雰囲気に終始、好印象を抱いていたと思う。



この映画でも、他の人たちが深刻な顔をしている中で、ヘレン・ヘイズだけが素っ頓狂な笑いを振り撒く。


それゆえに、とても《目立つ》のだ。


そして、結果は他のスターたちを押し退けて、アカデミー賞助演女優賞を受賞してしまう。(御年70歳で)


パニック映画としてのハラハラ、ドキドキ感を、この映画に、あまり求めてはいけないかも。(危険な場面もあるにはあるのだけど…今の目で見ると、あんまり大した事ない)


ヘレン・ヘイズ婆ちゃまのホンワカした雰囲気を楽しむことをオススメしておく。

星☆☆☆。


2021年2月18日木曜日

映画 「空中ぶらんこ」

1956年 アメリカ。





ごく最近、このblogでバート・ランカスターの大活劇『真紅の盗賊』を挙げてから、しばらく経った後、こんな画像を偶然に見つけた。


そう、これはバート・ランカスターと相棒のニック・クラヴァットが、サーカスにいた時に、鉄棒で大車輪をしている様子を写したものらしいが……


それにしても、スゴイ画像!


この画像を見るだけでも、二人の並外れた身体能力が伺いしれるというものである。



そうして、話は変わるが、だいぶ前に、このblogで、映画『マーティ(1955)』を取りあげた事があった。


アーネスト・ボーグナイン演じるモテない男マーティが、奮起して彼女をゲットするまでのお話。


テレビドラマの『マーティ』を映画化する際、制作に関わったのは他でもない、このバート・ランカスターだったのだ。


「こんな醜男の恋愛話なんてヒットするはずもない…」と誰もが期待していなかった。



だが、そんなモノは裏切られて、結果は各国で絶賛されて大ヒット!!


アカデミー賞では主演男優賞、作品賞、監督賞、脚色賞の4部門を制覇し、カンヌ国際映画祭ではパルム・ドールまでも受賞する偉業を成し遂げたのだった。




先見の明があるのか、それとも、元々アタマが良い人なのだろうか……


とにかく、運動神経が良いだけのバート・ランカスターじゃなかったのは確かである。(こんな風に後年、知れば知るほどバート・ランカスターにドハマリしていく私。若い時に『泳ぐ人』で見切るなんて、本当にバカバカ!)



そして、『マーティ 』がヒットすれば、制作に関わったランカスターにも、それなりにガッポガッポと入ってくる。(やな言い方だけど)


「この収益を元手に、自分の経験を生かしたサーカスの映画を作ろう!」


そうして、出来た映画が、この『空中ぶらんこ』なのである。




空中ぶらんこ乗りの花形スター『マイク』(バート・ランカスター)は、演技中、落下して、思わぬ事故にあってしまう。


それきり、杖をつきながら、何とか歩けるものの不自由な生活。


かつての栄光はどこへやら。

今じゃ、サーカスの道具係にまで落ちぶれてしまったマイクなのである。



そんなマイクの元へ昔の相棒の息子である『ティノ』(トニー・カーティス)が弟子入り志願にやってきた。


「俺に、あんたの十八番の《3回転》を教えてくれ! 《空中ぶらんこ》を習うなら、あんたに教われ!と言われて来たんだ!!」


目の前の若い青年は希望に燃えている。まだ、空中ぶらんこの危険や人生の苦渋さえも知らない、この青年……


マイクの返事は、「NO!断る!」だった。


だが、何度断っても食らいついて諦めないティノに、マイクもとうとう根負けして、二人はペアを組んで空中ぶらんこに挑戦する事になる。



(でも、俺にもう一度出来るだろうか…)


不安な足の問題を抱えて、それでも再起にむけて練習をはじめたマイク。



そんなマイクとティノの練習風景を横目で見ながら、アクロバットの美女『ローラ』(ジーナ・ロロブリジーダ)の目がキラリと光る。


(あの二人の《空中ぶらんこ》に、私も混ぜてもらえれば有名になれる! これは絶好のチャンスだわ!!……)


サーカスの団長に取り入ると、ローラは無骨な男マイクを、たらしこもうと、これまた色仕掛けで接近してきた。


だが、軽~く、マイクにあしらわれて失敗するローラ。(「もぅ、なんて男なのよ!プンプン!」ってな感じ)



ならば、と相棒の若い青年ティノに近づくローラ。(これは簡単だった。たちまちティノはローラにメロメロ。夢中になる)



団長とティノを上手くたらしこんだローラは、翌日から《空中ぶらんこ》の練習を、勝手にはじめていた。


その光景を見て激怒するマイクだったが、団長にねじ伏せられて、渋々、3人トリオの空中ぶらんこを受け入れる事になる。


男二人に美女が一人……


さぁ、ドロドロの三角関係の男女が、《空中ぶらんこ》を上手く成功させる事が出来るのか?…………



巨大な広場に、巨大なテント……昔は、子供の頃、自分の町にもサーカスがしょっちゅうやって来ては、楽しませてくれた。


平成に入ってからは、とんと、その存在すらも見かけなくなったが。(どっかの抗議団体のせい?)



サーカスの映画というと、チャールトン・ヘストンの『地上最大のショウ』が有名だが、私、この映画の事は全く知らなかった。


調べてみると、監督は、あの『第三の男』で有名なキャロル・リードじゃございませんか!(本当になぜ?長らくビデオにもDVDにもならなかったんだろう? 権利関係?)


