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2021年9月25日土曜日

人物 「『ノーントン・ウェイン』&『ベイジル・ラドフォード』」





ノーントン・ウェイン(左側)(1901年〜1970年 (69歳没) )

ベイジル・ラドフォード(右側)(1897年〜1952年 (55歳没) )



多分、この二人をピック・アップして書いたものなど、あまりないかもしれない。(書こうとさえ誰も思わないかも)



現代では、知る人も少ないかもしれない。



なんせ活躍していた時期が、30年代末〜50年代くらい。

自分なんて、まだまだ産まれてもいないような、遠い昔に存在していた二人なのである。



それでも、この二人は、長い映画史の中でも、稀に特異な位置づけにある存在だと思う。



お笑いコンビでもないのに、お互いに俳優同士の二人は、元々仲が良かったのか?ウマがあったのか?



世間や周りは、二人を勝手に《コンビ》として認知してしまい、名だたる有名監督の作品や様々なジャンルの映画を二人して渡り歩いていくという………



そう、映画史でも珍しい《コンビ俳優》の二人なのである。



もちろん、この二人を初めて観たのは、アルフレッド・ヒッチコック監督の『バルカン超特急』から。(ベイジル・ラドフォードの方は、それ以前の、ヒッチコックの『第3逃亡者』にも出演していたらしいが、とんと覚えてない。機会があれば観直してみたいと思う)



雪の為に、出発できない列車。


たった一つあるホテルに駆け込むものの、空いているのは、狭いタコ部屋みたいなメイド部屋。


ブツブツ文句を言うものの、二人仲良く狭いベッドに落ちついていると、言葉の分からないメイドがやって来て、笑いながら平気で生着替えを始めるもんだから、二人はビックリして度肝を抜かれる。(このシーンの面白いことよ)



今度は英国でのクリケットの試合の行方が気になる二人は、ホテルの受付にたまたま掛かってきた電話に勝手に出る。


「そっちはイギリスだよな? どうなった試合は?! ナニ? 全然興味がない?!お前はそれでも英国人か?!」


知らない相手は、なぜ怒鳴られているのか意味が分からず、要件を伝える暇さえない。


勝手に出た電話に、勝手に怒って切っちゃう(ガチャン!)勝手なベイジルさん。


「全くどうなってるんだ……」と、またもやブツクサが止まらない二人は、そのままフロントをシレ〜として離れていく。



それからも列車で事件が起きようが、二人はクリケットの試合の事で盛り上がっていて、あくまでもマイペース。(最後は協力して、一応大活躍するのだが)



そんなこんなで、映画のラスト、なんとか無事に英国に辿り着いてみると、



《試合は大雨の為、中止になりました》の無情な張り紙が。


あれほど楽しみにしていた二人は、呆気にとられて、トホホ…の顔。



こんな調子で『バルカン超特急』は幕切れとなる。



サスペンス映画なのに、こんなフザけたシーンが盛り沢山入っているんですもん。


主役のマイケル・レッドグレーヴとマーガレット・ロックウッド以外の、こんな脇役の二人にまで、陰ながらスポットが当てられて、オチまでついている。


これが『バルカン超特急』が名作といわれる所以なのである。


こんな『バルカン超特急』を若い時に楽しんで、今でもたま〜に、忘れた頃に観返す時があるが、やっぱり面白い。(オモチャ箱をひっくり返したような楽しさがあるのだ)




そして、数年前に《姉妹編》としてうたわれている『ミュンヘンへの夜行列車』の存在を知って、ごく最近観れたわけだけど、二人の様子は相変わらずだ。(映画の出来は、監督がキャロル・リードなので「ん〜ん……」満点まではやれないのだけど、そこそこ面白い)



