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2021年5月6日木曜日

ドラマ 「フルハウス」

1987年~1995年。




事故で妻を亡くしたばかりの『ダニー・タナー』(ボブ・サゲット)には、まだ幼い3人娘がいて、仕事(テレビ局のキャスター)と子育てで大わらわ。



10歳の『D・J(ドナ・ジョー)』(キャンディス・キャメロン)、

5歳の『ステファニー』(ジョディ・スウィーティン)、

そして、まだ産まれて9か月の赤ん坊『ミシェル』(メアリー=ケイト&アシュレー・オルセン)を抱えているのだ。



こんな娘たちの世話をしながら、仕事と両立なんかできるはずもなく、途方にくれていたダニーの元へ、ある日、助っ人がやってきてくれた。



一人は亡くなった妻パメラの弟でダニーにとっては義弟にあたる『ジェシー』(ジョン・ステイモス)。


熱狂的な♪エルヴィス・プレスリーのフアンで、自身もミュージシャンを目指しているジェシーの身なりは、まさにロックン・ローラーを地でいくような格好。


長髪のモサモサ頭に、全身黒革のレザー・ジャケットやブーツで、バッチリきめている。



真面目が服を着ているようなダニーは目をパチクリする。



もう一人は、コメディアン志望の『ジョーイ』(デイブ・クーリエ)。


暇さえあればジョークやモノマネばかりをして、自分で自分の芸にウケている。(これ、アメリカじゃウケてるのかな? 吹き替えでも、あんまり笑った事ないんだけど (笑) )



(こんなふざけた二人に、大切な娘の世話なんて出来るのか………???)


男3人と幼い娘たち3人、見よう見まねで、アタフタとした子育てがはじまる……。



たぶん、誰もが知ってる世界的に有名なホーム・ドラマ『フルハウス』。


こんな風に書かなくても大部分の人は知ってるだろうが、取りあえずはおさらいとして書いてみた。



このドラマがはじまる2年前(1985年)に、フランスでは、女流監督コリーヌ・セローが作った『赤ちゃんに乾杯!』が、世界的に大ヒットしている。

独身の男たち3人が、右往左往しながらも、協力しあって赤ちゃんを育てるという痛快コメディー映画である。



それに感化されたように、この後は、アメリカでも火がついたように、《赤ちゃん映画ブーム》がはじまっていくのだ。


赤ちゃん泥棒』、『赤ちゃんはトップレディがお好き』、『ベイビー・トーク』………なんて映画が、続々と作られていった。


1987年には『赤ちゃんに乾杯!』をアメリカでは、早速リメイクして『スリーメン&ベビー』のタイトルで映画も作られているほどである。



とにかく、


《赤ちゃんは可愛い❤!》


《赤ちゃんを出せば映画はヒットする!》


こんな安易な考えに、大勢のアメリカ人たちは飛び付いたのだ。(まぁ、可愛い事は可愛いけど……単純というか (笑) )



こんな風なので、


「ドラマでも『赤ちゃんに乾杯!』が出来ないだろうか?!」

なんて事は、すぐさま思いつく。



子育てする《男3人》と《赤ちゃん》のドラマ……



ただ、映画とは違い、ドラマは長期に渡るスパンだ。


撮影の為とはいえ、生後数ヶ月の赤ん坊を長時間拘束する事は出来ない。(この頃には、子役の労働法も厳しく管理されるようになっている)


ならばと、


「赤ちゃんを《双子》にしてみてはどうか?」


という打開案が出た。


双子の赤ちゃんを交互に出せば、赤ちゃんの負担も軽減されるんではないのか、というのが、その考え。(これは実際、今でも採用されていて、ドラマ『ミディアム』なんかでも双子を起用している)


それでも、赤ちゃんだけにスポットが当たれば、自然に出番は多くなる。


「それならば子役を増やせばいいんじゃないか?」


と、D・Jやステファニーの役が増えた………現実はこんな風だったんじゃないのかな?



とにかく、男3人と幼い娘3人の子育てドラマは、こうして万全の体制を整えてから、『アーノルド坊やは人気者』が終了した翌年の1987年に開始された。



だが……


鳴り物入りで始まった、この『フルハウス』だったが、最初は、おっそろしく「つまらなかった!」。


自分もNHKの再放送でシーズン1から観だしたのだが、本当に(ごめんなさい)面白くない。


D・Jとステファニーの姉妹喧嘩があったかと思えば仲直り。男3人は赤ちゃんのミシェルに歌を歌ってあげたり、あやしたり(ベロベロバー)するだけ。


これをシーズン1は延々と観せられるのだ。


そりゃ、赤ちゃんは可愛いし、二人の子役たちも可愛いよ!


