ホーム

2019年1月16日水曜日

映画 「恐怖の報酬」

1953年 フランス。






ベネズエラのラス・ピエドラス。

あちこちの国から流れてきた不法移民たちが、集まる場所。



今日も道路に、酒場にと、昼間から何をするわけでもない連中たちで、ごった返している。


仕事もなくピザすらもたない移民たちは、こんな風に毎日をブラブラさ迷う。

金も無いので、こんな国を出ていく事さえ叶わないのだ。



その中に若い青年『マリオ』(イヴ・モンタン)の姿もあった。



今日も酒場にやってきては外のベンチにもたれ掛かっている。(他に行くところがないので)



酒場に雇われて床を雑巾がけしている『リンダ』(ヴェラ・クルーゾー)は、そんなマリオを見つけては嬉しそうにチラチラと目線をおくっている。


酒場の主人はそんなリンダとマリオを見つけては面白くなさそうだ。(「ちゃんと仕事しろ!」の怒鳴り声)




そんな時、町のそばに小型飛行機が着陸した。



そこから降りてくる一人の男。

白いスーツをパリッと着こなした、中年の紳士然とした男は、そのままタクシーに乗り込むと町までやってきた。




酒場でブラブラしていた連中は、場違いな格好をしている男の登場に「誰だ?!誰だ?!」の野次馬見物。(暇なので)



もちろんマリオも。


その男『ジョー』(シャルル・ヴァネル)も、浮浪者たちの中からマリオを見つけると、自分から話しかけてきた。



二人は同郷が一緒だと分かるとたちまち意気投合。


調子の良いジョーは、マリオにタクシー代を払う金が無いことを率直に打ち明けた。(無賃乗車じゃねぇ~か! 金も無いのに、よくタクシーに乗れるものだ)



マリオはマリオで自分も金がないのに

「俺に任せてくれ!」と安請け合いする。




で、どうするのかと思えば…………


酒場の主人をうまく騙して、まんまとタクシー代を払わせてしまうのであった……。





冒頭のあらすじは、ここまで。



というのも、この映画150分近くあるのだが、最初の1時間くらいが、マリオとジョー、町の人々の、ノンビリした日常風景が流れるだけだからである。



昔、この映画が批評家たちに絶賛され、名作と言われて、「よし!観てみよう!」と奮起して見始めたはいいが、冒頭のような、ど~でもいいエピソードで、途中「失敗した!」と思い、何度挫折しかけたことか……
(マリオとジョーが仲良くなって、マリオの同居人が変な嫉妬をしたりと、長々とこんなエピソード続く)



今の映画の、スピーディーな展開に慣れ親しんだ現代人には、最初の一時間は、とても苦痛だろうと思うのだ。(自分もそうでした)



でも、そこを乗り越えれば、映画はガラリ!と様相を変えて、途端に面白くなるので、どうぞご辛抱を。






500キロ先の油田で大火災が起こった🔥🔥。


そして、それを鎮火させるために、大量のニトログリセリンを使って、逆に「全て燃やし尽くしてしまおう!」という無謀な計画が持ち上がる。(眼には眼を、火には火を?って感じか?)




だがニトロはあるものの、専用のトラックはない。


普通のトラック2台で運ぶしかないのだ。




そして、そんな命懸けの運転をする者もいるはずもない。



ならばと、責任者のオブライエンは、

「町の仕事にあぶれている労働者たちに、報酬2000ドル💰で募集をかけよう!」

と提案した。



やがて、2000ドルの大金に釣られて、来るわ、来るわ、の男たち。


だが、少しの熱や衝撃で

「ドッカーン!!💥」

と爆発するニトロの破壊力に怖じけづいて、殆どが帰って行く。(無理!無理!)



最終的には、マリオ、ルイジ、ビンバ、スメルロフの4名の男たちが選ばれた。(中年のジョーも名乗りをあげるのだが補欠)




そして約束の集合時間、スメルロフだけ来なかった。


代わりにひょっこり現れたのは、あのジョー。(自分が仕事にありつくために、ボッコボコに痛めつけたと思われる)




マリオとジョー、ルイジとビンバが、それぞれペアを組んで、ニトロを乗せたトラックは、それぞれ、ゆっくりと慎重に走り出してゆく………




ここからが映画は怒涛のように俄然面白い。



最初にほんの数滴垂らしたニトロの爆発的な破壊力を見せているので、舗装されていないガタガタ道をトラックが進むだけでも怖いこと、怖いこと。



4名が進む道には、「これでもか!」というくらい次から次へと災難が降りかかる。



細い崖の道を進んだり、崖に突き出た腐った木材の足場で落ちそうになりながらも、ギリギリUターンしたりして ……


道路の真ん中に巨大な岩石が落ちていて道を塞いでいたり。(他に安全な道はないのか…)



最初、あれだけ伊達男を気取って、マリオに兄貴風をふかせていたジョーは、メッキがとれて、あまりの恐怖にガタガタと震えだしてしまう。


運転をマリオに変わってもらい、しまいには、その隙をみて逃げ出す始末だ。



マリオはマリオで何かに取りつかれたかのようになりジョーを追いかけていって、連れ戻すとボッコボコ。

鬼の形相をして痛めつけたりする。




しまいにはジョーは、「オ~イ、オ~イ!!」泣き出してしまうのだ。(あんだけ強気のオッサンだったのに)




マリオとジョーの力関係が逆転するのである。(あ~、それで、前半に長々とあんなシーンに時間を割いたのか……と、ここで納得)




こんな、次から次に襲いかかってくる困難やドタバタ続きの旅。



そしてニトロは無事に目的地に届いたのか、誰が最後に笑うのか、………それは、ここでは語らないでおこうと思う。



映画は傑作です!



但し、最初の1時間だけを我慢して最後まで観終えてこその感想です。




普段隠してある本性もギリギリ追いつめられれば、それもあらわになる。


ニトロの恐怖を描いていても、こんな裏テーマで怖がらせてしまう特別な映画。


フランスの奇才アンリ=ジョルジュ・クルーゾーの傑作を1度はどうぞ御賞味あれ。


星☆☆☆☆☆。

※それにしても『マリオ』やら『ルイジ』やらの名前を見かけると『スーパーマリオ』を思い出してしまうのは自分だけか?(笑)