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2019年8月12日月曜日

映画 「アラベスク」

1966年 アメリカ。






オックスフォード大学の言語学教授ラギーフは、歯の治療に来ていた。

ライトが照らされて、口を、あんぐり開ける教授。


そこへ、歯科医の迫りくる回転ドリル。

「ウィィィーン」のドリルの回転と共に、治療室では、教授の絶叫が響き渡った。



ラギーフ教授は殺されたのだった。





そして、場所は変わって、オックスフォード大学のキャンパス内を、軽快な足取りでランニングしている『デヴィド・ポロック教授』(グレゴリー・ペック)。

その後ろからは、ポロックを尾行するように、静かに、息をひそめるように車が近づいていた。



そして、車から手が伸びると、ポロックは掴まれて引きずり込まれた。


「な、何なんだ?君たちは?!、いきなりこんな事をして、どういうつもりなんだ?」


「失礼をお許し下さい、ポロック教授。私には誰にも知られたくない理由があるのです。私の立場上、こうするよりなかったのです。」

ひげ面で白いターバンの男は、中東某国の首相でイェナと名乗った。


そんな大物が、一介の教授に何の用?



「ポロック教授、実はお願いがあるのです。あなたは今から、ある男に古代象形文字の解読を依頼されるでしょう。その依頼を是非とも受けて、私に逐一報告してほしいのです。」


イェナ首相の話は、突拍子もなくチンプン、カンプンで、ポロックは混乱した。

「『男』とは、いったい誰なんです?そして、何故この私なのですか?」




その男とは、大富豪『ベシュラービ』。

石油で儲けた成金だが、他にも、とかく黒い噂があり、その持ちかけられる象形文字の解読にも、何か政治的な裏があるらしいのだ。




でも、凡人には、それらの解読はムリ。


そこで白羽の矢が立つと思われているのが、大学で言語学を専門としている教授、ポロックなのである。



「前任者のラギーフは、不審な死に方をしました。ベシュラービが依頼するとすれば、次は必ずあなたのはずです。」

イェナ首相は、念を押して懸命にお願いすると、ポロックを降ろして、車は行ってしまった。




取り残されたポロックは、まるでキツネに摘ままれたような顔。

(今のは本当の話だろうか………まるでスパイ映画のようじゃないか)





次の日、ランニングをしているポロックは、またもや車に引きずり込まれた。


でも、今度はイェナ首相ではない。



今度の相手は、

「初めまして、ポロック教授。私はベシュラービ。君には私の為に働いてもらいたのだがね」


(昨日聞かされていた『ベシュラービ』!! ゲゲッ!本当に依頼してきた!!)




黒いサングラスをしたベシュラービは、見るからに怪しい様子。

高圧的な物言いは、まるで断られる事などは一切ない、と言いたげだ。




半端、強引にポロックは、ベシュラービの大邸宅に連れて来られた。



邸宅には、ベシュラービの屈強な部下たちもいたが、それとは不釣り合いな美人の『ヤスミン』(ソフィア・ローレン)の姿が……。



その美しさに、ポロックは、しばし心を奪われてボーッ、となっていると、ベシュラービは非情に、

「さあ、教授。仕事にかかってもらおうか!」

と言い放った。





個室を与えられて、渡された象形文字に目をとおすポロック。


(何だか、アラビア文字のようにも見えるのだが、……何なんだ!?この文字は!!)


言語学教授としての情熱に火がついたポロックは、いつしか時間も忘れて、熱心に、それに格闘しはじめた。





どれくらい、時間が過ぎたのだろう………

やがて、ノックの音と共に、ドア下の隙間から手紙が差し出された。


手紙には、

「逃げてちょうだい、ポロック教授。もしも、あなたが、それを解読したら、あなたはベシュラービに殺されてしまいます。」と書かれていた。

この手紙は、さっきの女、ヤスミンなのか?




