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2019年2月5日火曜日

映画 「デスペラード」

1995年 アメリカ。







メキシコ国境の町、サンタセシリア。


酒場にぶらりと、一人の男が入ってきた。



バーテンや馴染みの客たちは、よそ者の男をジロリと睨みつけ、明らかに歓迎ムードではない。


そんな空気には、お構い無しに、その男『ブシェミ』(スティーヴ・ブシェミ)は、カウンターに座りこむとビールを注文した。(役名も本名も一緒とは)




ヘラヘラした様子のブシェミは、バーテンや客たちに愛想をふりまくと、聞かれもしないのに、となり町の酒場であった事件を話しだした。(聞いていようが関係ない。話したくてウズウズしている様子だ)




ブシェミがとなり町の酒場で、他の客たちと飲んでいると、一人のマリアッチ(アントニオ・バンデラス)が、ギターケースを抱えて、フラリと入ってきたのだ。



異様な闇に包まれた様子のその男は、バーテンのそばに来ると、


「ブチョという男を探している……」

とだけ囁いた。




客たちは、その名前を聞くと途端に殺気立つ。


皆がピストルを取り出すと、銃口をマリアッチに向けて定めた。




だが、マリアッチの方が反応が早かった。


一瞬で、ギターケースの中にしまいこんでいた銃を取り出すと、直ぐさま乱射し始めたのだった……





「そ、それで……どうなったんだ?!」


いつの間にか、ブシェミの話に引き込まれていたバーテンが続きを促すと、


「そりゃ、辺りは一瞬で血の海よ」

と、ブシェミは得意気に、自分の手柄話のように続ける。



「マリアッチは、息絶え絶えの男から、ブチョの事を聞き出すと、奴にとどめの一発をお見舞いしたんだ」


「バーテンは?バーテンは助かるんだろう?、なぁ、バーテンは生き残るんだよな?!」


「それが、バーテンが一番ひどかった。出ていくマリアッチにカウンター下からライフルを出そうとした時、顔面に向けてズドンッ!よ!」



ブシェミの話しを聞き終えた客たちは、静まりかえっている。



「俺の話は終わりだ。じゃあな! せいぜい気をつけてくれよ!」

ブシェミは、話すだけ話すと、スキップでもするように、(ラン!ラン!)酒場から揚々と出ていった。




「なんなんだ~?…あの野郎はよぉ……」

バーテンは一言もらすと、他の客たちと、またシーンと静まりかえるのだった………






20数年ぶりに観た『デスペラード』の内容を、ほとんど忘れていたのだが、観ているうちに、どんどん引き込まれて思い出してきた。



冒頭から、いきなりスティーヴ・ブシェミが登場!(この顔、すばらしい独創的な顔、これでほとんど、つかみはO.K.!)




そしてオープニング。


アントニオ・バンデラスが、ギターを奏でながら、魂をこめて歌い上げる『我が心のモレーナ』♪



ギターの音色は、最初、ゆるやかに♪………

寂しく、悲しく、心に響いていき♪、

やがて、どんどん激しさを増してくる。





あ~思い出した、こんな感じ。




話のスジは至って簡単。




愛する女性を殺されたエル・マリアッチ(ギター弾きの男)が、ブチョと手下たちに復讐するお話である。



なのだが……これでもか!、これでもか!、というくらいに、サービス精神旺盛なくらい見せ場が盛り沢山。





ブシェミが帰った後、その酒場に、ブラリとやって来たマリアッチ(アントニオ・バンデラス)。


当然、バーテンから客たちは先程の話を聞いているので、ギターケースを担いだマリアッチを警戒している。



「おい!ギターケースを置いて手を上げろ!!

と、360度客たちに包囲されたマリアッチは、まさに絶体絶命。




ギターケースを開けると中には、只のギターが入っていた。


だが、運悪く、そのギターが、ギギギィィーーッ!と音をたてて、さらに開いていくと……



これは《ダミーのギター》じゃないか! 


中には、大量の武器が入っているのだ!!




殺せーーっ!

ブチョの手下の客たちが、一斉に引き金をかまえる。




だが、両手を上げていたマリアッチの黒い背広の手首から、ピストルがヒョイと持ち上がり、つかんだと思ったら、2丁拳銃で、ズドン!ズドン!!


あっという間に、客たちは仕留められ、その場に倒れこむのだった。




カ、カッコイイ~!!




監督はロバート・ロドリゲス。


最初は、低予算のたった7000ドルで撮った「エル・マリアッチ」が評価された。




そして、ハリウッドに呼ばれて製作費も700万ドルに羽上がった、この「デスペラード」。


だが、それでも他の映画に比べれば、まだまだ全然安いような製作費…(普通は何千万ドル)。


だが、ロドリゲスの「工夫次第で面白い映画は、絶対に撮れるのだ!」という情熱は様々な人を揺り動かしたのだった。


製作費のほとんどを、弾薬や武器に使ったロドリゲスの手許には、全くといっていいほどお金が残っていない。(もう、スッカラカン)




俳優たちは、ほぼノーギャラだったのだ。




それでも、


アントニオ・バンデラスしかり、


美女のサルマ・ハエックしかり、


変顔のスティーヴ・ブシェミしかり(顔の事ばかりでスミマセン)、


クェンティン・タランティーノが端役として出演したりと、色々な仲間たちが集まってくれた。

ロドリゲスの映画にかける情熱は、伝染病のように俳優たちに伝わったのだ。



「たとえ、ギャラがなくても、面白い映画が撮りたい!!」


たった、その気持ちだけで……



映画は大ヒットする!!




だからこそ、こんな映画がつまらないわけがない。




普段は長い髪を束ねたバンデラスが、いざ闘いになると髪を振り乱し、悪党たちを一撃で倒していく。



ラテン男の情熱的な生きざまを、とくとご覧あれ。



面白いよ。

星☆☆☆☆☆。