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2020年7月8日水曜日

映画 「P K (ピーケイ)」

2014年 インド。







『P K』は、名作『きっと、うまくいく』と同じ監督、ラージクマール・ヒラーニの作品で、主演も同じアーミル・カーン






ある日、巨大宇宙船から降り立った一人の青年(アーミル・カーン)。


姿かたちは人間にソックリでも、彼は《 宇宙人 》である。


衣服もまとわない全裸姿には、奇妙に光るペンダント(宇宙船のリモコン)だけを首から提げている。



言葉さえ分からない初めての星で、右往左往している宇宙人。(宇宙人も降り立つ前に、少しでも地球人についてリサーチするくらいしてもよさそうなのにね)


そして、宇宙人は泥棒にペンダントを盗まれてしまった。(どないしよう~)

広いインドの荒野で、なすすべもなく立ち往生する宇宙人……。





同じ頃、ベルギーでは、『ジャグー』(アヌシュカ・シャルマ)という女性が、『サルファラーズ』(スシャント・シン・ラージプート)という男性に、偶然出会い、恋におちていた。


でも、彼はパキスタン人。


(熱心なヒンドゥー教の信者である父親は、この交際に猛反対するだろう……)


ジャグーは、それでも優しいサルファーズにどんどん惹かれていく。



だが、案の定、ジャグーの父親は大反対。

「何を考えてるんだ?!相手はインド人じゃない!パキスタン人なんだぞ!!」

「それが何よ!彼を愛しているのよ!!」



こりゃ、たまらん!

ジャグーの父は、慌てて、ヒンドゥー教の導師タパスヴィー様に相談しに行った。


「大丈夫だ、その青年、サルファラーズはジャグーを、きっと裏切るはずだ」と預言する。



父親がタパスヴィーの預言の話をしても、ジャグーは信じない。

だが、強引に進めた結婚式の当日、彼は現れず………別れの手紙だけをジャグーに残して消え去った。


(預言が当たった………もうおしまいだわ)

傷心でボロボロのジャグーは、インドへ帰国していった。





そして、数ヵ月後、ジャグーは、インドのテレビ局で働いていた。


失恋の傷は、まだまだ癒えぬが、それでも「前を向いて進んでいこう!」と張りきるジャグー。


そんなジャグーは、街中で変なチラシを配り歩いている男に遭遇する。


『P K』(酔っぱらい)と呼ばれている、その青年は「神様が行方不明」と書かれたチラシを懸命に配っていた。


(何これ? それにこの人、何者?……)


ジャグーは『P K』(アーミル・カーン)に俄然、興味を持って近づくと、彼はトンデモない話をしはじめた。


「僕は宇宙人………」




何も知らない無垢な宇宙人が、初めて降り立った地球で、次々遭遇する出来事をとおしながら、差別、偏見などを浮き彫りにする。


笑いのスパイスをきかせながらも、決して説教くさくならないようにする手腕は、さすが、ラージクマール・ヒラーニ監督である。これも中々の佳品。



主演のアーミル・カーンも、トボケていて、エキセントリックな『P K』を演じている。(何と!観ていると、全く瞬きをしない)


ジャグーを演じているアヌシュカ・シャルマも、ショート・カットが似合っていて可愛らしく、溌剌した雰囲気で好感度抜群。



そして、ジャグーの恋人役サルファーズをつとめた、『スシャント・シン・ラージプート』なのだが……多分、日本でも公開されると思うが、主演作が作られている。



『きっと、またあえる』(2019)。



名作『きっと、うまくいく』とも似た邦題名で、同じように大学生活を描いた青春モノ。


何だか、内容を聞いただけで、ワクワクして、ものすごく期待してしまう。(そのくらい『きっと、うまくいく』がチョー面白かったので)




だが、そんなワクワク気分に水を刺すような、トンデモないニュースが飛び込んできた。



主演のスシャント・シン・ラージプートの自殺 ………




「えっ?何で?これからなのに……」



この『P K』で共演したジャグー役のアヌシュカ・シャルマは悲しみのコメントを残している。



「スシャント、逝ってしまうにはまだ若すぎる。すばらしい才能もあった。私たちがいる業界では、あなたがトラブルに陥っていたかもしれないのに助けられなかった。悲しくて動揺している。どうか安らかに眠ってください」




『きっと、うまくいく』でも、ふれていた若者たちの自殺問題。


インドばかりじゃなく、韓国や、それに日本でも社会問題になっている。



ネットが蔓延している現代では、昔は直接、目や耳に入ってこなかった誹謗中傷も、針でつき刺すように本人たちに届いて、その心を蝕んでいく。



大勢に晒されて、その攻撃の対象になりやすい芸能人たちは、もはや並の神経では務まらない。


沢山の華やかな光を浴びれば、無数の影が伸びる。


それに孤軍奮闘して、ひとり闘うには、どれだけ鋼のメンタルが必要なのか、凡人の自分には想像し得ない。



『P K』でも主題に掲げているように、差別、偏見、暴力が少しでも少なくなりますように。
映画は星☆☆☆☆。



スシャントが遺した足跡『きっと、またあえる』を待ちわびたいと思う。

合掌。