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2022年1月9日日曜日

ドラマ 「北国から来た女」

 1979年 4月25日。





これは『日本の女シリーズ』と銘打った平岩弓枝の名作ドラマの一本で、今回運良く視聴できました。


主演はもちろん、山口百恵ちゃん。




幼い頃に父を亡くし、病床の母も亡くなってしまった『宮川あずさ』(山口百恵)は、天涯孤独の身の上。


東北は青森から、はるばる上京してきた『あずさ』は、しばらく住み込みの店で働くことになった。


そこは、気の良い夫婦(小鹿番、野村昭子)が経営していて、従業員はあづさの他に『照子』という若い女性がいるだけの、下町の小さなラーメン店🍜


そんなラーメン店でも、愚痴一つこぼさずに、クルクルと働く『あずさ』(百恵ちゃん)である。(こんな可愛い店員が世の中にいる?(笑) )



今日も店はテンヤワンヤの忙しさ。(百恵ちゃん効果なのか)


外は大雨で、出前から帰ってきた照子が全身びしょ濡れで帰ってきた。


「ちょっと、あずさ!この集金してきたお金、レジに入れておいてちょうだいね!」


カウンターに封筒をポン!と置き、それだけ言うと照子は、そそくさと奥の座敷に着替えに行ってしまった。


「あ、ハイ!」と生返事するも、お客の接客でてんてこ舞いの『あずさ』は、いつしかそれも忘れてしまい …… しばらくすると、


無い!無いわ!集金してきた3万5千円が!」


着替えを済ませて、店に戻ってきた照子が大騒ぎしだしたのだ。


「なんで、あんたそんな所に置いたのよ?」カウンター奥から店主夫婦もやって来て、大金が消えた事に、店内は騒然としだした。


「あんたのせいよ!どうしてくれるのよ?!」

執拗に責める照子に、あずさが下を向きはじめると ……


若い男性客の一人が、スックと立ち上がって、胸元から3万5千円を取り出したのだ。


「あの、コレ、よかったら使って!」


あずさの手の平に、それを押し付けて持たせる。


突然の出来事にあずさはビックリ!

店主夫婦も照子も呆然としている。


そうして、男は飛び出すように、雨の外へ走り去っていった。


「ちょっと何なのよ~、アレ …… 」(『家政婦は見た』の大家さん役、野村昭子の声で再生ください  (笑) )


こんな見ず知らずの人からのお金なんて、到底手をつけられるはずもない。(まぁ、不気味だしね)


生真面目なあずさは、「私のお給金で必ず、お支払いしますから!」と店主に約束する。



そうして、それからも、いつにもまして懸命に働くあずさ。

店には、そんなあずさに感心して、目をとめる年配の夫人(乙羽信子)の姿があった。



夫人は店主夫婦の所へ行くと、「あの〜今、出前に行かれたお嬢さん、アルバイトか、なにか?」と話しかけてくる。


「いえね、ウチの若いモンに1週間ばかり休みをやっちまったもんで、その間だけね。ウチの照子っていう従業員の幼なじみなもんで置いてやってるんですよ」


「あら、じゃあ~、ウチに来ていただけないかしら?」

店主夫婦は突然の申し出にビックリ。


「ウチもお手伝いの子が結婚して辞めてしまったものでしてね …… 主人と二人で寂しい想いをしていたんですよ。是非お願いしたいわ!」



こうして棚からぼた餅。


夫人の住む『宗方家』に《住み込みお手伝いさん》として働く事になったあずさ。


ただ、気がかりなのは、あの《3万5千円》の男のこと ……




「もし、あの人が、また、この店に来たら私が宗方家の屋敷で働いていること伝えてもらえませんか?どうしても、あのお金をお返ししたくて …… 」


「あぁ、安心しな!伝えとくよ!」


立派なお屋敷『宗方家』へ向けて。


あずさの新生活がはじまる!





やっぱり、ラーメン屋の店員は、百恵ちゃんには合わない!(泉ピン子にさせとけばよい (笑) )



それにしても、お手伝いさん姿の、この百恵ちゃん、『めぞん一刻』の音無響子にそっくりだ。(髪を結んだ百恵、エプロン姿の百恵ちゃんも珍しい)


こっちの方が断然可愛らしいです、ハイ。




以前、このblogでも取り上げた東芝日曜劇場美しい橋』にしても、このフジテレビの平岩弓枝ドラマシリーズ『北国から来た女』にしてもだけど、わずか1時間で完結するようなドラマ枠に、百恵ちゃんが出演できたのは、今思うと幸運だったかもしれない。



そのくらい、こういった単発、短時間ドラマには、名作が揃い踏みなのだ。



とにかく1時間で完結するドラマなので、物語の起・承・転・結を見せる為には、練りに練られた高度な脚本作りが求められる。



たった1時間の間で、主人公や登場人物たちの性格や背景を描いてみせて、山場、着地点まで持っていかなくてはならないのだから、脚本家にしても相当の筆力を要されて、鍛え上げられただろうなぁ~、と思うのだ。(ある意味、精鋭たちの実力が試される場所だったかもしれない)