第二次世界大戦が勃発しても、二人の心配は別にある。


「ベルリンの友人に貸してあるゴルフクラブ、返ってくるだろうか?あのクラブは凄い飛距離がでるのに……」

ベイジルはそればかりが気がかり。


「郵送してもらうように電話してみればいいじゃないか?」ノーントンは何でもないように言ってのける。


で、公衆電話を探すも、ナチスが割り込んできて、「この電話は使えないぞ!あっちへいけ!シッシッ!!」と邪険に追い払われる二人。


駅の構内にいても、「邪魔!邪魔!」と言われ、やっと座った指定席さえも、「ここは我々が使う!とっとと出ていけ!」とナチス兵に追い出されて、一般席に追いやられる二人なのである。(もう、いつでも踏んだり蹴ったりの二人)


久しぶりに観たノーントン・ウェインとベイジル・ラドフォードのコンビに、なんだか懐かしさを感じて、この『ミュンヘンへの夜行列車』も、それなりに楽しんだ私なのだった。



こんなコンビの面白さに久方ぶりに触れてみると、またもや、とことん調べたくなるのが、私の性格。



そうしたら、出てくる!出てくる!


まだまだ、あるじゃないですか!


二人がコンビで映画に出ている作品が!!(そう、こんなモノじゃなかったのだ!当時の二人の人気は、本国イギリスでも地味〜に浸透していたのであった)



1941年には、ノーントン・ウェイン&ベイジル・ラドフォードの二人が主演で、『Crook's Tour』(クルックのツアー)なんて映画が作られてしまう。(日本未公開、未DVD化、未Blu-ray化)


今度は、このコンビは中東にひょっこり現れて、ドタバタスパイ合戦に巻き込まれるというものらしい。


サウジアラビア、バグダッド、イスタンブールなどなどを旅しながら、『バルカン超特急』並のスパイ戦を繰り広げるというのだから俄然期待が膨らんでしまう。(なぜ?これをDVD化しない?是非、是非お願いしたい!)




1945年の『夢の中の恐怖』は、オカルト・ホラーで5本のオムニバス映画。(これはDVD化されております)


『バルカン超特急』のマイケル・レッドグレーヴも出演していて、もちろん、このコンビもオムニバスの1本に出ているとか。(でも《オカルト映画》に、この二人が出ていてどんな出来なのか想像つかない。いつか観てみたいが)



1946年の『A girl in a million』(百万の少女)。(日本未公開、未DVD化、未Blu-ray化)


英国コメディらしい。(二人はまたもやクリケットに夢中な英国人役)



1948年の『四重奏』はサマーセット・モーム原作の、これまた4本で成り立っているオムニバス映画。(DVD化されております)


これもコンビで出演している。(文芸作品かな?)



まだ全てを把握出来てないが、出てくる!出てくる!二人のコンビで出演している映画。(ミュージカル映画もあるとか。歌うの?この二人が?!)



でも、この二人が、当時、なんでこんなに起用されたのかだけど……なんとなく分かるような気がする。



戦争中でも、ドラマティックな事件が起きても、その中でも《普通の人々》は普通に存在しているのだ。



ゴルフが好きで、クリケットに夢中なり、旅行好き……

ごくごく普通な一般人の二人。



この二人が、画面にひょっこり顔を出すだけで、観ている人々は、妙な《安心感》や、緊迫した場面でも《息抜き》が出来たのかもしれない。(私がそうだ)



それにしても、二人の生年月日を調べてみると、改めて妙に老けていることに驚く。



『バルカン超特急』の頃、ノーントンなんて、まだ38歳、ベイジルの方も42歳くらいなのだ。(ゲゲッ!今の自分よりもオッサンに見える!)



2つの世界大戦の苦労や経験が、二人を実年齢よりも急激に老けさせたのか………



こんな安穏とした自分には想像すらつかないような、とても過酷な時代だったのだろうが、そんな中でも、人々を楽しませる為に《普通っぽさ》を演じた二人は、今の時代、もっと再評価されてもいいんじゃないのかな?



とりあえず、二人が残した作品を、今、楽しめるのは至福の幸せである。



長々、お粗末でございました。(さてと、手元にある『バルカン超特急』と『ミュンヘンへの夜行列車』を再視聴しましょうかね)