監督がキャロル・リードと知ってみると、この映画の主題《男女の三角関係》も納得かも。(『第三の男』も男二人に女一人の三角関係ですもんね)



トニー・カーティスも若くてカッコイイです。(やっぱり、この時代のカーティスは別格)


ジーナ・ロロブリジーダは、この特長ある名前で聞いた事はあっても、映画で観るのは初めてだったかも。


キリッ!とした弓なり眉毛で、ハッキリした顔立ちの彼女。


スタイルも、ボン!キュッ!ボン!で妖艶な雰囲気をムンムン醸し出しております。


それに女性ながらも、立派な二の腕の筋肉。

やっぱり、この映画の為に、トレーニングして身体を仕上げたのか。


トニー・カーティスも均整のとれた身体を維持している。(後年、これがブクブク太って、だらしなくなるとは、誰が予想できたろうか)



もちろん、この二人はサーカスのプロじゃない。


危険なシーンでは代役を立てただろうし、合成シーンもあるだろうが、それでも二人供、身体をちゃんと作り込んでいて、そこは、「ホ~ゥ!」と素直に感心してしまった。



そして、バート・ランカスター。


もう、《空中ぶらんこ》なんて、ランカスターが、水を得た魚のような題材である。


冒頭の大車輪の画像を見てくれれば、その凄さは、お分かりになると思う。


この《空中ぶらんこ》では、ランカスターだけが、ほぼスタントなし。


自ら挑んでいるのは、どのシーンを観ても分かるし、素晴らしい身体能力。


あいかわらず、凡庸な自分は、『真紅の盗賊』と同じように、「スゲーッ!!」、「ヒェーッ!!」の声しか出てこないのである。



当時も、こんな映画が評価されないわけがない。


またもや、ベルリン映画祭で銀熊賞(男優賞)を受賞してしまうバート・ランカスター。


もう、この人の、華麗な経歴を調べれば調べるほど、改めて「本当に凄い俳優だったんだなぁ~」と感心しきりなのである。



映画は、星☆☆☆☆。


稀な俳優、ランカスターの妙技を堪能するには、もってこいの1本だと自信を持ってオススメしておきます。



2021年2月14日日曜日

映画 「ランボー ラスト・ブラッド」

2019年 アメリカ。




タイから故郷アメリカに帰省して11年………


『ジョン・ランボー』(シルベスター・スタローン)は、両親が残していたアリゾナ州の牧場を引き継ぎ、父親の代からの家政婦『マリア』と、その孫娘『ガブリエラ』(イヴェット・モントリオール)の3人で平穏な日々を過ごしていた。(こんな故郷があるなら、ベトナムの任務が終わった後に、さっさと帰ればいいのに。ずっと天涯孤独だと思っていたランボーの生い立ちに、いきなり(ズコッ!)拍子抜け)


たま~に、昔とった杵柄(きねづか)で、人命救助のボランティア活動にも勤しむランボー。(危険を求めて血が騒ぐのか?)


暇があれば牧場の地下を掘り進めて、とうとう立派な地下道まで作ってしまったランボー。(何だか、ランボーも自分の奥底から沸き起こってくる殺戮衝動を抑えようと必死なんだなぁ~)


それでも、何とか、ランボーは平穏な日常に馴染もうとしていた。



なんせ、近くには美しく成長した娘、ガブリエラが側にいるし。


そんな愛しいガブリエラを養女にして、いずれは牧場を継がせようとランボーは、勝手な夢を描いていたのだが……


年頃の娘は、そうそう思い通りにもいかず……ある日とんでもない事を言い出した。


「あたし、本当のパパの居所を見つけたのよ!メキシコよ!!おじさん、私、パパに会いに行ってみたいのよ!!」


マリアもランボーも、当然大反対。


「あの男は根っからの悪党なんだよ!お前やお前の母さんを捨てて……何を期待してもムダさ。絶対にあんな男に会いに行ってはダメだよ!!」


特にマリアの激昂は凄まじかった。


「友人の『ジゼル』が父親を探しだしてくれた」と言うと、これまたガブリエラの友達の事もクソミソに扱き下ろすマリア婆ちゃん。


「あんな最低の不良娘!あの娘が遠くに行ってくれて安心していたのに……まだ、あんな不良と関わっていたの?!」


ガブリエラの言う事、なす事、真っ向から猛反対するマリア婆ちゃんなのである。


もちろん、ランボーもマリアに同意している。



だが、これが、逆にガブリエラの反発心に火をつけてしまったのか…内緒でメキシコに旅立ってしまうガブリエラ。


ランボーは、愛しいガブリエラを救いだそうと、メキシコへ向けて後を追いかけるのだが………。




これで、本当に最後の『ランボー』シリーズ。



最後のランボーは、こんな導入部で始まるのだが…私、正直言って、この『ラスト・ブラッド』を観るのが、少しだけ恐ろしかった。



なんせ、前回の『最後の戦場』がアレですもん。


やたらめったら、情け容赦なく殺しまくるランボーに、寒気さえ覚えてしまったのだ。



これは自分の好きなランボーじゃない!


