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2019年2月20日水曜日

映画 「ダウンサイズ」

2017年 アメリカ。




ノルウェーの科学研究所では、ある博士が、偶然の実験から、あらゆる生物を《縮小させる》事に成功した。


世界は人工増加に伴い、貧困や飢餓、生態系のバランスがくずれはじめていて、まさに地球全体が、危機的な状況を迎えていたのだ。


そんな折りに、この発明は、人類を救うための手段として、まさに画期的な発明だったのだ。



「人類を救うには、この縮小化(ダウンサイズ)しかない!!」


博士自らが被験者となって、13cmの体にダウンサイズ。


それを、あらゆるメディアが公開し世界中が驚愕した。



だが、まだまだ、この時は只の面白い見世物を見るような感覚。


『ポール・サフラネック』(マット・デイモン)もテレビのニュースでは見ていても「ふ~ん」てな他人事のような感じ感じだった。


昼間は作業療法士として真面目に働いて、夜は具合の悪い母親の世話するポール。


目の前の現実的な日常で、毎日がバタバタしているポールにとっては、どこか夢物語にも見えたのだ。



― そうして、10年後。

徐々に人類は博士を見習って、ダウンサイズ化していく。


ダウンサイズすれば、俄然生活は豊かになり、資産も増えて、公共料金なども激安。


ミニチュアの家や町の中で、何不自由なく優雅に暮らせるようになってきていたのだった。


メディアでは連日に渡って、ダウンサイズ生活の利点を唱えてもいる。



そうして、10年後、あのポールの生活も少し変わっていた。


母親が亡くなって、『オードリー』(クリスティン・ウィグ)という女性と結婚したのだ。


だが、生活は、いっこうに楽にならず忙しく共働きの日々。


今日もオードリーが仕事先からクタクタになって帰ってくると、優しいポールはマッサージをしてあげている。(やっている事は10年前の国閑と、まるで変わらないのだけど)



そんな時、大学の同窓会が開かれて、出席したポールとオードリー夫妻はビックリする。



同窓生が、ダウンサイズしていたのだ。


「とにかくさ~生活は一変したよ、暮らしは楽になって毎日が快適なのさ」


身近な同窓生の言葉に、夫婦は心動かされた。

「こうなったら自分たちも…」と決心するのであるが……



この『ダウンサイズ』を2度観たが……


今から観る人に忠告!


この映画を、腹を抱えて笑うコメディだと期待している方は的ハズレ。

予告と配給元、レンタル店などでは、コメディ扱いにはなっているが、中身は、ごくマジメ~なSFを借りてきたヒューマン・ドラマなので、どうぞご注意を。





《ダウンサイズ化》するのもけっこう条件が厳しいものである。

誰も彼もが《ダウンサイズ化》できるのではないらしい。


1、怪我をして、体の中に金属やボルトが入っている人は《ダウンサイズ化》の対象外である。(金属やボルトなどは一緒に縮小できないのだ)


それをクリアできた者だけが、2、の行程に進んでいける。



2、髪を剃り、眉毛を剃り、陰毛を剃り、あらゆる毛を剃る。(縮小した時、毛にうもらない為、どうも毛だけは縮小できないらしい)


3、腸の中のものを全部だすため浣腸。(食べたモノまでは、どうも縮小できないらしいので)


4、金歯や歯の詰め物も撤去。(金歯、歯の詰め物、入れ歯は縮小できないので、外さないと縮小する段階で頭が破裂する)




そこまでして、やっとこさ、ダウンサイズになるための注射が打たれるのだ。(妻のオードリーは髪の毛と片眉を剃られた段階で、「もう無理~!」と途中で逃亡した)




土壇場、妻に裏切られて、目が覚めれば、一人だけダウンサイズ化に成功したポール。


結局離婚することになって、「この先、一人でどうすればいいんだぁ~!」と嘆くばかり。


見知らぬミニチュアの町での生活をはじめることになるのである。




そんな生活は…………

シングルマザーに振られたり、ミニチュアハウスの上の階の住人『ドゥシャン』(クリストフ・ヴァルツ)の開くパーティーに参加して、ドンチャン騒ぎに興じたりする日々。


人生なげやりの日々をおくるポールなのである。



そんなポールの目の前に、ある朝、突如、妙なベトナム女性が現れた。


彼女は『ノク・ラン』という名前で、片足が義足である通いのハウス・キーパーだったのだ。


ベトナム人の村で暮らしていたのだが、ダム建設の為に村を破壊され、反対運動に参加するも刑務所に入れられるという、悲劇的な過去をもつノク・ラン。


おまけに、本人の意志を無視して、刑としてダウンサイズ化された不憫な女性だったのだ。


その後にも、さらに不幸は続いて、段ボールに入れられて捨てられたりする。(その時に足を壊死してしまう)

その後、移民局に保護されて、やっと、この町の住人となった、今のノク・ランが、ここにいるのだった。(本当に鳥肌が立つくらい壮絶すぎる過去だ)



こんな壮絶な過去を聞いてしまって同情しない者などいるだろうか……


案の定、ポールも「彼女の為に何かできれば……」なんて、すぐに考えはじめる。


作業療法士として働いていたポールは、彼女の義足が、合ってなく調節がおかしいのを、一瞬で見抜いた。



それを医者だと勘違いしたノク・ランは大喜び。


半端強引に、

「アナタ医者アルネ、一緒に来てワタシの友達もタスケルよ!」と、ポールをどこかへと引っ張っていくのである。


こんな調子で、物語の流れは、ノク・ランに振り回されながら貧民街の人助けをするポールの奮闘記になっていくのであった………



これの、どこがコメディなのだ??



ジャンル分けの際、日本の配給元やレンタル店の責任者は、ちゃんとこの映画を観たのか?


これは、人が苦しい環境や状況でも、「どう生きていくか!」を問うドラマなのである。




それにしても主人公の、このポールって男……


母親の介護が終わったら、妻のマッサージ、その妻に逃げられたと思ったら、ノク・ランという女性に言いように振り回される。


ずっと、女性の尻に敷かれっぱなしの運命なのかもね。(ちと可哀想かも)


そんなポールを隣人のドゥシャンは、「あいつは自分の意に反する事をやりたがるんだ」と言いながらも気に入っている様子。


まぁ、こんな善意の塊のような人間は、どんな場所でも、常に必要とされている、ってことで。


小さな命でも、みんな、みんな生きているぞー!(ダウンサイズ化した人々の叫び)


映画は星☆☆☆。

映画の宣伝も内容をキチンと理解してから行うべし!である。