演出家にしても、その見せ方で大いに悩んで試行錯誤があったはず。

良作が揃うはずである。




もちろん、俳優陣たちも同じで、飛び抜けた個性や演技が求められる。




ラーメン屋の店主夫婦はさすがの安定感だ。


ごく最近、荒木由美子さん主演の『燃えろ!アタック』を観ていて、主人公『小鹿ジュン』(荒木由美子)が居候する酒屋の主人を演じていた小鹿番さん。


小鹿番さんは、ここでも好演。




チャキチャキのラーメン店主を演じている。(こんな俳優さん、最近見かけなくなったなぁ~)



野村昭子さんは、昔も今も、まるで時が止まっているかのように全然変わらない容姿と演技。(ある意味凄い!「化け物か!」と思うくらい)







あずさが世話になる宗方家の夫婦も重鎮が揃う。




宗方家の旦那様を中村翫右衛門(なかむら かんえもん)

この方、歌舞伎役者でいて、昔から数々のドラマに出ております。(今じゃ、もう知る人も少ないだろうな。けっこう時代劇にも出ておりました)


飄々とした演技で、乙羽信子演じる奥さまの尻に敷かれる、人の良い旦那様を演じております。(「あっ、そう …… 」が口癖)




そうして、乙羽信子さん。



それなりに苦労をしてきて、人の痛みも分かるし、『あずさ』(百恵)を可愛がりながらも、旦那様(中村翫右衛門)を気遣う優しさを持つ、品の良い夫人役である。




でも、こんなのはセリフのどこにも書いてない事なのだが、ソレを、その《雰囲気》だけで、一瞬で視聴者に感じさせなければならないのだ。


特に1時間の完結ドラマでは、そのハードルは、ものすごく高くなる。


名優じゃなければ、とても務まらない仕事ぶりである。




そんな面々に最後に加わるのが、夫人の甥っ子で、ヘラヘラした男『山本伊勢(いせ)』(中島久之)。(『あずさ』に「痴漢よぉーー!」と間違われる始末)



土曜になれば、子供のいない寂しい宗方夫婦の元へ訪ねてくる心優しい男なのだけど……



(でも、なんでこんなにヘラヘラしてるのかしら? …… いつもニヤニヤしていて、イヤな感じ)

と、全くあずさにはウケが悪い。




「あんたが変な金縁メガネなんてかけてるから、痴漢に間違われるんだよ!」と夫人に言われても、

「酷いなぁ~、似合うと思ったんだけどなぁ~」と、やっぱりヘラヘラ笑ってる。



こんな感じで、あまり印象が良くない『伊勢』なのだけど、段々と好印象に …… (『赤いシリーズ』じゃ損な役回りだったけど、このドラマでは役得の中島久之さん)




夫人に、あずさの事を紹介したのは、そもそも『伊勢』だったのだ。(ラーメン店の常連だったらしい)



それに《3万5千円の男》と偶然再会して、知ってしまう男の正体。(そもそも盗んだ金を、ただ返しただけだったのである。ゲゲッ!なんじゃ、そりゃ!)




「俺は見ていたんだからな!正直に白状しろ!」

あずさの目の前で、いつもはヘラヘラしている『伊勢』は、その男をとっちめるのだ。(もう、株は一気に急上昇する!)



(この人、見かけによらず、ちゃんとした人なのかも …… )と思いはじめた『あずさ』(百恵ちゃん)。



そうして、宗方家に帰ってきて、皆で一家団欒を楽しんでいると、突然、地震が!



「みんな、テーブルの下に隠れるんだー!」





テーブル下で、いつしか伊勢の腕につかまり、ガタガタ震えているあずさに、伊勢がドサクサにまぎれて、一世一代の告白をする。


「なぁ、俺のとこに嫁さんに来いよ …… 」と。



戸惑う顔のあずさの表情で《終わり》。

ドラマは幕となるのである。





この後、あずさが承知したのか、どうかは視聴者に想像をゆだねるのだが ……




このドラマの中島久之さんも、例に及ばず、《百恵フアン》からは、クソミソだったそうな。(このラスト、ヘラヘラしながら百恵ちゃんを口説いて、肩を抱くシーンが、いけませんわな  (笑) )



「こんな男は百恵ちゃんにふさわしくないぃぃーーー!」


ドラマと現実の境界線も分からなくなったフアンが大激怒。


このドラマはドラマで、こうして時が過ぎれば良作だと思うのだが ……… それにしても、国民的なスター『山口百恵』の相手役を務めるのも、本当に当時は難儀なハードルである。



《国民の誰もが納得する百恵ちゃんの相手役》……… そんな超高いようなハードルをとび越えて、共演を重ねることができた三浦友和さんは、もっと称賛されても良いのかも。



「その火を飛び越えてこい!」


なんだか、映画『潮騒』の百恵ちゃんのセリフを、ふと思い出しちゃった (笑)

星☆☆☆☆。