1935年 アメリカ。
エドワード・G・ロビンソン(1893〜1973年没)という俳優は、(随分、損してるなぁ~)と、勝手にそう思っている。
エドワード・G・ロビンソンが出演する映画を観たのは、今回で2度目。
ビリー・ワイルダー監督の『深夜の告白(1944)』にもロビンソンは助演として出演してました。
手足が短く、バランスの悪い体つき。
四角い顔が乗っかっているロビンソンは、お世辞にもカッコイイとは思えない。
こうして、お顔の方にクローズ・アップしてみれば尚更である。
広い額。
切れ長で細い、奥二重の《ジト〜とした目》。
短い鼻。
横に伸びたデカい口は、《薄い唇》で上下を覆われている。
こんな独特な顔も、慣れてくればユーモラスに見えてくるんだろうが、初対面で受ける第一印象は(ド〜ンヨリ)なんだか 暗〜い 感じだ。
こういうタイプが「俳優になろう!」としても、順風満帆じゃないのは、おおかた予想がつく。(「苦労するだろうな~」 …と思っていたら、やはり案の定でした)
若い頃は舞台やチョイ役の繰り返し。
やっと芽が出たのは、中年期に差し掛かってきてから。
『犯罪王リコ(1931)』のギャング役が当たり役となる。(ギャング役と知って妙に納得)
とにかく、これを足がかりにチャンスをつかんだロビンソンにも、ようやっと、主役の座がまわってくる。
それが、あのジョン・フォードが監督する『俺は善人だ(1935)』なのである。
しかも、西部劇や感動ドラマを得意とするジョン・フォードには珍しく、この映画は異色のコメディー・ドラマなのだ。
勤勉で真面目な『アーサー・ファーガソン・ジョーンズ』(エドワード・G・ロビンソン)。
そんなジョーンズに昇進話が出てくるのだが、同時に
「今度、社内で一番遅刻してきた者はクビにしろ!」と、社長からジョーンズの上司にお達しがくる。
「ジョーンズ君はどうしたんだ?」
「まだ来ておりません」
たまたま目覚ましが壊れて、この日は運悪く大遅刻のジョーンズ。
恐る恐る席に着くと、上司が苦虫を潰した顔でやって来る。
「あ〜、君に昇進の話が来てるが、社長からは『今日遅刻してきた者を、即刻クビにしろ!』の命令だ。クビにした者を昇進する事は出来ない。わたしゃ、いったい、どうすればいいのかね?!」
と、そこへ鼻唄を歌いながらルンルン♪
優雅にタイムカードを押して女性が現れた。
目下、朝の9時半である。(出社は8時半)
ジョーンズより更に遅れてきた『ミス・クラーク嬢』(ジーン・アーサー)は、即刻「クビ!」を言い渡される。(間一髪、助かったジョーンズ)
それでも、クラーク嬢はどこ吹く風。
まるで気にしてる様子じゃない。
「でも、今日一日は、ここにいてもいいわよね?」と言いながら、自分のデスクに着くと、ポン!と脚をくんで、勝手に新聞なんてのを読み出した。
上司は(もう、お手上げ!)の呆れ顔で離れていく。
そんなクラーク嬢、新聞のニュースを見て、後ろに座っているジョーンズを振り向くと、途端に、けたたましい声をあげた。
「この暗黒街の脱獄王の顔、あなたにそっくりじゃないのぉーー!!」
写真を見てジョーンズもビックリ。
その声につられて社内中の人々が集まってきて、テンヤワンヤの大騒ぎ。
「オーーイ、ここに《脱獄王》がいるぞー!」の冷やかしの声も。
たまたま偶然の他人のそら似。
でも、事はそれで済まなくなってきて ………
この後は、暗黒街のボスに間違われたジョーンズが警察に誤認逮捕されたりして、スッタモンダ。
当の大ボスがジョーンズの目の前に現れたりして、トンデモない展開へと流れていく。
この映画、やはりジョン・フォード監督の映画らしく、傑作だし、とても面白かった。
「ジョン・フォード映画にハズレ無し!」の信頼ゆえ、「一度は観てみようか …… 」と思った次第である。
エドワード・G・ロビンソンも二役を演じていて中々の演技力を見せてくれる。
ただ、……… 『エドワード・G・ロビンソン』が《主役》って事だけで、観る気になったか、どうかはあんまり自信がない。
確かに演技力はあると思いますよ。
長い下積みや経験は、その演技力を磨いてくれていると思うのだが、如何せん、この人、
全く、写真映えしないのだ!(可哀想に。こればっかりはどうしようもない)
映画の中の、様々な場面のスナップ写真を見ても、どれもこれも見栄えがしないロビンソン。(全体像はともかく、このジト〜とした目と真一文字に結んだ口がねぇ~)
これじゃ、ロビンソンの映画を観た事がない人には、「観てみようか …… 」なんて食指は、なかなか動きにくいかも。
こんなに演技力はあって面白いのにね ……
故に、最初に書いたように
「損してるなぁ~」の答えに、やっぱり帰っていくのである。
どんなに演技力はあっても、
《映画スター》=《写真映え》って、(やっぱり大事なんだなぁ~)と、考えさせられた一本なのでございました。(映画は星☆☆☆☆)
※それにしても、この邦題、ロビンソンの当時の意を汲んで担当者がつけたのだろうか?
《善人》役、きっと嬉しかったんだろうな。