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2020年5月12日火曜日

映画 「永遠に美しく……」

1992年 アメリカ。





原題は『Death Becomes Her』(彼女には《死》がお似合い)。



監督は、またもやロバート・ゼメキス。(スイマセン!またか、と思う人もいるでしょうが、もう今月はロバート・ゼメキス月間と思って諦めて。)





「イヤだ!また、こんなところに皺(しわ)が………」



舞台を終えて、控え室の鏡を見ながら、『マデリーン・アシュトン』(メリル・ストリープ)は、溜め息をついた。



目元のたるみや、おでこの皺を押さえながら、(少しでも、どうにかならないものか…)と、指で上げたり、引っ張ったりしてみるが、現実は甘くない。


老いが迫ってきている………。




そんなマデリーンの控え室にノックの音。


昔からの知り合い、『ヘレン・シャープ』(ゴールデン・ホーン)が、婚約者で有名な整形外科医『アーネスト・メルヴィル』(ブルース・ウィリス)を伴って、やって来たのだ。



「まぁ、マデリーン久しぶり!あなた素敵だったわ!」


「ヘレン、あなたも元気そうね!」


笑顔でハグしあう二人だが、笑顔の裏では……



『相変わらずケバいだけの、下品な女………』(ヘレンの心の声)


『地味なくせに、婚約者なんて連れてきて、なにさ!』(マデリーンの心の声)



………なのである。




そんな二人の横で、連れてこられたアーネストは、初めて見るスター、マデリーンの姿にウットリ。


「本当に素敵でした!ブラボー!」大絶賛のアーネスト。


そんな嬉々としている様子のアーネストを動揺しながら、見つめるヘレン。



(まさか………この人も……?)



今まで何度も、マデリーンに彼氏を奪われてきたヘレンの、これは最後の《賭け》だったのだ。


彼なら、マデリーン・テストに合格して、私だけを見つめてくれると……。



だが、そんな淡い期待は見事に裏切られて、案の定、婚約破棄。


その後、マデリーンとアーネストは華やかな結婚式をあげるのだった。






…………そして、数年後。


マデリーンとアーネストが住む邸宅に、ある1通の招待状が届く。


「フン!出版記念パーティーの誘い? ヘレンから?! 何々……『永遠に若く』ですって!!あのデブ、ちょっとは痩せたのかしら。」


ヘレンが、その後、生活も荒れ果てて、巨漢デブになっていた事をマデリーンも、風のたよりで知っていた。




だが、マデリーンにしても、年齢には勝てず、すでに中年の境を越えている。



アーネストには、とっくに整形外科医の仕事を辞めさせて、死体の復元術の仕事をやらせていた。(その方が儲かるから)


その金を湯水のように使っては、無駄なあがきで、高級エステに通う日々。


二人の仲も、とうに冷えかかっていたのだ。



だが、ヘレンの誘いを無視なんて出来やしない。


「今でも綺麗な私を見せつけてやるんだから!そして、アーネストとも上手くいってるようにみせつけてやる!!」と、鼻息荒く、乗り気のしないアーネストを引っ張って、いざ、パーティー会場へ。



だが、パーティーの席上に居たのは………



今や、見間違えるほど、痩せて、若返って、美しくなったヘレンの姿。



(ヒィーッ!!ウソでしょーーーっ!!)



「まぁ、あなたもお元気そうで、マデリーン」


呆気に取られるマデリーンに、ヘレンは笑顔でハグしてきた。



(な、何なの?!この若さ………それにひきかえ私の姿は…………)




マデリーンは、いつの間にか、パーティーを抜け出すと、嵐の中、車を走らせていた。


昼間、エステで渡された名刺の場所へと。



(私の方が美しいのよ!どんな方法を使ってもいい!! 負けてたまるもんですか!!)



泣きながら、゛溺れる者は藁をも掴む゛、そんな半端、ヤケクソな気持ちで向かったのは、壮大にそびえ立つ豪邸。



現れでたのは、謎の若い女主人『リスル』(イザベラ・ロッセリーニ)だった。



「お待ちしておりましたわ、メルヴィル夫人」


リスルは、そう言うと、マデリーンの目の前に、奇妙な形の瓶を置いた。



妖しい光を放つ『秘薬』のガラス瓶は、不思議なバランスで、何とか、倒れずに立っている………。



「これで若さが……???」


半信半疑ながらも、マデリーンはゆっくりと、その瓶を手に取ると、口元に持っていくのだった…………。



大ヒット作『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の後に、今や、名声を手に入れたロバート・ゼメキス監督が、「次に撮る映画は何だろう?」と皆が期待していた。



それが、女同志の、美しさを競いあう、余にも醜い争いとは……。




でも、今や、現実の方が、それに勝るとも不気味なご時世。



何千、何億と金をかけては、整形を繰り返したり、果ては、「これが数億円かけて整形した仕上がりなの?」と、疑いたくなるモノまである始末。



アゴの骨を極端に削って、鋭角に尖らした姿に、本人はウットリしても、第3者が見れば………「何これ?!」ってな感じで、一瞬で目を背けたくなる。


唇を、オバQみたいにするのも「何がセクシーなの?」ってな具合。




これらを命名して、最近では、『醜形(しゅうけい)恐怖症』というらしい。




自分の身体や美醜に、極度にこだわり続ける症状で、実際よりも常に低いイメージの自分自身があるんだとか。


その根底にあるマイナス・イメージは、いくら整形を繰り返しても、満足感を得ることはないのである。




こんな奇病が大流行の現代においては、この映画の二人なんて、逆に「まだマシかも……」と思えてくる。



追い求めるのは、普通の若さと美しさですもんね。(まぁ、その後の展開が、トンデモないドギツイ展開なんだけどさ(笑))




この映画(1992年)の時、

メリル・ストリープ……43歳(1949年生まれ)

ゴールデン・ホーン……47歳(1945年生まれ)

ブルース・ウィリス……37歳(1955年生まれ)



ブルース・ウィリスだけが、ちょいとばかり頭皮が、寂しい気がするだけで(笑)、女二人は充分、お若いと思いますよ。





そして、こちらが御3人達の近影。


メリル・ストリープが一番若いかな。(71歳)





ゴールデン・ホーンは、年齢的に一番上だから、しょうがないけど肌がね……。(75歳)





ブルース……もう、諦めた頭皮以外は、肌ツヤいいですよ(笑)。(65歳)




もちろん、ハリウッド俳優らしく、それなりにメンテナンスをされてるんでしょうけど、それもホドホドにね。



『永遠に美しく……』なんて姿だけじゃないって事が、この映画の教訓なのだから。

星☆☆☆☆。