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2019年5月20日月曜日

映画 「ボヘミアン・ラプソディ」

2018年 イギリス・アメリカ合作。






昨年、巨額の興行収入をうちだし、主演のラミ・マレックがアカデミー賞主演男優賞を受賞したのは、記憶に新しい。


それくらい、この映画は世間一般に認知され、大ヒットした。



だが、この状況を自分は、いささか冷めた目で見ていたような気がする。





皆がご承知のように、ボーカルのフレディ・マーキュリーは、《ゲイ》である。



この、一見すれば性差別になりかねないデリケートな部分を映画ではどう描くのか……これをアカデミー賞にまで持ってくるには、かなり気を付けて扱わなければならない。



だが、まったく、それに触れるということもできないし、見過ごすこともできない部分なのである。


なるほど、映画では、普通の人でもあまり、嫌悪感を抱かせないように、かなりソフトにぼかして描いている。


これならアカデミー賞にノミネートされるのも納得してしまった。



ただ、同時に、この映画を観てみて、アカデミー賞作品賞を受賞できなかった理由も分かってしまった。


クイーンの曲は、若い頃に何枚かアルバムも聴いていたし、実際にフレディ・マーキュリーが歌っているライブDVDも観たことがある。


もちろん有名な曲も知っている。

タイトルの「ボヘミアン・ラプソディ」はもとより、「キラークイーン」、「ウィ・ウィル・ロック・ユー」、「伝説のチャンピオン」などなど……。


映画の中で、これらの曲が流れると、盛り上がるのも分かる。




それくらい楽曲の力が強いという証拠なのだが……だが、想像してほしい。



この映画の中で、もし、曲を全て省いた場合、この映画がドラマとして面白いのか、どうかを。




何もかもが《予定調和》すぎるのだ!




フレディがバンドメンバーになるときも、少しフレーズを歌えば、即O.K.!
(だれも反対しない)


バンド名をクイーンにして、名前もマーキュリーに改名すると、曲も即、ヒット!
(下積みの苦労なんて全然ありません、あっという間に有名バンド)


メアリー・オースティンと付き合う。
(あっさり恋人になる)


6分の長い曲「ボヘミアン・ラプソディ」完成、ラジオで流すのに周囲は反対。でも強引にラジオで流すとヒットする。
(多少困難もあると思ったが、ラジオに出演したフレディが、鶴の一声で言うと、流すのもアッサリ決まる)


男にキスされる。
(ゲイに目覚める)


メアリーにゲイを告白して別れる。
(メアリーも指輪をはずして、アッサリ婚約解消、まったく恨んだりしません。「だって私は理解のある女ですもの」)



と、まぁ、最後までこんな調子で、映画は進んでいくのだから、たまったもんじゃありません。



何の葛藤もなければ、苦労もなく、トントン拍子で進みながら、間に有名な曲を挟んでいっただけで、映画は完成しているように思えた。



もちろん、ありのままを描けば、ドロドロの人間模様になるのは分かっているし、存命の人間がいる限りは、下手をすれば裁判沙汰になる危険性があるのも分かる。

『誰も不快にならないように、あたらずさわらず描かなくてはならない』、と思いながら、ビクビクして撮っている監督ブライアン・シンガーの声が聞こえてきそうである。



アカデミー賞にも、あんまり毛嫌いされずにノミネートされた!


主演男優賞もなんとか取れた!


『ホッ』と胸を撫で下ろす監督だったでしょうよ。


ただ、結果、ドラマ部分は、全くつまらない映画が完成してしまったのだった。




これが伝記映画の限界ならば、いっそ、クイーンの曲だけを使って、「マンマ・ミーア」のように、全く別の物語を作ったミュージカルにすれば良かったのに。



そうすれば、規制もあまりなく、壮大な、ワクワクするような映画になったのでは?と思えるのだがいかがなものだろうか。


残念ながら、自分の感想は、
クイーンの曲に星☆☆☆☆☆

ドラマ部分には星☆


映画よりも、クイーンのライブDVDを観る方をお勧めしたいと思います。