もはや《ホラー・アクション》になってしまったランボーに、拒否反応すら感じたくらいだったのだ。



『最後の戦場』の、何が自分を、ここまで震え上がらせたのか…。


それはランボーが殺しまくる為の《理由づけ》が、まるで見えてこなかったからである。


いくら医療ボランティアで美人の『サラ・ミラー』を救出するためとはいえ、知り合ったばかりの人。ましてや恋人関係でもないのに、この大量虐殺。


まるで『13日の金曜日』のようなジェイソンと化したランボーに、感情移入なんて出来るはずもなかったのだ。(ごめんなさい、私にはそう見えたんです)



その辺りの問題を、この『ラスト・ブラッド』は、どうクリアしたのか……恐る恐る観始めたのだけど……。



なるほど、これなら《ランボーの怒り》も納得する。


それにしても、予想通りの展開とはいえ、ガブリエラの辿る悲惨な運命には、ゾッ!とさせられるが。(クズの父親に会いに行って、さらわれて売春宿、麻薬漬けにされるのは、ちょっとエグすぎる)



瀕死のガブリエラを、なんとか助け出したランボーが、故郷の牧場に向かって、真夜中に車を走らせる場面では、もうウルウル。(オジサン涙腺崩壊である)


「眠るんじゃないぞ!起きてるんだ、ガブリエラ!! もうすぐ牧場に着くんだから!!」


そんな、ランボーの懸命な呼びかけも叶わず、車中で力尽きて死んでしまうガブリエラちゃん。(決して馬鹿な娘といえない。ただ、ただ父親の愛を追い求めただけなのだ!)



許せん……!!


愛しいガブリエラを殺されたランボーの悲しみと怒りは、観客にも自分にも充分に伝わってくる。



もう、好きにやっちゃってちょうだい!、ランボー!!(私が許す)


お前の力を見せる時がきたのだ!!



と、ここで再び「オオッ!」と唸ってしまう私。


マリア婆ちゃんを姉の元へ送り出すと、牧場の至る所に巧妙なトラップを仕掛ける為に準備に勤しむランボー。(こ、これは!)



そう、まるで、第1作目の、山の中で追ってくる警察たちに仕掛けられたトラップを思い出させて、シリーズをずっと観てきた自分にはニヤリとさせられる場面なのだ。


当然、冒頭の地下道にも幾多のトラップが仕掛けられる。



そして、準備は完了。

悪党たちを誘い出して、全員血祭りにしてやる!



もう、後はランボーの独断場の大暴れ。


面白いように、悪党たちは次々とランボーが仕掛けたトラップに引っ掛かって絶命していく。(ランボー最大の武器、あの《弓矢》もちゃんと出てくるしね)



多少、やっぱり殺し方にエグいシーンもあるにはあるが、私は今回だけは許す気になった。(なんせ、愛しいガブリエラの仇討ちって名目があるしね)



最後、悪党たちを倒したランボーは馬に乗ってどこかへと去っていく……。


エンディングには、第1作からの名場面のシーンがスライドされ、映し出されると、「あ~本当に終わりなんだぁ~、ありがとうランボー! 今までお疲れさま、ランボー!」と何だか感慨深くなってしまった。


シルベスター・スタローンも、吹き替え担当のささきいさおさんも、長い間ご苦労さまでした。



星は、もちろん☆☆☆☆☆。


『最後の戦場』でランボーに見切りをつけた方々には、この『ラスト・ブラッド』で是非に溜飲を下げてほしいと、特にオススメしておく。


※やっと書き上げた『最後のランボー・レビュー』に、取りあえず今は、「ホッ!」とする私なのである。



2021年2月6日土曜日

ドラマ「赤い死線」

1980年 11月7日、14日。




北海道襟裳からバレリーナを夢見て、東京に上京してきた『川浪良子』(百恵ちゃん)は、故郷の母に仕送りする為に、夜は高級ディスコ《ミルキー・ウェイ》のダンサー生活。


だが、ダンサーといっても、ディスコの音楽に合わせて、お立ち台の上でドスケベな男たちの視線に晒されながら踊るのだ。


決してマシな仕事じゃない。


そんな良子の信用できる友達は、このビルの窓辺から、向かい合わせに見えるビルの時計だけ。


踊りながら、チラチラ眼にはいる時計の針に、

「後、もう少しで、こんな嫌な仕事も終わる……あの時計だけは私を裏切らない……大切な友達……」


こんな想いで毎夜、踊り続ける良子なのである。



そんな良子をお立ち台の下で眺めながら、

「いいねぇ~若い娘は……」

なんて舌舐めずりしてるのは、このビルのオーナーで金貸しが本業の『江藤社長』(高橋昌也)。


そんな江藤を袖にして、わざと手を踏んづけたりする良子(イジワルな百恵ちゃん)。


「おい!ビルのオーナーさんなんだぞ!ちょっとは愛想よくできないのか?!」

ディスコの支配人(石立鉄男)はカンカンだ。



そんなディスコに突然、男が乱入してきた。


怒鳴りこんできた青年、『北村明夫』(三浦友和)は、「預けた1000万円を返してくれ!」と江藤に直談判にやってきたのだ。



そんな明夫の懇願に、江藤は「知らんな~」と、悪党らしくスットボケ。


チンピラの部下たちに明夫を押さえつけさせると、冷酷に「外に放り出せ!!」と言い放つ。


「江藤さん、俺を騙しやがったのか?!あんたを……あんたを殺してやる!」憎悪の言葉を残して、明夫は連れ出されていった。




そして、夜半、寂れたアパートに帰りついた良子。


良子は故郷の母に向けて嘘の手紙をサラサラ書いていた。


「バレリーナになるために頑張っているわ……」そんなデタラメな嘘をならべたてて。


もう、とっくにバレエ団からは退団させられていたのにだ。



そんな良子のアパートに突然、侵入者が現れる。


「誰?誰なの?!」


なんと!現れたのは、先ほど連れ出されていった青年、北村明夫(三浦友和だったのだ。(これ、三浦友和じゃなかったら、ただの不法侵入の変質者である)


