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2019年8月20日火曜日

映画 「毒薬と老嬢」

1944年 アメリカ。






演劇評論家であり、独身主義の『モーティマー・ブルースター』(ケーリー・グラント)は、神父の娘『エレーン』(プリシラ・レイン)を連れて、区役所に婚姻届を出すため、列に並んでいた。(しっかりサングラスで変装して)



そこへ、「何か良いゴシップネタはないか……」と記者たちが張り込んでいる。



やっぱダメだ!



モーティマーはエレーンを引っ張って電話ボックスに隠れた。


「君とは結婚できない!」


「………そう」エレーンの潤んだ瞳。


「僕は、今まで結婚を馬鹿にして、『結婚は欺瞞』なんて本も書いてきたんだ!」


「………そう」エレーンの潤んだ瞳。




あぁ、何て顔をするんだ、エレーン……。


もう、辛抱たまらん!


モーティマーは、エレーンを抱き寄せると、思いっきり熱烈なキスをした。(欲望が主義に勝った瞬間)


モーティマーはエレーンの魅力に、到底抗えない。とうとう結婚を決意した。




ー  その頃 ー


ブルックリンでは、モーティマーの年老いた叔母姉妹が、隣に住むエレーンの父親の、『ハーパー神父』をもてなしていた。


巡回中の警官たちにも、ニッコリ!


笑顔でもてなす『マーサ』と『エディ』の叔母姉妹。

その人柄の良さで、この界隈では、二人の姉妹の評判は上場であった。



「突撃ぃー!」

バタバタと階段を駆けあがる甥の『テディ』。



中年のテディは自分を『ルーズベルト大統領』だと思い込む精神薄弱。


夜中にラッパを吹いたり、奇行を繰り返していたが、姉妹の評判がそれを上回るほどだったので、警察も町の人々も寛大に見てくれていた。




叔母姉妹には、3人の甥がいた。



ひとりは、この変わり者のテディ。


そして、冒頭で結婚を決意したモーティマー・ブルースター。


モーティマーの、不肖の兄ジョナサンは、もっか行方不明。




こんな複雑な事情を抱えた家系だったが、モーティマーはそれなりに満足していた。




そして、

(叔母たちにエレーンとの結婚を知らせよう。きっと喜んでくれる!そして新婚旅行に出発だ!)


ブルックリンに帰ってきた二人は、後で合流する約束をして、エレーンはハーパー神父の家に。

モーティマーは、叔母姉妹の家へと別れた。




扉を開けると、叔母姉妹が嬉しそうにモーティマーを出迎えた。


「結婚するよ、エレーンと!」


「まぁ、モーティマー!おめでとう!」

マーサとエディは喜んで、モーティマーに抱きついた。




「早速、お祝いの支度をしなくちゃね!」甲斐甲斐しく姉妹たちは動きだした。

喜んでくれる叔母たちにモーティマーもひと安心。



窓際の箱に腰かけると、???何やら違和感が。


…………そぅ~と、モーティマーが箱を開くと、そこにあったのは…………。


モーティマーの目がパチクリ!


「し、し、《死体》じゃないかぁー!!、誰なんだぁー!?これは!!」



パニック状態で騒ぎ立てるモーティマーに、叔母たちはニコヤカに話しだす。


「まぁ、何を騒いでるの?これはホスキンズさんよ」


「な、何でそのホスキンズとやらが死んでいるんだ~!!」


「きまってるじゃない、毒入りのワインを飲んだからよ」叔母たちは平然としている。




孤独な老人たちに、安らかな死を……。


毒入りのワインを与えて殺す事を、まるで善行のように、ニコヤカに嬉しそうに話す叔母たち。



しかも地下室には、他にも11人の死体があり、狂ったテディが穴を掘って、丁寧に埋葬しているという。



モーティマーの思考回路は、ぶっとんだ。


(こ、この家は、皆、異常だ!異常な家系だったのだ!!)


結婚の夢は、ガラガラと音をたてて崩れ去った。



それでも、気をとりなおして、

(とにかく何とかしなければ……)

と考え出すモーティマー。


モーティマーの、悪夢のような現実との闘いが始まったのだった………。






『ペティコート作戦』を観て、急に、ケーリー・グラントの傑作『毒薬と老嬢』を思い出して観たくなってしまった。


観たのは20年ぶりくらいだろうか。


監督は、『或る夜の出来事』のフランク・キャプラである。



死体を見つけた『モーティマー』(ケーリー・グラント)が、ノホ~ホ~ンとしている叔母たちや狂人のテディ、それに数年ぶりに帰ってきた兄やら、他の登場人物たちを相手にしながらも、孤軍奮闘するブラック・コメディー。



まるで、即興の舞台を観ているような気になってくる。(まぁ、もともと原作が舞台の戯曲ってのもあるが)




それにしても、やっぱ上手いわ、ケーリーグラント。


動きや所作が面白いというか……、目をキョロキョロさせたり、ビックリした表情も。



この人は、同じ時代の俳優たち………クラーク・ゲーブルやゲーリー・クーパー、グレゴリー・ペックたちとは、やはり別格。



本当は、ずば抜けて演技力が高いのだ。(もっと生きているうちに評価してほしかったと思ってしまう)



『毒薬と老嬢』は、あらためて、それを再確認させてくれたのでした。



今、観るとフランク・キャプラの演出に、少しばかりの古さを感じるかな。(ちょっとバタバタしすぎ)


ケーリー・グラントの演技力に、星は☆☆☆としておきます。



それにしても、こんな家族がいるところに嫁ぐエレーンはどんなものなんだろう。

自分が親なら絶対に反対するだろうな~(笑)。