でも、ただそれだけ。


30分でも長く感じるほどだった。(シーズン1は第1話だけを観てれば充分である)



こんな風に自分が思ったように、本国アメリカでも視聴率は伸び悩んだそうな。(だろうな)



製作スタッフたちも「何とかせぬば!」と考えて、シーズン2からはテコ入れ。



ダニーと一緒に《おはよう!サンフランシスコ》のテレビ・キャスターとして『ベッキー』(ロリ・ロックリン)が登場する。


このベッキーが、超美人で性格もサッパリしていて、なおかつ、適度にユーモアもあるという、まるで非の打ち所のない人物。


プレイボーイを自称していたジェシーは、たちまち(ポワワ~ン)一目惚れしてしまう❤❤❤。


「二人の恋の行く末がどうなっていくのか?」


視聴者の興味をつなぎとめて、やっと番組は盛り上がりはじめる。(「野郎と子供たちだけじゃ無理!」と、やっと製作サイドも気づいたのだろう)



それとD・Jの親友として『キミー』(アンドリア・バーバー)の出番を増やし、発展させはじめた。


優等生のD・Jに対して、ちょっと可笑しな言動を連発するキミー。(この子がフルハウスでは、一番の功労者だと思う)


呼ばれもしないのに、年中顔を出してはベラベラ喋りまくって、D・J以外のタナー家からは疎んじられるという、まさに特異な存在なのである。


勉強は出来ないし、タナー家のモノは破壊してしまうし、オマケに


《足が異様に臭い👣(笑)》


という、とんでもない設定になっていく。(ちょっと可哀想な気もするが)


こんな破天荒なキミーが、この番組では一手にボケ役を引き受けて、ダニーもジェシーも、ステファニーも、はては小さなミシェルさえもツッコミを入れはじめる。



こんな図式が、ようやく完成すると、番組は大盛り上がり。


視聴率もグイグイ上昇していき、気がつけば『フルハウス』は8年も続く長寿番組になったのだった。



こんな風に面白かった『フルハウス』だが、どんな番組でも必ず終わりはやって来る。


有終の美を飾り、8年間の『フルハウス』は幕を閉じた。



皆がそれぞれ散り散りに別れていき、ダニー役のボブ・サゲットも、ジェシー役のジョン・ステイモスも、ジョーイ役のデイブ・クーリエも、別の仕事をスタートし始めた。


でも頭の隅には、いつも、ある想いが駆け巡る………



(あの子役たちは、これからどうなっていくんだろうか? この先、大丈夫だろうか? )と……。



彼らは、長い間、芸能界にいて、子役スターの悲惨な末路を知りすぎるくらい知っていたのだ。


(このまま番組が終わったからといって、放っておけない……)


それからも心優しい男たちは、『フルハウス』で関わった子役たちと連絡をとりあった。



多感な少女時代をおくる彼女たちには、時として、うるさがられもしただろうが、そんなのは構わない。(向こうにしたら多少はウザかったかもしれないが)



D・J役のキャンディス・キャメロンはデイブ・クーリエの紹介したプロ・ホッケー選手と結婚して、子供にも恵まれて幸せになった。(ホッ!)



ミシェル役のオルセン姉妹は、番組が終わる前に、実の両親が離婚してしまった。(可哀想)


その後、双子の片割れメアリー=ケイトが摂食障害になって、激痩して入院。


(大丈夫か?)


でも、回復して、その後は無事に結婚した。(ホッ!)


ファッション・ブランドを姉妹で立ち上げ億万長者にもなっている。(スゲー!)



問題はステファニー役のジョディ・スウィーティン


彼女は他の子役のように、一時、薬物中毒になっていたのだ。(喪失感みたいなモノから、つい手をだしてしまったらしい)


ボブ・サゲットやジョン・ステイモス、オルセン姉妹は、必死に彼女を励まし、リハビリ施設に入所させて薬の依存を断ち切らせた。


その甲斐あって、ジョディは見事に立ち直ったという。(それと同時に断酒にも成功したらしい)



そうして、長い年月が過ぎて………


近年、『フルハウス』の続編となる『フラーハウス』。


D・Jとステファニー、キミーを中心にした彼女らの物語。(オルセン姉妹は女優業を引退している)


『フラーハウス』の彼女たちを見て男たち3人は何を思うのか……


(やっとここまできた……もう、大丈夫だろう……)と、安堵して肩の荷を降ろす事が出来ただろうか。



とにかく、こんな共演者たちのアフター・ケアーで、悲惨な子役の運命に勝ち得た『フルハウス』は、とても稀なケースなのである。


星☆☆☆☆。

(おかげで、今でも安心して観る事ができます)