見ると明夫の手には重そうなカバンが。

「江藤から1000万円を奪い返してきたんだ!」(友和、それ泥棒だって!(笑) )



そんな明夫、良子が書いていた手紙に目が止まったようだった。すると、


「良子ちゃん?あのうちの側に住んでいた良子ちゃんなのか?!俺も北海道の襟裳なんだ!! 覚えてないかい?近所の北村明夫だよ!!」


「明夫……さん?」


なんと!これまたビックリ。二人は同郷で幼馴染みだったのだ。(こんな偶然ある?無い!無い!これは都合のいいドラマだから)


素性が分かった二人の会話は、やがて良子の現状、バレリーナの話へと変わっていく。


「母に嘘の手紙を書いてるのよ。とっくにバレエなんてやめてるのにね……馬鹿ね、私って……」と自嘲気味に語る良子。


そんな良子に、何を思ったのか明夫は、いきなりの平手打ち。


「バカヤロウー!!」

(友和、お前が馬鹿野郎だ。不法侵入、泥棒、女性をビンタ、もう、どれだけ罪状を重ねるの?(笑) )



そんな明夫のビンタに目が覚めた良子(百恵ちゃん)は、何を思ったのか、突然こんな事を言い出した。



「故郷へ……北海道の襟裳へ帰るわ!あなたも一緒に帰らない?! そうよ!

こんな東京にオサラバして、二人で帰りましょうよ!!


たった一発のビンタで、目の前の男、明夫に惚れてしまった良子は、いきなりこんな提案をしてきたのだ。(この良子も相当、おかしな女である。)


「分かった……二人で北海道へ帰ろう」(良子も変なら、明夫も変。変な者同士で妙に気が合う二人)



だが、その前に明夫が奪ってきた1000万円は返さなくてはならない。


これに関しては頑として譲らない良子の説得に、明夫も折れて、二人は江藤商事のビルに、深夜やって来たのだった。


ビルの一階には、守衛のオジサン(べらんめえ調の松村達雄)がいるだけ。


そんなオジサンに良子(百恵ちゃん)は、「オジサン~ごめんなさい。更衣室に忘れ物しちゃって……取りに行きたいんだけどいいかしら?」の甘え声。


「しょうがないなぁ~」と守衛のオジサンも美人には甘く、鍵束を持って良子をビルに引き入れた。その後を、こっそりついていく明夫。



更衣室の前で、「どの鍵だったかなぁ~」と探るオジサンに、わざとぶつかり良子はいくつもの鍵を床に散らばらせた。


「ごめんなさい~」と言いながら、鍵を集めるフリをして、良子は最上階のオーナー室の鍵を見つけると、廊下の角に隠れた明夫の元へと、それを滑らせる。



(上手くいったわ……後は明夫さんが、あの1000万円を返しにいくだけ)


良子はオジサンを体よくあしらうと、ビルの外で明夫が戻ってくるのを、じっと待っていた。




でも、待てどくらせど明夫は現れず……。


シビレを切らした良子は、もう一度ビルに戻ってみると、オーナー室の扉の前では蒼白になった明夫がいた。


そして、その先には、包丁で背中を刺され死んでいる、あの江藤の姿が……。


「……俺が来た時は、もう殺されていたんだ!」



その言葉を即座に信じる良子。


そうよ!この人は犯人なんかじゃないわ!(愛する友和だから?もう恋は盲目である)



そんな二人の後ろから、


「ひっ!人殺しー!!」の絶叫がこだまする。


振り返ると、あの、守衛のオジサンだったのだ。



(これはマズイ)と思った二人は、オジサンを椅子にグルグル縛りあげて、口には猿ぐつわをした。(オイオイ、お前ら)


フンガ!、フンガ!と悶えるオジサンに、「ごめんなさい、オジサン。でもこの人は犯人じゃないのよ。真犯人は必ず別にいるはずなんだから…」と言う良子。


でも、そんな良子の言葉に、とても同意している様子でもない守衛のオジサンなのである。(縛られて、猿ぐつわじゃね)



ビルの外に出て、車に乗り込んだ明夫と良子は考え込んでいた。



二人は無事に疑いをはらすことが出来るのか?