暗号文をキャンディの包み紙にくるんで、ポケットにしのばせると、ポロックは部屋を出た。




目指すは、ヤスミンの部屋である。



こっそり侵入したポロックの耳に聞こえるのは、どこかで流れる水の音。



ヤスミンはシャワー室で入浴中だった。

「さっきの手紙は君なのか?」シャワー・カーテン越しにポロックが問いかけると、中のヤスミンは驚いた様子だった。


「なぜ、まだ、ここにいるのよ?早く逃げてちょうだい!」

そこへドアをノックする音がして、ベシュラービの声が聞こえた。

慌ててヤスミンは、シャワー室の中にポロックを引き入れてカーテンをする。



(もう……お願いだから、向こうをむいててよ……)


ヤスミンの無言の命令に、大人しく背を向けるポロック。



ベシュラービがカーテン越しに話すのを、なんとか、やり過ごして出ていくと、二人は、ホッ!と一息ついたようだった。



着替えたヤスミンとポロックは、邸宅を、そっと忍び足で脱出した………。




だが、それは、すぐにベシュラービに感づかれてしまう。



「すぐに二人を追え!必ず捕まえて来い!!」

ベシュラービの怒号に部下が走り出した。




邸宅を出ると、街は夜の様相。

はてさて、二人の運命は………。







『おしゃれスパイ危機連発』、『シャレード』を書いたときに、この映画『アラベスク』を、ふと思い出した。(そういえば、あった!あった!こんな映画が)




これも、ジャンルとしては、60年代のロマンチック・スパイ・コメディ。


なのだが、この映画………いまだにBlu-rayにもDVDにも、なっていないのである。(こんなのが、DVDに以降してから、まだまだ本当に多い。もう平成も終わって令和ですぞ!、なんとかしてくれたまえ、メーカー様!)


遠い昔、もう30年くらい昔、VHSを観た記憶しかない。


錆びた記憶を、フル回転して甦らせて、書いた出だしはどうだっただろうか?(もしかしたら、微妙に違うかもしれないが、多分、大体あっていると思うのだが………)




映画は、『シャレード』と同じ監督スタンリー・ドーネン


この『アラベスク』は、『シャレード』と対というか、双子のような関係の作品だと思ってくれればいい。


音楽も同じ、ヘンリー・マンシーニ作曲なので、『シャレード』と同じテンポで、サクサクと話は進んでいくし。




そして、主演は、ソフィア・ローレングレゴリー・ペック




ソフィア・ローレンは、オードリーよりも、肉感的で健康的だ。




ただ、ソフィア・ローレンの身に付けているファッションがねぇ~…………。



当時、この映画を観たときも思ったものだが、

「あんまり似合ってないなぁ~、オードリーよりも、ちょっとダサいなぁ~」って感じがしてた。



あんまりにもケバすぎて、このソフィア・ローレンのファッションは、あんまり好きじゃない。


一方で、ソフィア・ローレンの小悪魔的な演技は良い分、つくづく残念な部分である。





そんな、ソフィアに振り回される相手役にグレゴリー・ペック(本当にアメリカの善人代表みたいな人)。


『シャレード』に続いて、この役も、まずは、ケーリー・グラントにオファーがあったが、その前にアッサリ引退してしまった。


そして、ケーリー・グラントが断った役は、大体が、昔から、このグレゴリー・ペックに流れていくのである。(本人も、生前インタビューに答えて、笑いながらも気にしている様子だった)



ただ、残念だが、グレゴリー・ペックには、ケーリー・グラントほどのユーモアが欠けてるんだけどね。(なんせ根が真面目ですもん)





ロマンチック・コメディとしては、『シャレード』に一歩劣るものの、何となく気になり、忘れた頃にもう1度観て、『シャレード』の姉妹編として比べてみたくなる。



これは、これで不思議な魅力の映画かも。


星☆☆☆であ~る。

(※Blu-rayかDVD、いい加減出してくれないかなぁ~)