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2020年11月5日木曜日

映画 「ボーン・イエスタディ (1950)」

1950年 アメリカ。





第23回アカデミー賞(1950年度の作品が対象)は、沸きに沸いた。


以前、ここにも書いたが、この年は今、現在でも名作として語り継がれている、この2作品が誕生したからだ。


舞台女優たちの裏側を描いた、ジョセフ・L・マンキーウィッツ監督の『イヴの総て』。

《『イヴの総て』…左からアン・バクスター、売れる前の端役マリリン・モンロー、ベティ・デイヴィス》




老いた映画女優の狂気を描いた、ビリー・ワイルダー監督の『サンセット大通り』。

《『サンセット大通り』…中央、グロリア・スワンソン》



この2作品は、70年経った今でも、ビデオからDVD、Blu-rayと、時代に合わせてメディアを変えながらも、観た人々の心をとらえ魅了し、新たなフアンを獲得している。


かくいう自分も、もちろん、この映画が公開された時代には、まだこの世にいるはずもなく………ず~と後になって、たまたま拝見してフアンになった内の一人でございます。(※それぞれ両作品、このblogに既に書いておりますのでお暇な方はど~ぞ)



アカデミー賞作品賞と監督賞には、『イヴの総て』、ジョセフ・L・マンキーウィッツが受賞した。(『サンセット大通り』には残念だが、まぁ納得かも)



さぁ、そして主演女優賞の発表である!



主演女優賞にノミネートされてるのは、いずれも強豪ぞろい。


『イヴの総て』からは、小憎らしいイヴを演じたアン・バクスター。


大女優でありながら新人イヴに翻弄されるマーゴを演じたベティ・デイヴィス。


『サンセット大通り』からは、かつてサイレント映画のスターだったが、次第に狂っていくノーマを演じたグロリア・スワンソン。


『女囚の掟』からはエリノア・パーカー。(『サウンド・オブ・ミュージック』に出ていた綺麗な女優さん。ここでは女囚役の為に、当時では衝撃的な丸坊主姿になっているという。これもヤサグレ女囚モノの元祖的な映画で、いずれは観たい映画である。)



「さぁ、今年度のアカデミー主演女優賞は………」


   さぁ、誰がとるか、誰がとるか………


「ボーン・イエスタデイのュディ・ホリデイさんです!!」



………………………………… 誰?それ?



全く知らない映画と女優、知らぬが恥だと思い、今回初めて、この映画を観てみる。(多少の情報も頭に入れて)



クズ鉄業で成功した『ハリー・ブロック』(ブロデリック・クロフォード)は、元女優で愛人の『ビリー』(ジュディ・ホリデイ)をともなってワシントンにやって来た。


ワシントンでも最高級のホテルに滞在しながら、事業を拡大する為、議員をまるめこみ、(違法でもしったことか!!)のハリーは、部下を顎でこき使い、必要な書類には頭の弱いビリーを騙して強引にサインをさせる。


「ねぇ、これ何の書類?……」なんてビリーが聞くものなら、


「うるさい!だまってサインすればいいんだ!!」の一点張り。


ビリーの馬鹿さを利用して、それまでは上手くいっていたハリー。



だが、議員と会談した時、あまりのビリーの教養のなさに今度は逆に呆れる始末。



(なんとかせねば……)


そこで多少の教養を、と取材に来た『ポール・ラベル』(ウイリアム・ホールデン)に彼女の教育を依頼するのだが……それは思わぬ副産物をよんでしまう。


ビリーは教養を身に付けていくにしたがって自我に目覚めはじめ、ハリーの不正に気づきはじめるのだ。


そして、ポールはポールで、そんな変わっていくビリーにどんどん惹かれていき……。





こんな感じの『ボーン・イエスタディ』なんだけど……ごめんなさい、ハッキリ言ってあんまり面白くなかった。



元々は舞台でヒットしたコメディーらしいのだが、どこで笑えばいいのやら、クスリとも笑えなかった。


とにかく、一番の原因が、この映画のハリー役のブロデリック・クロフォードで、イヤな野郎すぎて、終始ムカついてしまった。


この人、フェリーニの『崖』でも詐欺師の悪役だが、この映画ではそれを越えるぐらい虫酸が走る役。

とにかく最初から最後まで、誰彼に、わめき散らして、怒鳴りっぱなし。(ゆえに出番があれば、あるほど、どんどん嫌いになっていく)


「自分が正しい!」を叫びながら、ワンワン吠えて、誰彼に高圧的に噛みついて、まるで、どっかの大統領みたい。(あ~、うるさい!)


で、これに笑えるか?

全然笑えないし、私は好きじゃない。




かたや、主演女優賞を受賞したジュディ・ホリデイの演技。



耳をつんざくようなキンキン声で、英語なのに、まぁ耳障りなこと。


馬鹿丸だしの教養のないビリーを演じる為に、わざとそんな風に喋ってるんだろうと思い、(次第に教養が身につけば、この喋り方も変わるんだろう……)と我慢していたが、全くそんな事にならなかった。(最後までキンキン声)



怒鳴り声とキンキン声の応酬に、ウイリアム・ホールデンや他の出演者たちは、普通の演技をしながらも、「シラ~」としているように見えてしまった。



日本では、この映画、結局公開されなかったらしいが、何となく納得!


これを「面白い!」と思える感性は、我々日本人にはないと思うからだ。(公開してもヒットしただろうか?)



それにしても、これが、ベティ・デイヴィスやグロリア・スワンソンを抑えてのアカデミー主演女優賞ねぇ~


ん~同意できない。(オマケにゴールデングローブ賞の主演女優賞もとっている。ゲゲッ!( ゚ロ゚)!!)


でも、アメリカでは、この映画が評価が高くて、アメリカ喜劇映画ベスト100の24位で上位につけている。



本当にアメリカ人、これを観て大笑いするの? 拍手喝采なの?

わけわからん。


ウイリアム・ホールデンの珍しい眼鏡姿は似合っていたが、相手役がこれじゃ、ちと可哀想に思えてしまった。(ジュディ・ホリデイも黙っていれば美人なのに、喋りだせば林家パー子 )



今回は星での評価は保留。


海の向こう……これが越えられない感性の違いなら、久々にそれを見たような気がした映画でありました。