深夜のビルに、あの、友達の時計が無情に針を進ませていく………。





こんな感じの『赤い死線』が百恵ちゃん最後の引退ドラマである。



ご覧のように、百恵ちゃん演じる良子も、友和演じる明夫も、相当に変だ。



友和なんて、もうやってる事は犯罪のオンパレード。


これのどこを見て、


「この人は犯人なんかじゃない!」なんて言いきる事ができるのか (笑)


そう、このドラマは、ハンサムな友和と人気絶頂の百恵ちゃんだったからこそ、ギリギリ成り立っているようなお話なのである。


二人の高い好感度と、現実に二人がこの後、「結婚する!」っていう、世間の祝福モードがあればこそ、こんなヘンテコリンなキャラクターでも、当時は違和感なく観れた奇跡のドラマだったのだ。



もう、この後もヘンテコな展開が続く続く……。


コレを昔は違和感なく観ていたんだよなぁ~(よく、これを思い出の中で美化できたよ、と我ながら不思議に思う)



このヘンテコなドラマ、「原作の小説はマトモなのか」と、私、ウイリアム・アイリッシュ(コーネル・ウールリッチ)の『暁の死線』を読んでみた事もある。


やっぱりドラマを地でいくようなお話でした。


アイリッシュの美麗なタイトルの付け方と、詩的な文体に騙されてしまいがちだが、よくよく読んでみると、この人の小説自体が、トンデモない、あり得ない展開だらけなのだ。(映像にすれば、この出来も納得なのかもしれない)



それでも、「百恵ちゃんの為なら…」と、この後も有名俳優や当時のスターたちが、軒並出演してくださっている。


アン・ルイス、ジョニー大倉、松原智恵子さん、三國連太郎さん、前田吟さん、春川ますみさん、坂上二郎さんと……(飛びます!飛びます!)



宇津井健なんて、役名すらない端役でも駆けつける始末。(まぁ、お二人の仲人だしね)



ドラマ自体は、トンデモない内容でも、当時の祝福モードは画面を観ていても伝わってくるかも。


そんなスターたちに支えられて、ギリギリ星☆☆☆としておきます。



※あっ、そうそう、真犯人ですが、「オーナー室の鍵を開けられるのは、《この人》しか出来ない」と書けば、察しのよい人にはお分かりになるかな?


長い逃亡を続けながら、あちこちと、さ迷った二人のたどり着いた真相が、結局これだったとは……トホホ (笑)

2021年2月2日火曜日

映画 「フランス式十戒 ③」

《②の続き》




《6話目》

20歳の医学生『ピエール』(アラン・ドロン)は、ビーチ沿いでレストランを経営している両親の一人息子。


でも、何かとガミガミ小言ばかり言っている母親には、ここ最近、ウンザリしていた。


こっそり父親に愚痴るピエール。


「何であんなにうるさいんだ!あれでも本当に僕の母親なの?!」


父親はしばらく黙っていたが、意を決したように、とうとう打ち明けた。


「実はお前には、本当の母親が別にいる」と。



ガガーン!!( ̄□ ̄;)!!


思ってもいなかった衝撃の事実に大ショックのピエール。


しかも、16歳の若さでピエールを産んだ本当の母親は、誰もが知る有名女優『クラリス』(ダニエル・ダリュー)だったのだ。


またもや、ガガーン!!と大大ショックのピエール。



「二人とも若すぎたんだ……その後、私は母さんと知り合って結婚して、お前を実の子として育ててくれたんだ」


しばらく黙っていたピエール……でも……


(本当の母親がいるなら会ってみたい!)

そんな気持ちが、途端にムクムクと沸いてきた。



こうして、女優クラリスの楽屋をこっそりと訪ねたピエール。


(喜んでくれるだろうか? それとも追い返される?……)


期待と不安の中で、ピエールはクラリスを目にすると、おもわず「母さん!」と叫んだ。


クラリスは最初、ビックリしていたが、全てを察したようだった。

表情はにこやかになり、我が子ピエールを包むように抱きしめてくれた。


「あ~私の坊や、こんなに大きくなって……」


母子の再会は感動的。


だが、クラリスは、ピエールやピエールの父親が知らなかった、思わぬ衝撃の事実をピエールに話しはじめるのである……。




なんだか継母とか、実の母親とか、アラン・ドロン版『赤いシリーズ』みたいなお話である。


もう、この頃には『太陽がいっぱい』や『若者のすべて』で、世界中ドロン旋風が沸き起こっていた時代。


とっくに大スターの仲間入りをしていたアラン・ドロン。


そんな大スター、アラン・ドロンが、よくも、まぁ、こんなオムニバス映画の短い一編に出演してくれた事よ。(デュヴィヴィエ監督作品だからか?)


そして、やっぱり、この頃のアラン・ドロンの美青年ぶりは、別格すぎるくらい別格。

男の自分から見ても、「美しい」整った顔をしている。


こんなアラン・ドロン、その後も活躍していくのは、万人が知るところなのだが、デュヴィヴィエ監督との縁は続いていく。


そして、デュヴィヴィエの遺作は、アラン・ドロンを主演にした『悪魔のようなあなた』なのである。



実母クラリスを演じたダニエル・ダリューもデュヴィヴィエ監督とは、縁が深い。

以前、紹介した『自殺への契約書』でも主演してるしね。(早くDVD出してよ!)



このお話のオチも中々良いし、アラン・ドロンとダニエル・ダリューの共演で、私の好みの一編なのである。





《7話目》

調子の良さだけが売りのテキトー銀行員『ディディエ』(ジャン=クロード・ブリアリ)は、社長から本日をもってクビを宣告された。


クビと言われても、全く反省のないディディエ。


「今日はまだ6時間もある。あ~あ、クビになるなら、出社しないで寝とけばよかった~」なんて社長の前で、堂々とのたまう始末。(案の定、社長の「出てけー!」の雷が響く)


しかたなく、(最後の仕事を一応せねば…)と銀行の窓口にしぶしぶ座るディディエ。



そんなディディエの前に突然、妙な様子の男がやって来た。


新聞紙の間からピストルを覗かせると、「おい、金を出せ!」とボソッと言ってきたのだ。


( ´゚д゚`)アチャー、銀行強盗かよー。



でも、このディディエ、怖がる様子もなく、楽しそうに札束をドンドン目の前に、差し出し始めた。


「さぁ、どうぞ!ハイ、どうぞ!!」


どんどん差し出す札束の山に銀行強盗もビックリ。


それでも、何とかせっせと鞄に詰め込んでゆく強盗。


ディディエの差し出す札束は、まるでおかわりする《わんこそば》の如く、次から次へと差し出される。(いいのか?)



やっと満足した銀行強盗が立ち去った後、ディディエは警報ベルを押して、失神するフリをして、その場に倒れたのだった。



その後、警察の事情聴取でも、デタラメな犯人の人相をペラペラと喋るディディエ。


でも、ディディエには、ある考えがあったのだ。


(あの強盗、どこかで会った気がする……そして、あの強盗から上手くあの金を奪えたら……)


仕事はテキトーでも、ディディエの悪知恵は天下逸品。

早速、金儲けの為、行動を開始する……。



ジャン=クロード・ブリアリも、日本ではあまり知られていないが、それなりに有名な俳優。


クロード・シャブロル監督の『いとこ同志』や別のデュヴィヴィエ監督作品『火刑の部屋』にも主演しているという。


アラン・ドロンの話を観た後に、ブリアリじゃ、ブリアリには、ちと部が悪いかも。(そのくらいアラン・ドロンの美青年ぶりが光っているので)


でも、ブリアリも、もちろん整ったお顔をしていて好青年なんだけどね。(一応、テキトーだけどフォローしとく (笑) )



「盗んだ金を盗みかえして何が悪い?」


こんな開き直りと、主人公のご覧のようなテキトーな性格で、このお話がドタバタ・コメディーとしては、一番明るいかも。


話は凡庸だが、映画を明るく締めるなら、丁度いい作品ってところかもしれない。




《エピローグ》

《1話目》の『司教』と『ジェローム老人』(ミシェル・シモン)は、昔ばなしに夢中になりすぎて、ワインを何本も空けながら、すでにベロベロ、泥酔状態。


神を冒涜しないよう、十戒の説教をしていたのも、すっかり忘れてしまっている様子の司教様。


料理女は、そんな二人の接待で日曜だというのに家にも帰れず、台所ではブツブツと文句が止まらない。



そんな3人の目の前に現れた『蛇』=悪魔の化身。


「キャアーッ!蛇よ!!早く暖炉に投げ込んでちょうだい!!」


ジェローム老人、少しも慌てず、蛇を手掴みすると(ゲゲッ!よく触れるよ)外の井戸に持っていって投げ入れた。


[ギャアアァーッ!!なんて事するんだ?!このヤロー!!]『蛇』(悪魔)は、雄叫びを上げながら落ちていく。



でも、しばらくすると、またもや別の所から、スルスルと現れて、ひょっこりと顔を出す『蛇』(悪魔)。


[ハハハーッ!バーカ!!そんなに簡単に悪魔が殺されるかよ!](なんじゃ?このお茶目な演技過剰の悪魔は (笑) )



『人間』が存在する限り、『悪魔』も死なず。

映画は、そんな教訓を残して《Fin》となるのである。




こんな感じで、書いてみた『フランス式十戒』いかがだっただろうか?


3回にも分けて長々と、この映画だけについて語っている変わり者もいないはず。(よく書いたよ)


私の評価は全体として、星☆☆☆。


「面白いー!」というのもあれば、これは「ん~……」とアタマを捻りたくなるのもあって、プラスマイナスで、評価としてはこれが妥当かな。


オムニバス映画は観るのも、その感想を書くのも難しい。


取りあえずは書いてみて、「当分オムニバス映画は、もう、いいや…」ってのが正直な本音。(まぁ、とにかく大変なので)



それでも、この映画を観る際の、何かの参考になってくれれば、これ幸いである。



とにかく、面白いと思う話は深く考えずに笑いとばそう!(下の画像の二人のように)


人生はケ・セラセラ(なるようになるさ!)である。


こんな言葉を結びとして、ひとまず終わりにしたいと思う。(それにしても、ハァー、疲れたびー)


映画 「フランス式十戒 ②」

《①の続き》




《4話目》

金持ち夫婦の買い物(宝石店での宝石選び)に付き合った妻の友人である『フランソワーズ』(フランソワーズ・アルヌール)。


煌めく輝きに目を奪われながらも……(こんなのは無理)と羨ましさを隠して、半端諦め顔。


彼女の夫は貧乏劇作家、でも二人の間には、ちゃんと愛がある。


(それで満足しなくちゃ…)


そんな気持ちを知ってか知らずか、富豪で友人の夫『フィリップ』(メル・ファーラー)は、フランソワーズにモーションをかけてきた。(妻の友人なのに)



フランソワーズが目を輝かせていた、あのダイヤのネックレスをプレゼントまでして……。


「こんなの付けられないわ!家で夫の前で、これを付けるなんて……」


そう言いながらも、フランソワーズは鏡に映る、宝石を首にかけた自分の姿から目が離せない様子。



そして、


(何とか自然に、この宝石を手に入れた事にして、夫の目の前でも、このネックレスを首にかけられないかしら……)


宝石の魔力がフランソワーズの貞節を、とうとう狂わせてしまう。


いつしか懸命に策を練るフランソワーズなのだが……。




あのメル・ファーラーが出演してる。


実生活でも5回結婚している彼は、この映画のように、実際もそれを地でいく生粋のプレイボーイである。(4度目の妻がオードリー・ヘプバーンなのは有名)


何でこんなにモテるんだろうねぇ~(あんまりハンサムそうにも見えないんだけど)


やっぱり、女性に対してマメなのか、気が利いてるのか。


男は顔じゃない!ってメル・ファーラーを見かけるといつも思ってしまうのである。(失礼だけど)



そして、フランソワーズ・アルヌール。


彼女を観たのは、この映画が初めてだったが、その噂は昔から知っていた。


日本人に愛されたフランソワーズ。


石ノ森章太郎の『サイボーグ009』に出てくる003/フランソワーズ・アルヌール(同名)は、この人の名前から、そのまんま命名されたのは有名な話である。


何だか、華奢でホッソリしていて、首も細くて、オードリー・ヘプバーンにも似たような体つきの彼女。


オードリーと同じように、あまり性を感じさせない雰囲気は、当時の日本人にも、すんなり受け入れやすかったのかもね。(なかなか可愛い人ですよ)





《5話目》

寂れた寒村の道をぶらりとやって来た男(フェルナンデル)。


ポツンとある一軒家の側まで来て、窓をそーっと覗くと、車椅子に座った老人が「失せろ!」と怒鳴り付けた。


その様子をドア陰からじっと見ている少女。


男が笑いかけると、少女マリーもニコッと笑った。


じい様は車椅子、ばあ様は寝たきり生活。

両親は羊飼いの仕事で年中留守。


幼いマリーが、ばあ様の介護をする日々だったのだ。


「おじさん誰なの?」


「私? 私は《》さ」


喜ぶマリーは、男《神様》を、早速、家の中へと連れてきた。


だが、当然、寝たきりのばあ様は男の言葉を信じるはずもなく……


「さっさと出ておいき!! この浮浪者め……何が神様だ!神なら何か奇跡をおこしてごらん!!」と荒い息で怒鳴りまくる。


そんなばあ様の剣幕にも、男はどこ吹く風。


落ち着き払って、「いいでしょう……分かりました」とあっさり言ってのけるのだが……。




このオムニバス映画でも、私の一番のお気に入りは、この1本かも。


この短い話のクライマックスには、捻りの利いた《どんでん返し》が待ち構えている。



主役の男《神》を演じるのは、デュヴィヴィエ監督お気に入りの俳優フェルナンデル。


デュヴィヴィエ作品では、名作『舞踏会の手帖』や『ドン・カミロ』シリーズに出演している。


この人の顔も、面長で特徴的で、1度見たら忘れられないくらいのインパクト。


この話の中では、「ロバに似ている顔」なんて事も言わせている。(いいのか?ちょっと可哀想な気もするが)


さぁ、こんなロバみたいな男に、はたして奇跡はおこせるのか?!(本当に失礼でごめんなさい (笑) )


淡々と話は進みながらも、仰天のオチが待っている……。





取りあえず②はここまで。


まさか、書きはじめてみて、こんなに長くなるとは。


私にしては、今までで最長の③にまで、とうとうなってしまいました。(もう、こうなったら最後までキチンと書いてやる! どうぞ、もうしばらく我慢してお付き合いください)


次回、とうとう最終回。

そして③へと続くのであ~る。

2021年2月1日月曜日

映画 「フランス式十戒 ①」

1962年 フランス。





久しぶりのジュリアン・デュヴィヴィエ監督。



私の好きな監督ゆえ、「さぁ、観るぞ!」と勢いこんで、観はじめたのだが……またもや、私の苦手なジャンルとは……。


私、オムニバス映画なるモノが、本当に苦手。


この映画も、7本の短い話で出来ている。(最後には最初の1話目に戻ってエピローグの結びとなる)


オムニバス映画が苦手なのは、それぞれの登場人物を、やっと覚えて、徐々に気持ちがノッてきた頃に、「ハイ、おしまい!」ってな感じで、《プツン!》と終わってしまうため。


次の別の話を……なんて、すぐに気持ちの切り替えが出来ないのだ。(私の場合は)


(これは長期戦になるぞ……)と覚悟して観たのだけれど……やっぱりダラダラと観る結果に。


それでも、大好きなデュヴィヴィエ監督ゆえ、ここに、できるだけ書き記したいと思う。


さぁ、第1話からのスタート!




《1話目》

お堅いシスターたちがいる修道院で、年老いた雑用係で働く『ジェローム老人』(ミシェル・シモン)は、お人好しだが、ちょっと、オッチョコチョイ。


失敗すれば、「神さん、ナムサン…」の言葉がついつい口癖で出てしまう。


「神の名をやたらと唱えるなんて………ここは修道院なんですよ!なんて分別のない! それは神を冒涜する行為です!!」と院長に毎度叱られる始末。


そんな修道院にある日、司教様がやって来るというので、修道院は緊張感でピリピリ状態。


(どれどれ、どんな司教様なんじゃろ…)と興味本意で覗いてみると…


「ありゃー!あれはワシの子供の頃の幼馴染みじゃないかー!!」


喜ぶジェロームは、司教に強引に話しかけ、司教様もビックリ。


二人はシスターたちのジト目をよそに、昔話に花が咲きはじめる。


そんな、ジェロームのペースにスッカリのせられて、司教様も徐々にお堅い仮面を外して、ヤンチャな子供の頃の地が出てしまうのだが……。



名前と顔だけは知っていた、このミシェル・シモンさんの出演している映画を観たのは初めてだったかも。


もう、本当に独特なお顔の方。


この決してハンサムとは言えない(失礼!)お顔で、若い頃は相当苦労したという。

《若い頃のミシェル・シモン》


でも、歳と共に身に付けたおかしみやユーモアは、唯一無二。


おっちょこちょいのじい様を嬉々と演じてくれて笑わせてくれる。(バート・ランカスターとも共演しているらしいし、多分、これから他の映画でもお目見えする事だろうと思う)





《2話目》

美人ストリッパー『タニア』(ダニー・サヴァル)に恋して、店に通いづめていたオタクの青年。


突然店を辞めた彼女を探して、なんとか住まいを訪ねてみると、何と!タニアにはアパートの管理人である旦那がいた。


いたたまれず、帰ろうとするも旦那に呼び止められて、そのうちタニアも、ひょっこり帰って来る。(旦那は嫁の仕事がストリッパーとは知らない)


「キャー!わざわざ来てくれたの!あなた私のフアンでしょ?私の踊りを見て!見て!」


部屋で、レコードをかけて、ノリノリで、次のストリップの実演をはじめるタニア。


明け透けで、下品な彼女を目の当たりにして、オタク青年の熱も徐々に冷めていく。


「ここで、胸の貝殻を放り投げるのよ!今度は下の貝殻もよー!キャハハー!!」(本当にお下品)



(これが本当の彼女か……)


青年の恋は儚く終わり、トボトボと帰っていった。


だが、旦那の方は今まで知らなかった妻の一面を見てしまい、逆に大興奮!


青年が帰っていった後、「さぁ、私の前で実演してくれ!」(ハァ、ハァ)


管理人部屋には、《本日は休業》の立て札をかけるのだった………。



このストリッパー役のダニー・サヴァルもどこかで観た覚えがあると思っていたら、このblogでも以前に挙げていた『アイドルを探せ』に出ておりました。


フランス語でも、この人の声も超独特。(ものすごく響くキンキン声で、まくし立てる)


黙ってれば充分美人さんなんだけどねぇ~(オタク青年が夢から覚めるのも、この人なら妙に納得。分かる気がした(笑) )





《3話目》

神学校に通う『ドゥニ』(シャルル・アズナブール)の元へ、妹から遺書の手紙と手帳が届いた。


それと同時に、妹カトリーヌの遺体が、身投げした川から引き揚げられたという知らせがくる。


妹は悪党に麻薬浸けにされ、ボロボロにされて自殺したのだった。


手帳には、その詳細が書かれており、読み進むうちに、悪党(リノ・ヴァンチェラ)へ怒りを抑えきれなくなってくるドゥニ。


「我々は神に遣える身。後の裁きは警察に任せるべきだ!」


神父は忠告するも、ドゥニは、とうとう決意する。


「私は私のやり方で、あの悪党を裁いてやる!」と……。



このオムニバス7本の中で、一番の悲劇話。(他がそんなに重くない話ばかりなので、特にこの1本だけは異色かも)


思い詰めて復讐を誓うドゥニを、あの有名歌手シャルル・アズナブールが演じている。


でも、話には全く関係ないんだけど、「シャルル・アズナブールって、こんなに小さかったんだ~!」と改めて気づいてしまった。(『アイドルを探せ』では、あまり気にならなかったのだけどね)



神父役の人と画面に並べば、それがハッキリと分かる。


まるで子供みたいな低い身長。

それに痩せていて貧相な体つき。


リノ・ヴァンチェラとも並んでみても、やっぱり小さいシャルル・アズナブール。


こんな体から、あの、大ホールに響き渡るような声が出るのか~。(人は見かけじゃ分かりません。なんか別のところで、妙な感心をしてしまいました)




リノ・ヴァンチェラの方は、いつもの安定の悪役。(本当に可哀想なくらい、いつも悪役ばっかり)


でも、話自体は、あんまり私好みじゃないかもしれない。(アズナブールには気の毒なんだけどね)





こんな感じで書いてみて、やっと3話分が終了。


そして、取りあえず今回はここまで。



簡単に書いてもいいのだが、なんせ、この映画、有名なスターが、この後もめじろ押しに出演なさってるのだ。


粗略に扱うのも、なんだか気がひけてしまう。


長々と②にまたがる事、どうかお許しを。(だからオムニバス映画は苦手なのだ (笑) )


②へと続くのであ~る。